ドレスをギュッと握り締めながらも、キュッリッキの手は小さく震えていた。
ベルトルドとアルカネットの背に広がったものは、紛れもなくアイオン族の翼だったからだ。
(ベルトルドさんとアルカネットさんが、同じアイオン族だったなんて…)
これまで2人がアイオン族だと思ったことは、一度もなかった。
アイオン族は翼を隠していると、外見はヴィプネン族とほぼ変わりはない。容姿が優れているといっても、ヴィプネン族にも容姿の優れた者はたくさんいる。
2人は一度もキュッリッキの前で翼は見せなかったし、アイオン族だと言ったこともない。キュッリッキの知るアイオン族とは、キュッリッキを蔑む存在だ。片翼であることを蔑み、忌み嫌う、それがアイオン族。
(2人はそんなことなかったのに)
だから、考えたこともなかった。
種族のことなど。
そして疑問に思うのは、2人のあの翼が共に片翼であること、漆黒のカラスのような羽の色だった。
「俺たちは誓の証に、それぞれの翼を捧げたんだ。リューディアの魂が、少しでも自由に空を飛べるように願いを込めて。俺は右の翼を、アルカネットは左の翼を、墓の前でもぎり取ってな」
咄嗟にキュッリッキは両手で口を塞いだ。そのことを想像して、悲鳴を上げそうになったからだ。
「そうしたら、不思議なことに翼が変色していた。真っ白だった羽が漆黒に変わったんだ。――まあ、羽の色が変色しようと、関係ないことだったが」
無理に翼をもぎ取ったことなのか、何かしらの変異が起きたのか、興味もないから調べてもいない。そうベルトルドは淡々と呟いた。
「一度にいろんな情報を詰め込まれて、挙句アルカネットもいるのだから、だいぶ頭が混乱しただろう? だが、リッキーには我慢して話を聞いてもらいたい」
優しく微笑まれても、キュッリッキには微笑み返すことはもう無理だった。
アルカネットは知らない場所だと言っていたのにここに居る。ベルトルドの言葉を信用出来なくなっていた。
今もまだアルカネットに押さえつけられた力の感触を、身体中が覚えているのに。アルカネットを見ただけで、震えが止まらないというのに。
「さて、話を戻そうか。――召喚
「超古代文明、1万年前に失われた先史文明の技術があればそれが可能となるのです」
それまでずっと黙していたアルカネットが、おもむろに口を開いた。
「そうだ。しかし不思議なことに、空を飛ぶ技術のみ記録も何も残されておらず、技術で空を飛ぶという発想を、この千年の間誰も思いつかなかった」
ふいに、ベルトルドは訴えかけるように声を荒らげる。
「何故だ? 1万年前の遺跡や遺物を掘り出して、様々なものを復刻させたり応用したりして今に活かしている。映像技術もハーメンリンナの気温調整も、電力も何もかも、全て1万年前の物を使っているんだ。そしてあのエグザイルシ・システムだってそうだ。あれも超古代文明の遺産だ。それなのに、これまでひとつも空を飛ぶ技術が掘り起こされていなければ、誰も発想していないんだ。おかしいだろう? 不思議じゃないか。なんで誰も思いつかない、どうして技術で空を飛ぼうと思わない。誰でも
肩で息をつくと、ベルトルドは高揚する気持ちを鎮めるように、前髪をかきあげた。
「だがな、31年前、リューディアは空を飛ぶ技術の基礎を見出していたんだ。神に殺される直前に、閃いて、それをスケッチブックに描いた。そして俺たちに見せようとした瞬間に、雷を落とされた」
「それが……リューディアが殺された原因…?」
胸元で手を握り締め、キュッリッキは腰を浮かせた。
一体なぜ、そんなことで神々がリューディアを殺したというのだろうか。
「うん、空を飛ぶ技術を見出した、それが殺された
それなのに技術で飛ぶことは、何故いけないことなのだろうか? 一人の少女の命を問答無用で奪うほど、それは罪深いことなのだろうか。
(1万年前はよくても、今はダメなの? なんでなの……)
