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第95話 ころちゃんが私の部屋から出てフェルディナントの部屋で生活するようになったので、私は思わず泣いてしまいました

翌朝起きてころちゃんがいないのを見て私は青くなった。


「サーヤ、どうしましょう? また、ころちゃんがいなくなったわ」

部屋に入ってきたサーヤに私が嘆くと、

「大丈夫ですよ。姫様。ころちゃんはフェルディナント様の部屋にいるそうです」

サーヤが教えてくれた。


「えっ、それは本当なの?」

「はい、フェルディナント様の騎士の方が昨夜知らせに騎士のところにきてくれたそうです」

「良かった。でも、ころちゃんとフェルディナント様ってあまり仲が良くなかったんじゃない? 一体どうしてそうなったの?」

私はころちゃんがフェルディナントに虐められていないかとても心配になった。


「さあ、詳しいことは聞いておりません。後でフェルディナント様がいらっしゃった時に、聞いてみられてはどうですか」

「そうね。そうするわ」

私は心配だったが、取りあえず、朝のもろもろの準備に入ったのだ。


フェルディナントは昼過ぎにやってきた。

「フェルディナント様、ころちゃんを預かって頂いているそうですが」

私が話を振ると、

「ほう、カーラ様は私の宿題を終えていないにもかかわらず、犬の心配をされるのですか?」

フェルディナントが嫌みを言ってくれた。


昔はもっと優しかったと思うのに、宰相代理になった途端に嫌みがきつくなった? 前の宰相もそうだったが、宰相という者は皆、嫌みの塊なんだろうか?


「申し訳ありません」

私は取りあえず、謝っておいた。宿題が出来ていないのは事実だ。

フェルディナントの宿題が多すぎるとは思ったけれど、ここで反論するのはころちゃんのためにも得策ではないだろう。


「私の出した宿題は10歳の子ならば一晩もあれば十分に出来ている量なのですよ。それがまだ出来ていないとは、先が思いやられますな」

フェルディナントはそう言うと笑ってくれた。

さすがの私もむっとしたが、ここは我慢だ。

私は取りあえず、宿題で判らなかった所をフェルディナントに聞いてみた。フェルディナントは嫌みを言いつつもきちんと教えてくれた。そこは前宰相ほどは酷くなかった。


そして、なんとか全てを理解した後にころちゃんの話題を再度出したのだ。


「なんでも、カーラ様の犬はカーラ様の傍にはいたくないと申しまして、私としても追い出したいと思ったのですが、さすがに出来かねて、仕方なしに置いているという感じなのです」

フェルディナントがとんでもないことを言ってくれたが、私の傍にいたくないってどういう事なの?

私には理解できなかった。


「えっ、ころちゃんがそう言ったのですか?」

私はむっとしてフェルディナントを睨み付けた。


「カーラ様。まさか犬がそんなことをいう訳は無いでしょう。その仕草でわかるのです」

フェルディナントが何か言ってくれたが、それはおかしい。そもそもフェルディナントところちゃんは仲が悪かったはずだ。ころちゃんが好き好んでフェルディナントの所に行くとは思えなかった。

絶対に何かおかしい!


私が疑い深そうにフェルディナントを見ると、

「私も自分のベッドの傍にその犬の寝床を侍女に言って作らせないといけないし、犬の面倒など見たこともないしで本当に大変だったのですよ。出来ることならカーラ様に引き取って欲しいところです」

「ならば私がお部屋にお邪魔いたします」

私がフェルディナントの言葉尻を捉えて言うと、


「私としてはカーラ様にきて頂いて何も問題はありませんが……」

「姫様、姫様が殿方の部屋に行くなどとんでもございません」

フェルディナントの言葉を遮ってサーヤが私に対して駄目だと首を振ったのだ。


「ならばカーラ様の代わりにサーヤ殿に来て頂いて、ころちゃんに聞いて頂ければいいではないですか」

フェルディナントが提案してきた。

「しかし、フェルディナント様。私も犬語は話せませんが」

サーヤが驚いて首を振ると、

「その犬の仕草を見て頂ければ良いではないですか。何しろ部屋では放し飼いにしているのです。帰りたければ、サーヤ殿について行くのではありませんか?」

フェルディナントの言うことはもっともだった。

「サーヤ、申し訳ないけれどフェルディナント様の部屋に行ってころちゃんに聞いてきてくれる?」

私はサーヤに頼んだのだ。

「聞いて来いって言われても、どうなっても知りませんよ」

サーヤは渋々フェルディナント様の部屋にころちゃんの様子を見に行ってもらったのだ。



しかし、帰ってきたサーヤは首を振ってくれた。

「ころちゃんに色々話しかけてみたのですが」

サーヤを見てころちゃんは尻尾を振って歓迎してくれたそうだ。

でも、サーヤが

「ころちゃん。カーラ様のところに帰りましょう」

と誘うと、とても悲しそうな顔をして

「クウーーーン」

 と鳴いてくれたそうだ。


「それはフェルディナント様に何か弱みを握られて帰れないとか?」

私がサーヤに聞いてみたが、

「そういう訳ではなさそうでしたよ。ただ、私を見る目がとても悲しそうでした。ころちゃんとしては帰りたいけれど、帰れない理由があるみたいでしたよ」

サーヤはそう言ってくれたが、私には信じられなかった。


私は毎日ころちゃんをこの胸に抱いて寝ていたのだ。

寝相が悪いとかそういう意味なんだろうか?

それで一緒にいたくないとか……それならばベッドで寝なければ良いだけの話ではないか。

私には意味がわからなかった。


私はころちゃんに嫌われてしまったんだろうか?

その日は悲しくなって思わず泣いてしまったのだ。


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