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第53話 ころちゃん視点 フェルディナントの部屋に探りに行ったらフェルディナントと目が合ってしまいました

俺はフェルディナントのカーラに対する気持ちに不審感を抱いていた。

フェルディナントはカーラとアレイダを天秤に掛けているのではないかと思えたのだ。

この前、天井から覗いた感じではフェルディナントはカーラの方に気があるみたいだが、フェルディナントもサウス帝国の皇子だ。国の方針によってはあっさりと方針を変える可能性がある。


その俺様の懸念は甘味処でますます強くなった。

なんといきなり、アレイダが現れたのだ。

その事に対するフェルディナントの驚きようは本物のように見えたが、おそらく大使か側近がアレイダにばらしたのだ。でないと、アレイダがここにいる理由が説明できなかった。


俺の個人的な感情はフェルディナントがどっちつかずの態度をしてくれる方が、カーラの気持ちが白い騎士に向くので歓迎していた。しかし、カーラのことを考えると果たしてそれで良いのかと不安に感じてしまう。

今モルガン王国は宰相のレーネンの力がとても強くなっている。それは昔からの名家に加えて、本人がノース帝国の側室腹だが皇女を嫁に迎えたからだ。そこに出来た娘がサウス帝国の皇子を婿に迎えれば宰相家は南北両帝国と縁続きになる。そうなればいくら王家とはいえ、モルガン王家はとても難しい位置に立つのは確実だった。


その上で宰相としては王室のただ一人の継承者であるカーラの王配を宰相の息子にすれば、完璧だった。宰相は確実に未来の国王の祖父になるのだから。

今回カーラを攫って強引に事に及ぼうとしたのも、その考えがあってのことだ。カーラと宰相の息子が結ばれれば王家としてはその婚姻を了承するしかなくなるのだから。


宰相家の専横を抑えるにはカーラの王配にフェルディナントを迎えて、王国の後ろ盾にサウス帝国を置くのが一番良い方法だろう。

まあ、そうなればそうなったで、王国はサウス帝国の傀儡になりそうな気もするが……


しかし、それ以前に宰相に反乱でも起こされたら滅ぶしかなくなるのだ。


目の前の火の粉を振り払うにはカーラの婿にフェルディナントを迎え入れるのが一番確実な方法だろう。


それを踏まえて、俺様はフェルディナントのところに大使が慌ててやってきた理由が知りたかった。本国は何をフェルディナントに言ってきたのだろう。あのフェルディナントの激高ぶりから考えるに、フェルディナントの意向が通らなかった可能性が大きいと思われた。王家にとって不利なことになっている可能性があった。


俺は甘味処をすぐに出て王宮に帰っていろいろと探りたかったが、カーラは中々席を立ってくれなかった。

決して俺がフルーツをたくさん食べていたからという理由ではない。


フェルディナントの馬車でカーラに抱き上げられて王宮に帰ってきた俺は、すぐにでもフェルディナントのところに探りに行きたかった。


王宮に降り立ったついでにカーラの胸元から飛び出そうとしたときだ。ぎゅっとカーラに抱きしめられたのだ。

「ころちゃん、逃げようとしてもだめよ」

カーラは何故か俺が飛び出そうとしたことを察知してくれたようだ。

そのまま俺を抱きしめる力を強くしてくれた。そこから無理矢理飛び出すことも出来たが、カーラが大騒ぎしたらさすがにまずい。

俺はすぐにでもフェルディナントのところに行って調べたかったのだが、カーラの手前静かに抱き上げられているしか出来なかった。


俺は取りあえずカーラの部屋に一緒に帰った。


この前のように夜に抜け出るしかないだろう。


でも、すぐに寝てほしい時に限って、カーラは中々寝てくれなかったのだ。

「ころちゃん、どう思う。フェルディナント様は不誠実よね」

寝間着に着替えたカーラは、眉間にしわを寄せて俺の瞳を見つめてくれた。

俺は仕方なしにカーラの鼻をペロペロ舐めてやったのだ。


「まあ、ころちゃんったらくすぐったいわ」

カーラが俺を思いっきり抱きしめてくれた。

「わんわん」

俺も嬉しくなってつい、カーラとはしゃいでしまったのだ。



結局カーラが寝てくれたのは、いつもの時間よりも1時間も遅かった。


俺はカーラの腕からそおっと抜け出した。


「ああん。ころちゃん逃げちゃだめ」

カーラの声がして俺はぎょっとした。


「むにゃむにゃ」

慌てて振り返るとカーラは寝返りを打つところだった。寝言だったみたいで俺はほっとした。

そして、それから慌てて引き出しを前のように階段状にしたのだ。


そして、慌てて天井裏に飛び込んだのだ。


今日は時間的にこの前の時間よりも少し遅い。俺は少し焦っていて注意力が散漫になっていた。


天井裏をこの前のようにとことこ走っていったが、

ガタンッ

俺は天井を踏み抜いていたのだ。


やばい!


幸いなことに後ろ足が一本嵌まっただけだった。

なんとか足を抜いて下を見ると廊下だった。気配を探るも誰もいなかったみたいだ。

俺はほっとした。

天板が雨漏りの水で少し傷んでいたのだ。



ここからは慎重にフェルディナントの部屋に向かった。

俺がほっとしたことに、フェルディナントの部屋はまだ明かりがついていた。


俺は天板の隙間からそっと下を覗いたのだ。

その瞬間だ。ベッドに寝そべって上を見ていたフェルディナントの目と、ものの見事に俺の目が合わさってしまったのだった。















































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