疑問は深まるばかりで、キュッリッキには見当もつかなかった。
「全ては1万年前に起こった大いなる罪が原因なんだ。そのことで神々は人間の記憶、遺伝子から空を飛ぶ技術、閃きを消し去った。9千年に及ぶ歴史のない年月の間に、神々は人間を作り替えていたのさ」
「そのせいで、歴史もなく記録も残されていない、空白の期間があるのですよ」
「そう、人間たちは確実に生きていたんだけどな。神々の作業が終わったのが千年前ということだ」
人間一人一人から、空を飛ぶ技術に関するすべてを消し去った。ほんの些細な事すら許さず、丁寧に消し去ったのだ。そして、これまでの歴史からも記録からも消した。
長すぎる年月を費やし、そうまでして神々が手を下した理由は、原因とは一体なんだったのか。
キュッリッキは怯えながらも、それを知りたいと思った。知らなくてはならない。
見つめてくるキュッリッキの表情から察したベルトルドは、満足そうに大きく頷く。
「1万年前に起こった大いなる罪、人間の犯した大罪を話してあげよう」
* * *
1万年前、この世界には、国と呼べるものは3つしかなかった。
トゥーリ族が治める惑星タピオに、種族統一国家ロフレス王国。
アイオン族が治める惑星ペッコに、種族統一国家イルマタル帝国。
そして、ヴィプネン族が治める惑星ヒイシに、種族統一国家神王国ソレル。
太陽を中心に、3つの惑星が等間隔で囲み、遠く離れているというのに、3つの国は戦争をしていた。
発展を極めた文明は、宇宙空間へも自由自在に行くことができた。
各惑星間は途方もない距離があり、それを短時間に航行するために、空間跳躍システムも開発されていた。そのため宇宙空間を舞台に、小競り合いや大規模な戦闘まで、飽きずに繰り広げられていたのだった。
3種族は互いに、種族としての尊厳をかけて戦っていた。
その戦争のきっかけは、本当に些細な口喧嘩だった。
アイオン族の美意識過剰な偏見、トゥーリ族の種族優位性の奢り、ヴィプネン族の平凡な劣等感。それらが外交パーティーの場で論争になり、喧嘩を起こしたのが種族の代表たちだったため、戦争にまで膨れ上がってしまったのだ。
更に、ここ何代かアルケラの巫女が、ヴィプネン族の中から連続で輩出していることもまた、他種族の妬みを買っている。巫女を長く擁していたことで、神王国などと称したことがより反感を買っていた。
神々の言葉を人間たちに伝え、人間たちを正しく導くことを役目としているアルケラの巫女。アルケラとは神々の居ます世界の名称、神から選ばれた巫女を、アルケラの巫女と称している。
巫女は代々千年の時を生き、役目を終える1年前に次代の巫女を神から告げられ、手元に引き取り役目を引き継がせる。そして、新たに巫女となった少女は、初潮を迎える頃になると外見の年齢が止まり、女の身体に成長することなく長い時を生きた。
次代が他種族の少女であっても、引継ぎには関係なく巫女は少女を引き取る。そして引継ぎが終わると祖国へ帰し、そこで新たな巫女は役目を全うした。巫女に国境は存在せず、全ての人間たちのために巫女は存在するのだ。
それなのに神王国ソレルを治めるヤルヴィレフト王家は、何代もヴィプネン族から輩出される巫女の存在を、まるで自分たちの占有物のように思っていた。
「ヤルヴィレフト王家最後の王クレメッティは、戦争に勝って他惑星を支配下に置くためにあるものを建造させた。国民に重税を課し、苦役を強いて、必死に作り上げたものがフリングホルニ。リッキーも仕事で訪れただろう、エルアーラ遺跡のことだ」
「フリング……ホルニ…」
聞き覚えのある名前だった。
そう、エルアーラ遺跡で、ヒューゴと名乗るユーレイから聞いたのだ。
「ヤルヴィレフト王家の歪んだ野望……ヒューゴが言ってた」
ぽつりと呟いたキュッリッキの言葉に、ベルトルドとアルカネットは視線をかわした。
