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第5話 くそパーマ男

 何も音がしない。ただジメジメとしていて、カビの臭いが不快に感じ、目が覚める。

 どうやら私は壁に背を預けて眠っていたようだ。


「ここは……痛っ──」


 私は意識がぼんやりと覚醒するとくそウサゴリラに強打されていたので何とも形容し難い痛みに襲われ、全身が悲鳴を上げる。

 血は垂れていないが頭も未だにズキズキと痛い。


 辺りは真っ暗で目の前にはドアがあり、少しだけあかりが見えた。


「何処なんだここは……って!?」


 起き上がろうとしたのだが、手は手錠を掛けられており、その手錠はチェーンで壁に繋がれ、気の抜けた万歳のような形になっていた。

 足も足で同じように地面に繋がれている。

 服は薄汚れたただの布切れ一枚がワンピースのように着せられ、靴も脱がされていた。


「まじかぁ……」


 レディに何たることをしてくれてしまったのか、これじゃあこのまま陵辱されてしまうのでは、と落ち込む私だったが、同時に気を失う前のことを思い出す。

 野太い声がしてたんだよね。あれは一体……。


「起きたか、クソ猫」


 ノックもせずに足でバンッ、とドアを開け一人の男がやってきた。

 西洋に出てくるような赤くビカビカと光る鎧を身にまとい、明らかに態度が悪く、それでいて威厳があり、強そうと思えてしまう。

 髪は天然なのかパーマをわざわざ掛けているのかモジャモジャで絵の具の黒以外の色を全て混ぜたような髪色をしている。

 目の色もそんな感じ。


 ハッキリ言って汚そう。

 彼に対する第一印象は最悪だ。

 クソって言われたしね。

 あんまり人に対してクソクソ言わない方がいいですよ。


「だんまり……か。お前がエル王子を殺そうとしたんだろ!」

「え、エル!?」


 王子だなんて露知らず、私は色々と酷いことをしてしまったかもしれない。


「か、彼は──」

「黙れ! お前の戯言なんざ聞きたくない!」


 エルの生死が気になったので、訊ねようとしたのだがくそパーマ男は大声を出し、私の言葉を遮った。


 だんまり……か。なんてカッコつけて言っておいて次は黙れ! と荒げられるなんて飛んだヒステリックの持ち主だよ。


 目覚めていきなりコレで疲れてしまったので下を俯いていると、くそパーマ男は私の顎を掴み、私は無理やり目を合わせられる。

 避けようとしてもこれまた無理やり顎をグイッと力強く掴まれ、目を合わせられるので諦めた。


「お前は明星、処刑される。それまで自分のしてきた罪でも後悔するんだな! ガッハッハッ!」


 男は意地汚く笑い、それは私の顔に唾が掛かる程だった。

 頭突きでもしてやろうかと考えたが、頭がズキズキしているのでとても頭突きをしてやろうとは思えない。


 そうこうしていると男は私の顎を地面に軽く投げるようにして下ろすと部屋を去っていく。

 両手はチェーンで拘束されているので顔が地面に叩きつけられる心配はない。


 一連の流れにもムカついたが、それよりも処刑!?

 一体私が何をしてきたというのだろうか。

 エルは私を見て獣人だと酷く驚いていた。

 両親の仇と言うのも分かるが、きっとそこに何らかの理由があるのだろう。


 どちらにせよ、今は亡きエルのことを考えていても仕方ない。

 明星って何時だ?

 確か、明けの明星と言われるくらいだから朝方なのかな。

 今は何時なのか知らないけど、ありがとうエル。君から貰った命はあと数時間で亡くなるよ。次会う時はお互い普通の人間で居ようね。


 体力が回復しきれていない上に、くそパーマ男と会話をして私は疲弊も疲弊、大疲弊よ。

 程よい眠気に誘われて再び泥のように眠りに着いた。

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