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体調不安 8

 翌朝、7時頃に目が覚めた。昨晩おかゆを食べ、薬を飲んだところまでは覚えているが、その後は記憶が無い。おそらく、ぐっすり眠ったのだろう。ベッドは汗で湿ってるような感じだった。

 ベッドの横にある小さなテーブルの上を見ると、体温計が置いてあった。私は持ってきた記憶が無いので、おそらく美津子が夜、持ってきてくれたのだろう。

 この時、感覚的には昨日よりは体調の悪さを感じていなかった。身体の倦怠感が無くなっていたが、コロナによる体調不良というのは一晩寝たくらいで好転するものなのか、といったことを考えながらまずは体温を測ってみようと思った。

 脇の下の体温計を挟み、音が出るまでじっとしていた。ピピッと音が鳴った時に取り出して確認すると7度ちょうどで、数字的には微熱ということだろうが、身体的には熱が出ている感じはなかった。そしてその数字を見た時、気持ちの上でも安心感を感じだか、コロナに感染していないということではない。この点は検査結果を聞くまでは油断できない。熱が下がり、身体的には楽になったことで精神的には余裕が出たが、もしものことを考えると不安は残る。

 普段見るテレビはリビングに置いてあるが、寝室にも小さなテレビがある。私は昨日見ることができなかったニュースが気になり、スイッチを入れてみた。相変わらず、コロナの話題で一杯だった。

その様子を見て、もしかすると私も今日の感染者の数字に入るのかな、などと思っていると部屋のドアがノックされた。

「あなた、起きているの?」

 美津子の声だ。私がテレビをつけていることで起きているのに気付いたらしい。ドア越しに起きていることを告げるとマスク姿の美津子が部屋に入ってきた。

「どう? 具合は」

「ありがとう。今、体温を測ると7度だった。昨日の様子からすると熱があるという感じじゃない。身体も軽いし、昨日みたいな気持ちの落ち込みもない。解熱剤が効いたのかな」

「多分そうよ。顔色も昨日より良いし、目の様子も違う。いつものあなたに戻ったみたい」

「いやいやそこまでは無いと思うけれど、確かに昨日よりは体調は良い。だから、もしかするとコロナじゃなかったかな、なんて考えている。まだ検査結果が出ていないから安心できないけれど、ちょっと希望が出てきた。でも油断できないから、引き続き感染対策は続けてくれ」

「分かったわ。じゃあ、今朝もおかゆを用意したけど薬も飲まなくてはならないでしょうし、食べるでしょう? 昨日とは少し味を変えてあるから、同じおかゆでも違うと思う。味は分かるということだったから、少しでも食事を楽しんでね」

 美津子はそう言うと部屋から出て行った。味付けを違えるといった意識は商売柄のことかもしれないが、そういった心遣いが今はとてもありがたい。午後には検査結果の連絡もあるだろうが、それまでは気を抜けない。少しでも体力を落とさないよう、きちんと食事は摂ろうと思った。


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