私はそれから決算書類を必死に読み出した。
でも、全然判らなかったの。
しばらくうんうん唸っていたけれど、
「ころちゃん判る?」
私が聞くと、
「クーーン」
ころちゃんも首を振ってくれた。
私は仕方なしに、ベンヤミンに書類の見方を聞いたのだ。
ベンヤミンは丁寧に、その書類の見方を教えてくれた。
さすが宰相補佐だ。
子供の頃から小さな領地を任されて自分で運営していたらしい。
何もしていなかった私とは大違いだ。
でも、こんなの見方を教わらないとできないじゃない!
私はフェルディナントのやり方に少し憤りを感じた。
でも、これは2人が出来るなら私も出来るようにならないといけない。
「私も頑張らないといけないわね」
私がそう宣言すると
「わんわん」
ころちゃんが頷いてくれたのだ。
「カーラ様も頑張れば出来るようになりますから。今まで陛下もカーラ様には過保護すぎたのです」
ベンヤミンも肯定してくれた。
しかし、その日の夜遅くまで読んでも半分も行かなかったわ……
でも、半分も読めたら凄いと思ったのだ。
しかし、翌日フェルディナントは私の努力を全く評価してくれなかった。
「まだこれだけしか読めていないのですか? 私は全て読むように言ったはずですが」
フェルディナントは私に対して塩対応だった。
そこまできつい言葉を言われる謂れはないわ!
私はむっとした。
「わんわん!」
ころちゃんもフェルディナントに向けて吠えてくれた。
「カーラ様。私は陛下からこの一年間でカーラ様を一人前の跡継ぎに育てて欲しいと頼まれているのです。そんなトロトロしたスピードでは絶対に跡継ぎなんてなれませんよ。私の指示したものは私が8歳の時にサウス帝国の宰相から指示受けたものです。カーラ様は、今はいくつですか」
そうフェルディナントにそう言われたら私は反論も出来なかった。
仕方なしに、謝るとまた必死に書類を読み出したのだ。
でも、書類を読むのはなれない身には難しく、翌日までには出来なかった。
「カーラ様。あなたは跡継ぎになる気があるのですか?」
翌日フェルディナントは更にきつい言葉を発してくれた。
「2日間もかけてこの書面を読み終えないなんて遊んでいるしか思えません」
「そんな、フェルディナント様。さすがにその言葉は姫様に対して、きつすぎるのではありませんか?」
サーヤが私を庇ってくれたが、フェルディナントはその言葉に大きく首を振ったのだ。
「カーラ様。私は父や宰相からは出来なければ出来るまでやらされたのです。あなたは将来この国を背負って立たれるのですよね。私やベンヤミンが8歳の時に出来たことが出来なければ、将来この国を背負って立つ事なんて到底できませんよ」
フェルディナントはきつい言葉を述べると、去って行ったのだ。
後には涙が目に溜った私が残された。
「本当にフェルディナント様は姫様にきつすぎますよ」
サーヤが怒り出してくれたが、
「でも、フェルディナント様もベンヤミン様も8歳の時に出来たというのよ。私は既に16歳になっているのよ。頑張れば出来るはずよ」
私は涙を拭いて、書類を読み出そうとしたのだ。
「しかし、姫様、あまり根を詰めすぎますと、美容に障ります」
サーヤが注意してくれたが、将来女王になろうと思ったら美容よりもならないといけないことはあるのだ。
「カーラ様。幾ら私やフェルディナント様でも、8歳の時にいきなりこの書面を1日で読めと言われたら無理ですよ。俺もフェルディナント様ももっと小さい頃から会計書類にはなれていたから出来たのです。いきなり1日でやれと言われても普通は出来ませんよ」
ベンヤミンが私を庇ってくれた。
でも、私は言われっぱなしで終える訳には行かなかった。私はこの国を将来背負っていくのだ。
「本当にフェルディナント様も自分が白い騎士に負けたからって、そこまできつくしなくてもいいのに」
「白い騎士に負けたからってどういう事ですか?」
私はベンヤミンの言葉に対して質問していた。
「彼はせっかくカーラ様の王配になろうとしていたのに、今回の戦いでいいところを全て白い騎士に取られたから機嫌が悪いんだと思いますよ」
ベンヤミンが教えてくれた。
「確かに戦いでは白い騎士様の活躍が大半でしたね」
サーヤはその言葉に頷いてくれるんだけど……
でも、フェルディナントもベンヤミンも8歳で出来たのだ。16の私が出来ないと泣いていることは出来なかった。
その日は読み終えるまで死にもの狂いで頑張った。
ベンヤミンも遅くまで付き合ってくれてたのだ。
翌日やってきたフェルディナントに私は胸を張って読めた旨を報告したのだ。
「カーラ様。やっと、読めたのですか? 私達が8歳で出来たことが」
しかし、フェルディナントからは褒め言葉ではなくて呆れた言葉しか出てこなかった。
私は下唇を噛んだ。
「まあ、16歳で始めたにしては上乗でしょう」
しかし、その後で表情を緩めてフェルディナントは褒めてくれた。
「良いのです。フェルディナント様、無理して褒めなくても」
私が首を振ると
「その心意気です。カーラ様には私が鬼に見えるかも知れませんが、今まで何もされてこなかったあなた様を一人前の君主候補にするには並大抵のことでは済みません。私も鬼にならざるを得ないのです。そこだけはご理解ください」
「はい」
フェルディナントの言葉に私は頷いた。
少しはフェルディナントの立場について理解したと思ったのだ。
それが誤りだった。
この後3倍の書類を与えられて翌日まで読めと言われて私は唖然としたのだった。