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第94話 ころちゃん視点 敵の隠れ家を制圧しました

俺は完全に油断していた。


「これは子犬のマクシム様。まさかそちらからここに来て頂けるとは思っていませんでした。飛んで火に入る夏の虫とはあなた様のことでございますな」

男は笑ってくれた。

こいつは兄の傍にいた男だ。確か名前はバルトだ。

まさか、後ろから誰かが近付いて来るとは全く想定していなかったのだ。

と言うか誰かが近寄ってきたら絶対に気配を察知できると油断していた。

でも全く気配はしなかった。

この男はカメレオン男のバルトか?

カメレオン男は獣人の中でも特殊で、気配を消して背景に溶け込めるのだ。

俺はまさか、こいつがいるとは思わなかった。

俺の完全な油断だった。


「わんわん!」

俺は必死に男の手から逃れようとジタバタしたが、全く逃げられなかった。

そのまま檻の中に入れられたのだ。


俺が暴れる音を聞いて、

「バルト、一体どうしたんだ?」

階上からどしどしと男達が降りてきた。


「こいつを捕まえたんだ」

「こいつって、白い子犬?」

「マクシム王子か?」

「そうだ。マクシム王子を捕まえたぞ」

バルトが俺の入った檻を差し出した。


「おおおお、これは本当に白い子犬だ。マクシム王子で間違いないな」

「でかしたわ。バルト!」

女が声をかけてきた。こいつがおそらくメリーだ。

ここのリーダー格みたいだった。


「まさかこんなに早くマクシムを捕まえられるとはな」

檻の中に入れられた俺に向かって男が笑ってくれた。

「バーレント様が拾った女の言う通りしたら、マクシム王子自ら忍び込んでくれるとは。王宮に行く手間暇が省けたってものだぜ」

男達はどっと笑ってくれた。


「王子が捕まえられたのなら、もう、王宮に行く必要は無いんじゃないのか?」

バルトがメリーに聞いていた。


「それは駄目よ。殿下はカーラ王女の命も取るとあの女に約束していたもの」

メリーが反対した。

ちょっと待て!

カーラの命を狙っただと?

俺はこうしてはいられない。

すぐに王宮に帰らなければ!

俺は慌てた。

俺はカーラの命まで狙われているとは知らなかった。

でも、何故こいつらはカーラの命を狙っているんだ?

カーラは獣人族の争いには何も関係無いはずだ。


俺は男達を睨んだ。


「しかし、あの女もうまく殿下に取り入ってくれたよな! お陰で俺達は命を張って王宮に潜入しなければいけないし、大迷惑だぜ」

バルトが少し怒って言った。あの女って誰だ?


「まあ、そう言いなさんなって。あの女の言う通りやってマクシム王子を捕まえられたのだから。こちらとしてもお礼にカーラも殺さないといけないと思うわ」

メリーが言いだしてくれた。

カーラを恨んでいる女か?

俺は一人しか思いつかなかった。


「特殊部隊長のブラームスらがお前とカーラ王女らを暗殺するために王宮に潜んでいるはずだ。お前がここで捕まったのならば手間暇が半分ですむから楽勝じゃないか」

バルトが笑って言ってくれた。


俺はすぐにも王宮に帰らないといけないととても焦った。

でも、その女とは誰なんだ?

俺が耳をダンボのように広げて聞き取ろうとした。


「ここの宰相の娘、アレイダとか言ったな。なかなかいい体をしていたな」

そこでやっと俺は今回俺がここにいるのを獣人共に教えた犯人がアレイダなのがわかった。


「おいおい、バーレント様の女に手を出そうとするなよ」

バルトが男に注意していた。

「そうよ。殺されるわよ」

「それよりはカーラとか言う王女を好きにすればいいんじゃないか」

「楽しむだけ楽しんで後で殺せば良いんだから」

そう男が楽しそうに言ってくれた、瞬間だ。

俺はその言葉に完全に切れていた。

カーラを慰み者にするなど許さん!

俺はその瞬間、人間に戻ったのだ。


バリン! 

大きな音がして、檻が一瞬で破裂した。


「えっ?」

男が唖然とした。

まさか俺がすぐに人間に戻れるとは思ってもいなかったようだ。

獣人なら戻れて当たり前なのに、何を驚いていいるのだ?


まあ、その時には、俺は剣を握っていた。

男が剣に手をかける前に俺の手の剣が一閃した。


「ギャーーーー」

男はそう叫ぶと真っ二つに斬られていた。


「キャーーーー」

メリーが驚いて腰を抜かしていた。

残りの男達が、剣を抜こうとした。


俺はもう一人叩き斬っていた。


残った一人は虎になっていた。

そして、もう一人はライオンだった。


「ガォーーーー」

虎が俺に襲いかかってきた。


ブン!

俺は次の瞬間、虎の首を切り落としていた。


そして、残ったライオンが俺に襲いかかってきた。

俺はそれを横に飛んで避けると剣を一閃させた。

「ギャー」

ライオンも血を飛ばしてそこに倒れ込んでいた。


「キャーーーー」

血をまともに浴びて、メリーが悲鳴を上げていた。

生きているのは後はメリーだけだった。


「王宮の協力者は誰だ」

俺は剣先をメリーに向けて聞いていた。

「それは言えないわ」

その瞬間、俺は剣先をメリーにつけた。

「ヒィィィィィ」

女は悲鳴を上げていた。


「二度目はないぞ。ちゃんと答えろ」

俺はメリーの胸ぐらを掴むと再度聞いた。


「侍女のデボラよ」

女はなんとか答えてくれた。

俺は女を気絶させるとフェルディナントを呼んだのだ。


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