外に出てアルと距離をとる。
何が起きるか分からないからね。
距離をとる前からアルとピヨヒコは青いオーラをまとってるし。
「我、汝と共に。女神による奇跡を起こし給え──
その青いオーラは魔力、又はマナと言うらしい。
案の定、すぐに呪文を唱え始める始末。
魔力のオーラは拡大を広げ、それはやがて霧散する……。
「ダメかぁ~……」
アルは膝から崩れ落ち、落ち込みを見せる。
まぁ何となく分かりきってはいた、でももしかしたら、アルなら出来るのではないか? なんて思ったりもしていた。
だけど結果は見ての通り、失敗に終わっている。
「げ、元気だして。今回はたまたまダメだっただけだよ」
「そうだな! もっとピヨヒコと絆を深めて、またチャレンジしてみるよ!」
駆け寄りしゃがんでアルを宥めると、彼はすぐに立ち上がり天に向かって拳を握り意思表明をしていた。
……何ともまぁ、切り替えが早い子だこと。
私もこれぐらい切り替えが早く、この獣耳と尻尾も受け入れられていたら少しは気が楽なのかもね。
「う、うん。頑張ってね?」
「おうよ! オイラはこれから部屋に戻るけど、マリアはどうする?」
ピヨヒコを撫でながら私の方は見ずに、訊ねられる。
んー、あの大図書館に行っても私は字が読めないからアルの邪魔をしてしまうかも。
「私はヒックさんが帰ってくるのを待ってようかな。また後でね、って言ってたしすぐ戻ってきそう」
「そっか、分かった。もし獣術に関する本が見つかったら報告するぜ!」
サムズアップを決めたかと思うと、ピヨヒコと共に去っていく。
去り際は笑顔で私に手なんか振ってくれたりもした。
「さてと、何か面白いものでもないかな」
青い屋根の家に戻り、私はヒックさんを待ちながらも暇を潰すことにした。
これから遭遇する悲劇に私は未だに気付いてはいない。