目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

特訓!

「鑑定の魔法でちゃんと食用可って出たので大丈夫ですよー」


 ウェイトレスは笑顔でそう返してくる。


「食わず嫌いはダメなんじゃなかったのか? ラミッタ」


 マルクエンがいつぞやの仕返しとばかりに言うと、ラミッタはプンプン怒った。


「わかってるわよ!! 食べないとは言ってないでしょ!!」


 みんなはハハハと笑い、シヘンは大皿に乗った肉塊を切り分けてくれる。


「それじゃ、イタダキマス!」


 マルクエンは豪快に肉へとかぶりついた。熱々のそれからは肉汁が溢れ出て、旨味を感じる。


「むっ、美味いぞ!!」


 ラミッタも一口大に切った肉を食べた。


「あら、結構美味しいじゃない」


「外側はあんなにカッチカチなのに中身は柔らかいんスね。カニみたいなもんすかねー」


 マルクエン達は夢中で肉を食べる。肉体労働の後なので身に沁みて美味い。



 翌日、マルクエン達は早速サツマの工房へと足を運ぶ。


「よう!! 今、竜の素材を溶かしている所だ!!」


 大きな溶鉱炉からは熱気と赤い光が放たれている。


「昨日、試作品として急遽造ったナイフがあるんだが、持ってみるか?」


「えぇ、それでは」


 マルクエンは黄金色こがねいろに光るナイフを持つ。


「あの竜のだからこの色なのは仕方ないけど、金ピカの剣なんて悪趣味ね」


「そうか? 格好良くて良いじゃないか!」


「この木でも切ってみるかい?」


 サツマは薪木まきぎを一本手渡す。マルクエンは試しにと木を削ってみた。


 刃は、まるで茹でたじゃがいもを切るように、抵抗なくすんなりと通る。


「おぉ、これは凄い」


 ラミッタもナイフを手に持ち、試すと驚いていた。


「なるほど、なかなか良いじゃない。それに魔力の伝導率も高そうだわ」


「俺の人生最高傑作が出来るかもしれねぇ。ホント感謝だよ」


 そう言って感極まるサツマにマルクエンは尋ねる。


「剣はどのぐらいで完成しそうですか」 


「まぁ、急いで五日は欲しい所だな」


「あのキザ勇者を待たなきゃいけないし、気長に待ちましょうか」


「そうだな」


 ラミッタは後ろに待つシヘンとケイの方を振り返った。


「それまであなた達の訓練といきましょうか?」


 ニッコリと微笑むラミッタが逆に怖い。


「お、オッス! お願いします!」


「わ、私も頑張ります!」






 マルクエン達は早速、街の外で特訓をすることにした。


「あのー、本当に真剣で大丈夫なんスか?」


「大丈夫よ、それともあなたは宿敵に傷を負わせる自信でもあるのかしら?」


「いや、無いっス!! 微塵も無いッス!」


 ケイは剣を持ってマルクエンと対峙する。シヘンは心配そうに見つめていた。


「私から攻撃はしませんので、遠慮なく来て下さい」


「了解っス。それでは!!」


 ケイは剣を振り上げてマルクエンの元へと走り出す。近づくとそのままの勢いで袈裟斬りにしようとした。


 マルクエンは剣を横に構えてそれを弾く。ケイの手はビリビリとした衝撃を感じていた。


 次はそのまま力を込めて横薙ぎに剣を振るうも、マルクエンはさっと後ろに引いて避ける。


 最後に突きを繰り出すも、簡単に弾かれ、ケイは体勢を崩した。


「なるほどね、ケイはまず基礎中の基礎、体幹を作らないとね」


「は、はいっス……」


 ラミッタに言われ、ケイは言葉に詰まる。


「とりあえずそっちで素振り千回ね」


「うぇっ!? わ、わかりました……」


 そして、ラミッタは心配そうに眺めていたシヘンの方を振り返り、ニッコリ笑う。


「次はあなたの番よ?」


「あっ、はい! わかりました!」


 シヘンは杖を強く握り、ラミッタを見つめる。


「それじゃ、私にどんどん魔法を打ち込んできなさい。殺す気でね」


「わかりました!!!」


 シヘンは杖を振り、火の玉を数発ラミッタに向けて放つ。


 その間にも詠唱を続け、雷を追撃として飛ばす。


 ラミッタは片手で魔法の防御壁を張り、全てを打ち消した。


「もっと打ってきなさい!!」


 シヘンは言われるがまま、火、雷、氷といった魔法を放ち続けた。


 10分程して、シヘンは地面に片膝を付く。


「はぁはぁ……」


 汗をかきながら、うずくまるシヘン。マルクエンは心配そうに歩み寄った。


「大丈夫ですか? シヘンさん」


「平気……。です」


 ラミッタはシヘンに近付いて言う。


「まだまだ魔力が不足しているわね。これから毎日魔法を打つわよ?」


「は、はい……」


 マルクエンはケイに付いて、ラミッタはシヘンの面倒を見ている。


「ケイさん。腕はこう伸ばして、こう構えると良い」


 マルクエンはケイの体を触り、構えを教えている。


「こ、こうっスか?」


 筋肉質なマルクエンの腕や胸に触れて、少しドキドキするケイ。


「あぁ、そうです」


「了解っス!」


 ラミッタは少し回復したシヘンに魔法の打ち方を教えていた。


「それじゃ、あの的に向かって火を打ち込みなさい!」


「わかりました!」


 言われた通り狙って打つが、着弾したのは十発中二発だけだ。


「もっと指先に神経を集中させて、よく狙うのよ」


「はい!!」


 二人の指導を受けた二人は、夕方頃にはすっかりクタクタになっていた。


「も、もうダメ、動けないッス……」


「わ、私も……」


「二人共、体力も作らないといけないわね」


「だが、センスは良い方ですよ」

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?