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第41話 ころちゃん視点 不埒なことをしようとしたフェルディナントのお尻に噛みついてやりました

カーラはその後フェルディナントを繁華街に連れ出した。

人が多い。

カーラはその人混みの中、可愛い小物を置いている雑貨屋を見つけた。入りたそうだったが、今はフェルディナントを連れているから、我慢しようとしたみたいだ。

「カーラ様。興味があるのならば見ていきましょうか?」

「えっ、でも、男の方はあまりそういう物は興味がないかと」

「そんなことはないですよ。モルガンの雑貨屋さんにどんな物があるかとても興味があります」

そうフェルディナントは格好つけてくれた。

「まあ、いろんな可愛いのがあるのですね」

カーラはその中可愛い犬のブローチを見つけたのだ。

カーラは俺とブローチを見比べていた。

「この犬のブローチが気に入ったのですか」

フエルディナントが聞いていた。

「えっ、判りました。可愛いかなと思ったのです」

「なんなら、つけてみればいかがですか。きっとよくお似合いになると思います。良ければ案内して頂いたお礼に私から贈りますよ」

フェルディナントが格好つけていってくれた。俺はなんとも不満だった。本来は俺がカーラに贈りたいのに、フェルディナントに先を越されるのは嫌だ。

「でも、そこまでして頂く訳には」

「いや、このような安物をカーラ様に贈るのは心苦しいのですが、宜しければ是非」

この野郎! 俺は吠えて止めさせるかどうか考えた時だ。

「じゃあ、つけてみますね」

カーラが言ってくれたのだ。

そんな……俺よりも先にフェルディナントがカーラにプレゼントを贈るなんて許せない!

俺がほえだそうとした時だ。

カーラはなんとそのブローチを俺様の首輪につけてくれたのだ。


「えっ?」

俺はきょとんとした。フェルデイナントも同じだ。


「そんなに変ですか?」

「いやいや、そうですね。とてもお似合いですよ」

フェルディナントが愛想笑いをしてくれているが、そうか、本来は男の俺からカーラに贈りたかったが、カーラは俺のことを考えてくれていたのだ。


「良かったわね。ころちゃん、フェルディナント様にブローチ買ってもらって」

「うー」

俺はカーラが言うからつけてやったが、フェルディナントからというのが不満だった。

「まあ、ころちゃん、とても可愛いわよ」

カーラはそういうと俺を抱きしめてくれたのだ。

まあ、仕方がない。ここはカーラから贈られたということにしておこう。俺は我慢することにしたのだ。


「なんか、子犬が羨ましいです。私も子犬になりたい気分です」

フェルディナントが羨ましそうにいってくれたので、ふんっ、そうそう俺はカーラに抱きしめられる存在なのだ。


「わん」

俺は自慢して吠えてやったのだ。



そのまま俺たちは中央公園に行った。

俺はあまりにも広い広場に野生の本性で駆け出してしまったのだ。

しかし、カーラのことを考えに入れていなかった。一生涯の不覚だった。カーラは俺について来れずに、転けそうになってフェルディナントに助けられていたのだ。

最悪だった。フエルディナントに抱きかかえられるカーラを見て俺は青くなった。


「おけがはありませんか?」

「はい、ありがとうございます」

カーラはほっとしたみたいだ。

「フェルディナント様、とても近いです」

カーラが悲鳴を上げていた。

「あっ失礼しました」

フェルディナントがカーラを離してくれたが、

「わんわんわんわん」

俺はここぞとばかりに、吠えたのだ。

「これ、ころちゃん。あなたがいきなり駆けだしたから私が転けそうになった所をフェルディナント様に助けて頂いたのよ。元はころちゃんが悪いんでしょ」

カーラの叱責に、

「くうん」

俺様は反省するしかなかった。

でも、それが間違っていたのだ。


「カーラ様。出来ればあなたに見せた異風景があるんです」

フェルディナントが何か言い出してくれた。俺はもっと警戒すべきだったのだ。


「この子犬が又いきなり走り出したら危ないですし、いなくなると探すのも大変です。だからここに繋いでおけば良いのではないですか。他の犬たちもたくさんいるみたいですし」

フエルディナントはそう提案してきた。見ると皆木に繋いで丘の上に行っているみたいで、たくさんの犬が木にリードで繋がれていた。


「すぐに帰って来るからね」

「わんわん」

俺は必死に抵抗しようとしたのだ。こんなカップルの多いところで、カーラとフェルディナントを二人だけにしてはいけないと。

でも、カーラは俺を繋いでくれたのだ。

そして、俺は必死に叫んだのに、おいて行かれてしまったのだ。

くっそう、このままではいけない。

俺は人間化しようとしたが、無理だった。

こうなれば紐を外すしかない。

俺は結び目にかみついたのだ。

必死に引っ張る。でも、びくともしない。こうなれば押したり引いたりしていたら少し緩くなってきた。

よし、今だ!

やっと、紐が外れたのだ。


おのれ、フェルディナントの奴、もう許さん!

俺は必死に坂を駆け上ったのだ。


そして、見晴台で、カーラの手に汚らしい手を重ねて迫っているフェルディナントを見つけたのだ。


「わんわん!」

俺は吠えて、フェルディナントに迫ると、怒りのあまり、

ガブっ

という音とともに思いっきり噛みついたのだ。

「ギャッ」

フエルディナントが叫んで、飛び上がった。

「痛い、離ら!」

フエルディナントは必死に俺を離そうとしたが、天誅だ。

俺はなかなか離さなかった。


「ころちゃん、だめでしょ。離しなさい」

「痛い、痛いから」

俺は泣き喚くフェルディナントからカーラに抱っこされてやっと離してやったのだ。


「うーーーー。わんわんわんわん」

俺は怒って吠えてやった。

「痛たたた」

フエルディナントがお尻を押さえている。

ざまあみろだ!

「フェルデイナント様、大丈夫ですか?」

カーラが心配して聞くと

「大丈夫ですよ。噛まれたのは高々子犬ですから」

やせ我慢をいっていたが、俺が思いっきり噛んでやったのだ。痛くないはずはなかった。

カーラはその後もフェルディナントに謝っていたが、これでしばらくフェルディナントはカーラに近寄らないだろう。


俺は後でカーラから大きなお肉をもらったのだ。

「よくやってくれたわ、ころちゃん。あなたは私のヒーローよ!」

カーラはそう言って俺のほっぺたにキスしてくれたのだった。


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