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第二話 容易く乗っ取れた。

 んで技術開発推進派の中には今の国政の流れに納得出来てない輩もそれなりにいるって話。


 その中の過激派であるランドール伯爵家などが結託けったくして医療福祉推進派の流れを覆すために異世界転生者を引き込み、王家も無視出来ないほどの産業革命を起こそうとした。


 まあもう少し慎重に進めれば叶ったかもしれないけど、どちらにしても警戒はされていたとは思う。


 異世界転生者保護法違反事件の少し前に、どうにも当時の過激派トップだったバート侯爵家が医療福祉推進派の筆頭に位置するローゼンバーグ公爵家の令嬢に冤罪を着せて失墜しっついさせることを目論もくろんだ。


 全然余裕で失敗に終わったんだけどね。

 これが理由で技術開発推進派はかなり捜査機関や国軍や医療福祉推進派から、より警戒されるようになった。

 二十数年……三十年近く前か。

 粛清のアダムスキーを用いた反体制派掃討そうとう作戦みたいな悪夢を起こさない為に、警戒を強めていた。


 まあローゼンバーグを狙うのは目の付け所以外は論外だ、無理がある。


 この世界においてローゼンバーグ公爵夫人……、初代悪役令嬢イザベラ・ムーンライトに冤罪だとか計略だとかって方法で喧嘩売るのは流石に勝ちの目が無さすぎる。


 多分、半端な計略より突き抜けた愚策ぐさくの方が効いたと思う。

 ローズ嬢をさらって寝てる間に爆弾でもくくり付けて王家に話しかけたら弟は助けるとか言って走って近づいたところで爆破させて超危険思想の自爆テロ犯に仕立て上げるとかね。まあ流石にそんな前世の私みたいなことやらないけど。


 まあとにかくしくじった。

 そして、これは王家の逆鱗げきりんに触れた。王妃とイザベラ夫人の関係性を考えれば当然っちゃあ当然。


 その流れでディアマンテ家も家宅捜査を受けて、両親は死んで家が焼けた。


 でもこれは全く冤罪でもなんでもない。

 お父様はごりごりに革命思想だったらしい。


 ローゼンバーグ失墜しっつい計画にはたずさわっていなかったらしいけど、どうにも別口で何やらくわだてていたらしい。


 まあ具体的に私は何も知らないんだけどね。

 お父様が革命思想を持っていたことも、前世を思い出してから知ったことだし。


 でも思えばそもそも超絶達人のノワールを引き入れていたり、私に理系科目や工学系の知識中心の教育をしていたり、平民雇用や支援に積極的だったり。


 そのはあった。

 実際、お父様が引き入れたノワールは国軍や捜査機関の包囲網から私を守って逃亡に成功している。

 そもそも家宅捜査に国軍まで着いてきたのはもしかするとノワール対策……いやノワールそのものってよりお父様が何か防衛手段を用意していることを想定されていた。


 元々お父様は目をつけられていて、他のヘボ貴族に巻き込まれるような形で抑えられた。

 何をしようとしてたかは知らないでもⅡで悪役令嬢の家なんだから何かしていてもおかしくはない。

 私はトランス版ノンプリⅡをボタン三回押すくらいしかやってないから細かいこと知らないからどんな設定があるかしらないのよね。


 それもふくめて、私はメリィベルに会わなくてはならない。


「んじゃジュリアそろそろ私打ち合わせあるから、ちゃんとご飯食べるのよ。日が出ている時はの光を浴びるようになさいね」


「うんジュリエッタさんもお仕事頑張ってね」


 ひとしきり話して適当にめくくり、ジュリアとの雑談を終えて、私は部屋を出る。


 ジュリアは自宅療養りょうようのため、ずっと学園に通えていない。

 小等部からずっと自宅学習制度を利用している。


 まあこれがモーフィング家が金欠の理由、自宅学習制度を九年以上続けるために学園へ寄付をし過ぎたことだ。


 ジュリアにしっかりとした学習の機会を与えて学園の卒業資格を与えたかったモーフィング子爵の深い愛情だったけど、本来短期的な運用を想定されていた自宅学習制度を無理に利用し続けるほどの資産はなかった。


 手当り次第に色々な事業に手を出したのはこの為だ。


 でも結局、事業は上手くいかずに破綻はたん寸前。

 ジュリアの体調も改善せず。


 そんなところを私たちは漬け込んだ……いや、ぴったりとハマってくっついた。


 私は事業計画の見直しや債務整理を行えたし、ジュリアの体調を回復させる方法も知っていたからね。


 ちなみにジュリアは不治の病とかじゃあない。

 ビタミンB1欠乏症けつぼうしょう、つまり脚気かっけだ。


 大昔の日本の食生活だと豚肉とか小麦を食べなかったりして起こったやつ。現代日本でも偏食が続くと起こりうるし、末端神経障害と心不全を引き起こすことがある実は結構厄介な病気。心不全から全身のむくみや痺れがあったり強い倦怠感けんたいかんにも襲われる。


 とはいえ食生活を改善すれば、わりとあっさり治るっちゃあ治る。豚肉食べて穀物食べてしっかり療養りょうようすればいい。


 でも、ジュリアにはそれが出来ない。


 ジュリアは重度のアレルギー体質で、ビタミンB1が摂取せっしゅできる食品に軒並のきなみアレルギー反応が出る。故に偏食を余儀なくされる。


 脚気かっけを改善しようとすればアナフィラキシーで全身に蕁麻疹じんましんが出て呼吸不全も引き起こす。

 アレルギーを気にし続けると脚気かっけの症状が出てしまう。

 心不全や呼吸不全による慢性的まんせいてきな体力不足と偏食で免疫力も下がっていて、風邪も引きやすいし怪我も治りにくいのであまり外出が出来ず運動不足で体力不足が改善しない悪循環が起こっている。


 これがジュリアの虚弱体質の理由。


 私は医者じゃないけど前世で医者と関係を持っていた程度の医療知識はあるし、栄養学や調理などに関してもスポーツトレーナーやシェフと関係を持つ程度の知識があったからね。


 アレルギーテストをパスしたサプリメントを作り出すなんてことは流石に個人じゃ無理だけど、アレルギー反応を起こさせずに効率よくビタミンB1を摂取せっしゅする食事療法やノワールによるストレッチ講座をしたりして少しずつだけど回復に向かっている。


 ジュリアの肌はボロボロでむくみも酷いし、女の子としては外に出歩きたくない姿になっている。ジュリアは可愛いのに、かなりもったいないし人前に出たくない。


 そこを埋めたら容易たやすく乗っ取れた。


 さて。

 だらだらと私の近況をわかるようなわからないような雰囲気で語ったけど。


 

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