「リッキーはヒューゴを知っているのかい?」
「うん。エルアーラ遺跡で会ったユーレイなの。その時に、ヤルヴィレフト王家の野望は潰えてないって、血の波動を感じるからって言ってた」
「なるほど。だがもうそれは大丈夫だ。俺の手でヤルヴィレフト王家の最後の末裔は処刑したからな」
「えっ」
キュッリッキはモナルダ大陸戦争での、ベルトルドが行った世界中継での処刑劇を知らない。
「じゃ、じゃあ、もう大丈夫なんだ…?」
「ああ、心配ない」
胸元に手を添えて、キュッリッキはホッと小さく息をついた。
――キミは必ずヤルヴィレフト王家に狙われるだろう。
そうヒューゴが言っていたからだ。
「クレメッティの貪欲なまでの支配欲は禁忌の領域に至った。誰も思いつかなかったことを実行したのだからな。そしてそれが引き金となり、世界は半壊し、空を自由に飛ぶこともできなくなった」
ベルトルドは僅かに俯くと、口元に苦笑をたたえた。
「そうだな、リューディアを殺した真犯人は、クレメッティということになるんだろう。実際に手を下したのは神だが、元凶という点で見れば、クレメッティに復讐せねばなるまい。まあ、もうとっくに死んでいるから何もできないが」
「……」
「戦争を繰り返すばかりの世界で、力も拮抗していた状況を打開し、優位に立つためにはより強力な力を持たなければならなかった。そこでクレメッティは、普段崇めもせず敬いもしないアルケラの巫女を利用し、アルケラの神々の力を我がものとすることを思いついた。今の世界と違い1万年前の世界では、神の存在を人々は信じていた。それはアルケラの巫女の存在があったからだ。奇跡の力を目の当たりにする機会が、昔では当たり前のようにあったしな」
常に神殿に在ったアルケラの巫女は、乞われれば赴いて奇跡を施す。そして時に世界各地の神殿に出向いて、人々に正しき道を説いた。
「神の力を自在に操る巫女を利用する、とは言っても、巫女には常にフェンリルが付き従い護っていた。だから争いごとを好まず由としない巫女に、虐殺をさせることは無理だ。そこでクレメッティはフリングホルニを建造させ、フリングホルニに乗ってアルケラへ自ら赴き、神の力を奪うという発想に帰結した」
奇想天外な発想、と誰もが思うだろう。しかし、それを可能にするだけの技術力を持っていた1万年前の世界で、それは実行されようとしていた。
「宇宙を航行する艦艇を作ることの出来る高い技術力を使い、クレメッティが作らせたフリングホルニは、次元航行をも可能にさせる船だった。アルケラはこの世界とは違う次元に存在する世界、そこへ至るには別次元の扉を開いて入り込まなければならない。そしてそんなことを可能にするのがアルケラの巫女だ。別次元の扉を開いたところで、それがアルケラのある次元とは限らない。迷子にならず神々の御元へたどり着くための道しるべとなるアルケラの巫女を、フリングホルニに設置することを思いついた。それで間違いなくたどり着き、神々の力を本当に手にすることが出来るかは謎だがな」
「フリングホルニに、設置する……」
設置するとは、どういうことだろう。
その、あまりにも不遜極まる嫌な響きに胸がざわついて、キュッリッキは落ち着かない気分になった。
「フリングホルニには二つの動力がある。一つは通常航行用、もう一つが次元航行用だ。その次元航行用の動力に巫女を閉じ込めて、力を引き出し船を動かす。そうして作られたものがレディトゥス・システム。リッキーが大怪我を負う羽目になった、あのナルバ山の神殿に隠されていた謎のエグザイル・システムのことだよ」
我知らず右肩に手が触れる。
謎の怪物に襲われたときのことが脳裏に蘇り、ギュッと目を瞑った。数ヶ月経った今も記憶に生々しく残る嫌な体験だ。そして、あの大怪我を負ったことで機会を失い、キュッリッキはレディトゥス・システムを見たことがない。
