私たちはいつもの時間に家を出た。それぞれが担当する店に向かったが、1号店に全員が集まるので、その準備をしなければならない。まだチーフの矢島も知らないことなので、最初に店に着いた私が支度をしていた。
しばらくすると矢島が出勤した。私の様子を見て矢島が言った。
「店長、何をやっているんですか? 今日のメニューでも書いているんですか?」
事情を知らないから臨時休業のお知らせがそう見えたのだろう。私は今朝美津子と話したことを矢島に伝え、準備の手伝いをしてもらった。とは言っても大したことはないので、すぐに終わった。
一方2号店だが、私が1号店に着いた後に美津子が到着した。同じように臨時休業の張り紙を用意していたらチーフの中村が出勤してきた。
「おはようございます、店長。何やっているんですか?」
矢島と同じ反応である。美津子も私と同じようなことを話し、これから1号店で今後のことをみんなで話し合うことになっている、ということを告げた。
この日の2号店は全員とまではいかないが、アルバイトでも長くやっている中心的なメンバーがやってくる。ただ、美津子たちよりも少し遅れて出勤するので、しばらくここで待つことにした。
そのことはすぐに電話で連絡を受けたので、私はそのまま店で待つことにした。1号店でもアルバイトの中心になっているメンバーが来ることになっているので、良いミーティングができそうな気がした。
2号店のメンバーがやってくるのは約1時間後になる。それまでは少し間があるので、私は矢島と少し話をすることにした。おそらく話の中心は私と美津子、そして1号店、2号店のチーフである矢島と中村が発言するだろうから、私は事前に予行演習的な感じで話しておこうと思ったのだ。
だが、話の本番はみんなが揃ってからになる。私と矢島だけで話を煮詰めたら全員が集まる意味がない。そこで世間話的なところからスタートした。やはりこういう時は以前矢島から聞いた将来の夢と、それが居酒屋だったというところの話になった。
「矢島君、先日、ちょっと話した中で将来居酒屋をやりたいといったことを話していたよね。今はどう? こんな世の中になって、不安とかない?」
私は矢島の目を見ながら話した。このことは今日のミーティングの際にも基本として必要な確認になる。本気度が高いほど、今日、良いアイデアが出てくるのではという期待もあるからだ。コロナの話とそれに絡んだニュースは毎日報道されている。だから、矢島もそれなりに考えているはずだと思ったのだ。