車に乗ってしまえば自宅まで運んでくれるわけだが、降りてからはまた同じで、美津子に支えてもらい、やっとのことで家に入った。
とりあえずリビングのソファに座り、落ち着くことにした。病院に行っても結局は薬をもらうだけだった。痛みが経験するわけでもないし、帰宅して最初に行なったのは湿布薬を患部に貼ることだけだ。
「あなた大丈夫?」
美津子はそう言って私の腰に湿布薬を貼ってくれた。ひんやりして気持ち良かったが、それは最初だけで、少し時間が経つとまた痛みを感じていた。
私はできるだけ痛みを感じない姿勢を取り、少しでも気が紛れるように美津子と話していた。
「この前はコロナと疑うようなことがあり、今度はギックリ腰なんて、俺も年かな」
少し気弱になっていたためか、場が暗くなるような言葉を発していた。
しかしこういう時、美津子は気丈に振舞う。
「そんなことは無いわよ。体調を崩すことは誰にでもあるし、今回の場合は急に重いものを持ったからでしょう」
「そうだけど、これまではそんなことは無かった」
「昔あったじゃない、ギックリ腰。若い頃の話でしょう。今回のこともちょっとした加減でそうなったのよ。年だなんて言わないで。まだまだ若いし、頑張ってもらわないと」
口調は少し強い感じだったが、それは私を力づけるためだ。その心情が分かっている分、私はそれに対して何も言えなかった。
「・・・そうだな。まだ隠居って年じゃないし」
「そんな情けないこと言わないで。今はコロナで大変だけど、3号店や軌道に乗ってくればフランチャイズなども考えられるでしょう。まだまだ仕事、頑張らなくちゃ。みんなだって一生懸命なんだから、トップがそんな風では困るわ」
また叱られたような感じだか、言葉の奥には温かいものが感じられる。なんだかんだと言って私を励ましてくれているのだ。
「・・・ただ、今はいろいろ大変な時だろう。早くいつものように元気になりたいところだが、腰の問題は仕事に大きく影響する。昔は完治まで1月くらいかかったけれど、人件費のこともあるし、早く現場に戻りたい。でも、昔の時よりも今回のほうが痛みが強いような気がするし、もしかすると以前の場合よりも時間がかかるかなあ」
力なく私が話すと、美津子が何か思い立ったようだった。
「ねえ、奥田先生に相談してみたら。確か以前、ギックリ腰は劇的に好転することがある、ということをおっしゃっていたわ。この前のような体調不良じゃないから、行ってみれば」
その話を聞いて、私には一筋の光明を見た思いがした。私も以前、腰のことで施術をお願いした時、同じような話を聞いていた。そのことを思い出したためか、表情が先ほどと違い、明るくなったのが自分でも分かった。
「そうだな。じゃあ、明日にでもお願いしようか。美津子、悪いけれど、奥田先生のところに電話してもらえないか」
美津子は二つ返事で奥田のところに電話をした。今日私がギックリ腰になり、病院でもらった湿布薬を貼ったばかりだけど、何も変化が無い、ということを告げてくれた。その上で予約をしようとしたが、そういう事情ならと今日、時間外で対応してくれることになった。本来は最後まで予約で一杯ということだったが、急患ということで対応してもらえることになったのだ。美津子は何度も丁寧にお礼を言い、今日の午後9時ということで予約できた。