「クレメッティはフェンリルと護衛騎士に守られるアルケラの巫女を、策を弄して捕らえることに成功した。そして巫女をレディトゥス・システムに封じ込め、あとはフリングホルニに運び込むだけとなった。ところがフェンリルが暴走し、その神力を振るったがために世界は半壊してクレメッティは死に、フリングホルニは飛ぶこともなく地中に沈んだ」
「フェ、フェンリルが暴走したの!?」
キュッリッキの命令がなければ、自ら力を振るうことなどありえない。ただ例外としてキュッリッキの危機に関してのみ、命令ナシで力を使うことを認められている。
だから暴走するほど感情を激しくするなど、よほどのことだ。
捕らえられるだけなら、命の危険とは言い難い。その程度ならフェンリルは様子を見るだろう。
「なにかしたんだわ…、フェンリルが怒るようなことを、その巫女にしたのね?」
「察しがいいなリッキー。そう、クレメッティはシステムに巫女を封じるだけじゃなく、あることをフェンリルの見ている前でした」
「それは…?」
「巫女を犯したんだ」
王であるクレメッティを守るために随行していた多くの兵士たちや、見物客として招かれた貴族たち、そしてフェンリルの見ている目の前で、巫女はクレメッティによって辱めを受けた。
見世物のように、王の卑猥な振る舞いにより、アルケラの巫女は身も心も汚された。
「酷いわっ!」
キュッリッキは吐き捨てるように叫んだ。怖気と吐き気が這い上ってくる。
ベルトルド邸での一件で、キュッリッキを心配したマリオンとマーゴットから、性に関するあらゆることを説明されている。だから今のキュッリッキは、それがどういうことなのか理解していた。
抗えないほどの力で押さえつけられて、意に沿わない性衝動をぶつけられる恐怖はいかほどのものか。未遂に終わったとはいえ、キュッリッキは身を持って知っている。
「可哀想よ……」
身体を小さく震わせ、キュッリッキは目に涙を浮かべた。同情する気持ちと、自分がそうされかかった恐怖に自然と涙が溢れる。
「そうだな…。だが、見世物にしたこととは別にして、巫女を汚す必要があったんだ。それを実行するのは誰でもよかったが、巫女に神聖を失わせなければならなかった。アルケラの門には結界が張り巡らされている。それを破るためには、神々にもっとも近しい存在を汚し、ぶつけることで結界を外すことが出来るからだ」
汚した巫女を乗せた船をアルケラの門にぶつければ、結界は外れて門は開かれる。
「人間が犯した罪とは、アルケラの巫女を犯し、レディトゥス・システムに封じ込めたことだ。そのことで怒り狂ったフェンリルを、神々は抑えなかった。それこそが、まさに神の御意志なんだろうな」
戦争に勝つためにしてはならないことをしてしまったクレメッティ。しかしキュッリッキはある疑問が心に湧いてきて、ふと首をかしげた。
「巫女がひどい目にあってる間、何故フェンリルは巫女を救おうとしなかったの?」
「ああ、それはこんなふうになっていたからだよ」
ベルトルドが指を弾くと、ベルトルドの足元に横たわったフェンリルが現れた。
「!? フェンリルっ!!」
狼の姿に戻っている。そればかりか黒い何かに身体を縛られ、意識を失っていた。
「フェンリル! フェンリル!」
キュッリッキは大声で叫んだが、フェンリルはぴくりとも動かない。
「グレイプニルに身体を縛られているから、気を失っているよ」
「グレイプニル…?」
「何代か前のアルケラの巫女が作らせた、神をも封じるこの黒い縄のことだ」
「そんなものを、なんでベルトルドさんが……」
にっこりと笑っているベルトルド。あまりにも不自然で、この状況に似つかわしくない
心の奥底で、警鐘が鳴っている。
危険だと。
誰も知らないといった隠れ家にアルカネットが現れ、フェンリルを縛り気を失わせている。
(――どうして?)
