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第61話 ころちゃん視点 天井裏で侍女達がノース帝国の千人の兵士がやってくると噂しているのを聞いて度肝を抜かれました

そのままコリーは自分の部屋に直行してくれた。

「もう、本当にびっくりしたんだからね。シロちゃん。くしゃみするなんて、本当に心臓が止まるかと思ったわ」

コリーが俺を服の中から出して話しかけてきた。


「わん」

俺もこのくしゃみは本当にコリーに悪かったと思ったので素直に頷いたのだ。

そして、悪いと思ってその顔を舐めてやった。


「もう、シロちゃんったらくすぐったい」

コリーは喜んでくれた。

そのコリーの顔を舐めつつ、俺はカーラに謝っていた。


でも、俺とカーラは釣り合わない。

獣人国を追放された俺よりはサウス帝国の第四皇子のフェルディナントの方が悲しいことにカーラにはふさわしかった。俺はその事実を噛みしめていた。


そういえばカーラは俺の残した置き手紙を見て、もうフェルディナントに会ったんだろうか?

俺は心の片隅が痛んだ。

まあ、しかし、カーラの為にはフェルディナントのサウス帝国を頼るしか手がないのだ。

サウス帝国さえ王家に味方してくれればまだなんとかなるはずだ。

カーラがそのまま王族としていられるのはサウス帝国の動きいかんにかかっているのだ。追放王子の俺の気分などこの際考慮に入れてはいけなかった。


俺はこの宰相の館で、出来ることをやろう。

俺は覚悟を決めたのだ。


夜になると俺はコリーに風呂場に連れて行かれた。

俺は前回みたいに風呂場から逃走することは今回はしなかった。

素直に、コリーに洗われたのだ。一応、コリーとの約束は守るつもりだ。

そう、コリーが起きている間は……


お風呂の後はコリーが俺を抱き枕にして寝てくれた。

コリーが軽く寝息をかき出した頃、俺はゆっくりとコリーの胸から抜け出した。胸の大きさだけで言うと圧倒的にコリーの方が大きかった。カーラにはそんなことは口が裂けても言えなかったけれど……


俺はコリーの部屋の備え付けの衣装棚の扉を開ければ、天井の隙間のすぐ傍に行けるのに気付いたのだ。


早速扉を開ける。

そして、扉の裏側には足をかける部分がたくさんあった。俺は思いきって下から一気に登った。


しかし、天板にはあと少し足りない。

俺は扉の上に掴まり立ちして、手を伸ばす。


うーん足りない。


思わず手を伸ばして


バシン


という大きな音がして天板は少しだけ動いた。


「うーん」

下のベッドでコリーが寝返りを打ってくれた。

起きたのかと慌てて見るも、今のところ大丈夫みたいだ。


俺は再度、手でできる限り静かにパンチした。


少し隙間が開いた。


よし、これで飛ぶしかない。


俺はジャンプしたのだ。


天板にしがみついたが、やばい、落ちる!


俺は必死に天板にしがみついた。


なんとか掴んで体を天井裏に上に上げた。

危ない危ない。あのまま落ちたらもろにコリーの顔の上に落ちるところだった。


俺様は取りあえず、天井裏から位置を把握するのに努めた。

ここは3階でこの下の2階が宰相一家が住んでいるスペースのはずだ。

この屋根裏からは2階には降りられそうに無かった。


が、壁の横に走っている水道管が下のフロアに続いているところがあった。

その隙間に俺はなんとか入れた。

俺は配管を掴んで滑り降りたのだ。


そこは2階の天井裏だった。


慎重を期して歩く。


取りあえず、人間が入れるスペースはあるが、天井は薄いみたいで人が乗ればすぐに天井が抜けるみたいだった。


俺は子犬だから全く問題はなかったけれど。


宰相の執務室も見つけたけれど、さすがにこの時間は誰もいなかった。


警戒もしているかもと俺は慎重に歩き回った。


途中で下から話す声がした。

侍女達の控え室らしかった。


俺はゆっくりと近づいたのだ。


「どうしよう。宿下がりを願い出たんだけど、却下されちゃった。何でかな?」

侍女の一人が同期とおぼしき女に尋ねていた。

「忙しいんじゃないの? 通いのメイドとかはそのままみたいだから」

もう一人の侍女が答えていた。


「でも、お父さんの具合が少し悪いのよね」

「その話もしたの?」

「したんだけど、しばらく忙しくなるから出来たら1ヶ月先まで待ってほしいって侍女長に言われたのよ」

「じゃあ仕方が無いじゃない。外の兵士の宿舎にも、また、見た目が厳つい傭兵みたいな人がたくさん増え出したじゃない。それで忙しくなるんじゃないのかな」

「うーん。そうね。でも、侍女長が話していたんだけど、何でもノース帝国から兵士の人達が、千人くらい来るみたいなの」

俺はその侍女の言葉に目を見開いた。

千人ってこの国の騎士の数よりも多いぞ!

全ての兵士をあわせても5千人くらいだ。そのうち、宰相の派閥の兵士達は2千はいるはずだ。ノース帝国の千人の兵士を加えたら、兵士の数だけでも宰相の方が多くなる。宰相は本当に早急に事を起こすつもりみたいだった。


「えっ、千人も? この屋敷に入れるのは100人位よ」

「だからその泊まる所をテントを張って作るそうよ」

「そうなの? それは大変じゃない。いつくらいに来るって」

侍女が聞いてくれた。その情報は俺もとても欲しかった。


「一週間から二週間くらい先みたいよ」

俺は侍女の言葉を噛みしめた。

最悪、早ければ一週間後に宰相は事を起こすつもりだ。


俺は取りあえず、コリーの部屋に戻ることにした。


思った以上に悪い情報を仕入れられた。

しかし、もう少し時期とか詳しい情報を手に入れたい。

俺はまた明日精力的に情報を仕入れようと決めたのだった。


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