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第92話 ころちゃん視点 他の暗殺視野を調べることにしました

それからが大変だった。

フェルディナントはいろんな質問を俺に聞いてきたのだ。


「奴らの目的はあなたなのか?」

「わん!」

おそらくそうだと俺は頷いた。

「マクシム殿。奴らはどうやって屋根裏部屋に入ったのだ?」

「うーーー」

俺は唸って首を振った。

「マクシム殿でも判らないのか?」

判る訳はないだろう! 俺が聞きたかった。


「奴らは誰の命令で動いているのだ?」

「わんわん!」

「吠えられても判らないのだが……」

確かにフェルディナントの言う通りだったが、ならば聞くなと俺は言いたかった。


「あなたの異母兄のバーレント殿か?」

「わんわん!」

俺は大きく頷いた。


「なるほど、だが、バーレント殿はそもそもどうやってあなたがここにいると判ったのだ?」

フェルディナントが聞いてきたが、そんなのは俺が教えて欲しいくらいだった。

俺は首を振るしか無かった。そこは全く判らなかった。


おそらくというか当然兄の指示で動いていることは確実だとは思うが、どうやって俺がモルガン王国にいると気付いたんだろう?


俺とフェルディナントの問答は俺が話せないので、頷くか首を振るかしか無かった。

本当にもどかしかった。


「しかし、参ったな。あなたが狙われているのならば、カーラ様の傍にあなたがいあるのは良くないのではないのか?」

フェルディナントの質問に俺は固まってしまった。

確かにフェルディナントの言う通りだ。俺を獣人が襲ってきてカーラが傷つけられたらしゃれにもならない。

危険があるのならば俺がカーラの傍にいるのは良くなかった。


でも、それならどうすればいいのだろう?


国王の傍にいるのが安全だとは思うが、奴らはこの前、俺を檻に閉じ込めてくれたのだった。

それだけは嫌だった。


俺はフェルディナントを見た。

こいつはこう見えてサウス帝国の第四皇子だ。その傍ならばおいそれとは兄も手を出せないだろう。下手に第四皇子のフェルディナントが傷ついたら外交問題だ。

兄はさすがにサウス帝国と事を構えるつもりはないだろう。


「わんわん!」

俺はフェルディナントに吠えかけたのだ。

「はい?」

フェルディナントは俺の視線を見て気付いたみたいだった。


「俺の傍にいたいと言うのか?」

「わん!」

俺は頷いたのだ。

「俺は男と一緒に生活するつもりはない。それだけは嫌だ。何を好き好んで恋敵を匿ってやらねばならないんだ。それも命を狙われている男なんかと一緒にいるメリットが私には何もないではないか」

フェルディナントは断ろうとしてくれた。

でも、俺はここで断られたら、行くところがなくなる。

俺はここでとっておきの事を披露することにしたのだ。

俺はフェルディナントのペンを咥えたのだ。


「何をするのだ? まあ、何をしても置いてはやらんが」

そう言うフェルディナントの前に

『大使アレイダを推し、カーラ裏切った』

俺が書くと

「何を言っているんだ。俺はずっとカーラ様押しだぞ」

「でも、大使を否定しなかった。それカーラに言う」

俺がそう書くとフェルディナントは苦虫をかみつぶしたような顔になった。


「マクシム。お前本当に性格悪いのだな」

フェルディナントがそう言うが、それはお互い様だ。


「仕方が無い。隅に置いてやるから、ベッドに入り込んでくるなよ」

フエルディナントはそう言うと、侍女に指示して、タオルを敷いた籠をベッドの横に用意してくれた。

俺は仕方なしにそこで寝起きをすることにしたのだ。


その前にカーラの騎士に俺がフェルディナントの所でしばらく生活する旨を連絡してもらった。


獣人は何人くらい潜り込んでいるんだろう?

1人だけということは無いはずだ。

組織的に入り込んでいるだろう。でも王宮には簡単には入り込めないはずなのにだ。誰かの推薦が無いと難しい。先程の男が誰の推薦で入り込んだのか早急に調べる必要があった。

俺はそんなことを考えながら眠り込んでしまったのだ。


俺は翌日からフェルディナントの力を借りて積極的に調べ始めた。


獣人は鼻が効くものが多い。特に俺は犬の獣人だ。匂いを嗅げばその人物が獣人かどうかはすぐに判る。

だから俺が王宮の中を闊歩すればすぐに獣人が見つけられると思ったのだ。

しかし、俺が王宮を歩き回っても獣人の匂いはしなかった。

おかしい。絶対に忍び込んだのが1人な訳はないはずなのに。

幾ら歩いても獣人の匂いはしなかったのだ。


フェルディナントも俺を襲ってきた男の身元を調べてくれたのだが、男は王宮の使用人ではなかったのだ。


どういう事だろうか?

男は警戒が厳重な王宮に忍び込んで俺を襲ってきたのだろうか?

しかし、協力者無くして、潜り込むのは至難の業だった。

あれだけ大きな音を立てて大立ち回りしたのだ。

絶対に見張り役もいたはずだ。

誰も手引きしたものがいないなんて絶対にあり得なかった。


でも、歩いても歩いても獣人は見つけられなかったのだ。


俺がその声を聞いたのはたまたまだった。


「ねえ、今日もメリーはお休みなの?」

「そうなの。何でも風邪をこじらせたらしいわ」

「もう三日も休んでいるのよ。大丈夫なの?」

「病気じゃ仕方が無いわよ」

侍女達が話していたのだ。


3日前というと俺が襲われた日だ。

俺はその使用人が気になったので調べることにしたのだ。






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