目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

緊急事態宣言発出 18

 その日の夜、私たちは自宅で今日のミーティングを振り返り、さらに具体的な話をすることにした。

 いつもよりも早く帰宅した私たちはリビングで軽い食事を用意し、ビールなどそれぞれが好きな飲み物を用意している。食事については店のメニューから持ってきているので、昼間のミーティングの時と雰囲気はあまり変わらない。違う点としてはアルコールの有無だけだ。

 もっとも、それは外見的なところだけの話であり、私たちの意識はかなり高くなっている。昼、集まったスタッフたちの思いや考え方を耳にしたからだ。

 正直、みんなの思いはもう少し低いものと思っていた。矢島は自分の店を持つことを考えていると思っていたので違うかもしれないが、具体的なアイデアまで今日披露してくれたのは有難かった。今晩の2人での話はそういうことを受けてのことであり、自分たちの店という現実的なことが関係している。

「今日矢島君から提案があった女性用のメニューだけど、何か具体的なアイデアはある?」

 私はこんな感じで話を切り出した。

 ミーティングでもアイデアは出たが、具体的なメニューというわけではない。野菜を前面に出したヘルシー系ということだったが、それは方向性のことだ。もちろん、今日の今日で具体的なメニュー案まで出すことは難しいだろうが、話をした以上、具体的なことを考えなければならない。

 ただ、前提が女性用のメニューということなので、こういうことは男性目線よりも女性目線が必要だ。

 そしてランチは女性だけが対象だけでなく、男性用も考えなくてはならない。そちらは私のほうが良いだろうから、具体的なメニューについては1号店が男性用、2号店が女性用として考えることで話がまとまった。

 新しいメニューの場合、どういう材料を使うかで原価が変わる。新しい食材を仕入れるとなることもあり得るが、できれば他のメニューにも利用できるものが良い。

 ランチの場合、価格設定も抑えなければならないが、それが専門ではない分、料金設定は少し高めになるかもしれない。それでも印象論として高くない範囲というのが必要なので、そこからどれだけ材料費にかけられるかを算定しなければならない。経営を念頭に置いたことだけに、この点はきちんと考え、実際に作ってみてボリュームや味、お得感といったところをどこまで出せるかを検討することにした。

 ただ、こういうことは本来、きちんと時間を取り、いろいろな方向性から考えなければならないことだ。今、大変な時期だからということで考えたことだが、現実には時間という壁が立ちはだかってることを改めて実感した。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?