「クレメッティが出来なかったことを、我々が成そうとしているからですよ」
勢いよく力を込めてフェンリルの頭を踏みつけ、アルカネットが嘲りを含んだ声音で言い放った。
「今まさに、目の前にいるアルケラの巫女であるあなたを、かつてのユリディスのように辱め、レディトゥス・システムに封じ込める。そうすれば我々は神の元へいけるのです。そして、リューディアの仇を打つことができる」
(に…逃げなきゃ…)
ベルトルドとアルカネットを交互に見ながら、キュッリッキは立ち上がろうとした。しかし身体はすくみ、腰が浮かない。
これから自分の身に起こるだろうことを考えると、早くこの場から逃げ出さなくてはと心は焦るのに、何故身体が動かないのだろう。
(そうだ、アルケラの子たちに助けてもらえば)
すぐさまアルケラを視ようと目を凝らす。
(え? どうしてっ? 視えない……アルケラが視えない??)
ナルバ山の遺跡の時みたいに、アルケラが全く視えてこない。
「無駄だよ、リッキー」
ベルトルドが見透かしたように、優しい声で言う。
「ユリディスの結界の力をこの場にも引き込んでいてね。結界は召喚士の、アルケラの巫女の力を封じてしまうんだ。だから今のリッキーは、非力で何もできない女の子だ」
「そんな……」
「さっさと済ませてしまいましょう。処女を貫くだけなら1分もかかりませんから」
無表情にアルカネットが一歩踏み出したところで、ベルトルドが肩を掴んだ。
「お前は下がってろ、俺がやるから」
「……同情心に垂れ流されるようなあなたに、出来るのですか?」
「念願叶うんだからな。当然、出来るさ」
「なら、さっさと済ませてしまいなさい」
アルカネットは肩をすくめ壁際まで下がると、壁にもたれて腕を組んだ。
それを見やってから、ベルトルドはキュッリッキの前に立つ。
「い、いや…、こない…で、ベルトルドさん……」
怯えながら見上げてくるキュッリッキを、ベルトルドは優しく見おろした。
「こんな形でリッキーを抱くことになるとは、思わなかったが……」
喋りながら胸元のスカーフを、ゆっくりと外して床に捨てる。絹のたてる小さな音にも、キュッリッキの身体はビクリと反応した。
次にマントの留め具を外すと、するりとマントは床に滑り落ちる。ベルトルドは片膝をつき、すくんだまま動けないキュッリッキをそっと抱き寄せギュッと抱きしめた。
腕の中の少女は、可哀想なほど大きく震えている。これから自分の身に起こることを、しっかりと理解している証拠だ。
(こんなに怯えさせながらことに及ぶことになろうとは、さすがに思わなかったが…)
アルカネットのことがなければ、戸惑いながらもベルトルドの腕の中で初めての行為に、愛らしい艶やかな声をあげたのだろうか。そう思うと残念でならなかった。
少しでも落ち着かせようと頭を優しく撫でても、震えは止まる気配がない。こうして触れているだけで、キュッリッキの不安と恐怖に包まれた気持ちが流れ込んでくる。
こんなに怯えきったキュッリッキを抱くのは胸が痛む。しかし、アルカネットに任せれば、本当にただの作業のように乱暴に扱われ、より悲惨な思いを味わわせることになるだろう。
愛しているのなら止めるべきだろう。しかし、情に流され止めることはできない。そんな温い覚悟で始めたことではないからだ。
「許せ、リッキー…」