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第93話 ころちゃん視点 敵のアジトに探りに行ったら捕まってしまいました

「メリー、それはだれだ?」

翌日俺が書いた紙を見てフェルディナントが聞いてきた。


それを調べるのがお前の仕事だろうが!

俺はむっとしつつ首を振った。


「メリーとは侍女なのか」

「わん!」

おそらくそうだ。


「獣人なのか?」

「うー」

さあな、それを今から調べるんだろうが!

さっさと調べてくれ!


「メリーとだけ言われてもな」

フェルディナントが頭を抱えていた。

王宮は広いとは言え獣人王国の10分の一くらいしか無い。使用人の数も高々知れているだろう。調べようとすればすぐに調べられるはずだ。

つべこべ言わずにさっさと調べてくれよ!

俺はそう叫びたかった。


「メリーという女なら、厨房の下働きの女ではないですか?」

別の仕事をしていたベンヤミンが振り返って教えてくれた。


「何でも3日前から休んでいるそうですよ。少し噂になっていました」

「わんわん!」

俺はそうに違いないと頷いた。


「わんわん!」

そして、フェルデイナントにその女の経歴等を調べろと俺は吠えたのだ。


「本当に煩い犬だな」

ブツブツ言いながらフェルディナントはベンヤミンに指示を飛ばしてくれた。

「メリーという女の経歴等が判る書類を出してくれ」

ベンヤミンが部下達に指示をして調べてくれた。


その結果集まった書類によると、メリーの推薦人は宰相派と目されたゴモラ子爵だった。

宰相派と獣人は全く別のグループだ。


別に子爵と獣人は関係なさそうだった。メリーはやはり獣人ではないのか?


その書類によるとメリーは王宮に配属になったのは一週間前だった。

王都のレストランの推薦状も付いていた。

別に書類を見る限りはどこも怪しいところは無かった。


しかし、俺はどうにも気になったのだ。

俺の勘がメリーは黒だと叫んでいた。


俺はフェルディナントに頼んでメリーの所に連れて行ってもらうことにしたのだ。

忙しいにもかかわらず、フェルディナントは何故か一緒に来てくれた。

サウス帝国の騎士5名とベンヤミンとその騎士の計8名だった。

それだけいれば問題ないだろう。

俺ももうカーラに抱かれたのは3日前だ。今なら即座に人間に戻れる。もっともフェルディナント達に告げる気はなかったが……


俺達は書類に記載されていた女の家に向かったのだ。


馬車はフェルディナントのいつもの立派な馬車にフェルディナントとベンヤミンが乗り、俺はフェルディナントに抱えられていた。他の騎士達は騎乗して付いてきた。


メリーの住まいは下町の入り組んだところにあった。

カーラに連れて行かれた孤児院の近くでもあった。

その一軒家がメリーの家だった。

それも結構大きな家だ。10人以上生活ができる大きさだった。

幾らメリーが稼いでいるとは言っても王宮の下働きの給金だけでは維持していくのも大変な大きさの家だった。


この家を見て、俺はメリーが獣人王国かノース帝国の工作員だろうと目星をつけたのだ。


「確かに一介の王宮使用人の住まいにしては大きすぎるな」

フェルディナントも住まいの大きさを見て驚いていた。

「中に何人いるかもしれないから、この人数だけでは少なかったかもしれない」

フェルディナントが危惧してくれた。


確かにそうだ。戦闘系の獣人が10人も居ればこちらは苦戦は必至だった。

あまり外でたむろしているのが見つかったら事だ。


俺はどうしたものかと考えた。

俺一人ならば潜り込むのも可能だ。

でも、中にいるのが獣人ならば俺だと気付かれる可能性が大だ。

戦闘系の獣人がいて取り囲まれたりしたら大変だった。


まあ、でも、ここは、誰かが探らなければならない。

最悪は俺が人間に戻ればなんとでもなるだろう。

俺は目でフェルディナントに合図した。


「中を探ってくれるのか? しかし、その姿で見つかると事ではないか?」

フェルディナントは心配してくれたのだ。


「わんわん!」

俺は首を振って中に潜り込もうとしたのだ。


フェルディナントが壁の上まで俺を押し上げてくれた。

俺は壁を乗り越えて家の中に侵入したのだ。


中は庭まではほとんど無くて、すぐに建物になっていた。

そして、窓が開いていた。

俺はそおっと中を覗き見たのだ。

見た限り誰もいなかった。

俺は周りを警戒しつつ、窓に飛び乗ったのだった。

そのまま部屋の中に入る。

耳を澄ませても音はしなかった。

少なくても周りに人はいないようだ。


そのまま俺は奥に進んだ。

その奥の部屋にも誰もいなかった。

そして、そこに階段があって二階に続いていた。

二階から人の話す声がした。

俺はゆっくりと階段を上ったのだ。


「ダーシュが3日間も帰ってこないということはやられたに違いない」

「でも、ダーシュは偵察に行っただけなのよ」

「だから捕まったのだろう」

男と女の会話だった。

二人の会話から判る事はおそらくこの二人は俺を襲撃した熊の仲間だろう。

熊の名前がダーシュに違いない。

そして、そのダーシュが戻って来ないから警戒しているのだ。


俺がもう少し近付いてはっきりと聞こうとした時だ。


「捕まえた」

俺は後ろから男のごつい手に捕まえられてしまったのだ。










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