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ギックリ腰 7

 午後9時少し前、私は美津子と一緒に奥田のところを訪れた。一人でタクシーに乗るのは難しく、また降りる時のことを考えて来てもらったのだ。

 私たちが奥田のもとに着いた時にはスタッフと共に玄関のところで立っている様子が車内からも見えた。先に帰られたクライアントの方を見送られたのかとも思ったが、これまでそういう経験はない。玄関までは送ってもらうが、外に出てまでということは無かった。だから、この光景は少し変だったが、その理由はすぐに分かった。

 タクシーからはまず美津子が下車したが、それは私の降車をヘルプするためのことであり、ここまでは予定通りのことだ。

 しかし、私が下りようとする時、スタッフと奥田が手伝ってくれたのだ。腰が悪いという時はいろいろな動きの制限が生じ、動作の度に痛みが走る。今回、店から自宅に戻る時のタクシーの乗降の時もそうだったし、奥田のところ向かう際にタクシーに乗る時も同様だった。

 でも、今回はそれがスタッフに代わったところ、腰への負担があまり感じられなかった。全く痛くないわけではないが、その程度が軽いのだ。降りた時には奥田からも身体を支えられ、さらに痛みの感じ方が軽くなった。改めて身体の扱い方に長けていることを実感した瞬間だった。

「先生、ありがとうございます。こうやって支えていただいているだけでも痛みが軽くなりました」

 私は驚きと共に感謝の言葉を口にした。その言葉に美津子は不思議そうな顔をしていたが、私はリップサービスということではなく、本心からそう言ったのだ。奥田の店の玄関は自動ドアなので、そのまますんなりと室内に入ることができた。

 私が椅子に座った時点で美津子は最初に時間外に対応してくれた奥田にお礼を言い、私もそれに続いて感謝の言葉を口にした。

 そういった時間のおかげで一息つくことができたが、呼吸が整ったところで問診となった。

「雨宮さん、大変でしたね。何をされている時に腰を痛めました?」

 奥田が尋ねた。私は先日の体調を壊したところから店での出来事についてできる限り説明した。

「そうですか。じゃあ、体調を壊してほとんど間が開いていないところでビールが入ったケースを持って腰をおかしくしたわけですね。その後、病院に行かれたということですが、先生は何とおっしゃっていました?」

「ギックリ腰ですね、ということで湿布薬と痛み止めの薬をいただきました。今、腰に湿布薬を貼っています。でも、痛みは変わりません」

 他には骨へのダメージの有無について質問があったが、それについては問題ないということだったので、その旨も告げた。当然、痛む場所やその感じについても説明し、奥田はそこからいろいろ情報を得たようで、施術ベッドのほうに移動した。もちろん、この時もスタッフと2人がかりで対応してもらい、家の中で歩くよりも楽に移動できた。


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