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第96話 ころちゃんが出ていった理由を教えてくれるとの事で庭師に会ったらいきなり獣に変身してくれました

サーヤに連れて帰ってきて欲しいとお願いしたのに、ころちゃんは帰ってこなかった。

私には信じられなかった。

今までころちゃんはフェルディナントととても仲が悪かったのに、何故かフェルディナントの所で生活するというのだ。私と一緒にいるのがそんなに嫌だったんだろうか?

私はそれを聞いてとても悲しくなった。

その夜は夜通し泣いてしまったのだ。



翌朝、目を真っ赤に腫らした私を見て、サーヤは瞠目した。

「姫様。もう一度ころちゃんのところに行って、帰ってくれるように頼んでみますね」

私の腫れた瞳を見てサーヤはそう申し出てくれた。

ころちゃんが帰ってきてくれるのは嬉しいけれど、本当に帰ってきてくれるのだろうか?

私はとても不安だった。


そして、午前中にフェルディナントがまた来てくれた。


「カーラ様、全然宿題が進んでいないではないですか?」

フェルディナントが眉を上げて私に文句を言ってきた。

そうだった。

私はころちゃんの事に気を取られて、フェルディナントの宿題なんて全く手に付かなかったのだ。


「すみません。ころちゃんのことが気になって全然進みませんでした」

私は素直に謝ったのだ。


「ああ! カーラ様! 私は睡眠時間を削って、カーラ様の宿題とその犬の世話をしているのですよ。それを理解賜っているのですか? それなのに、出来ていないとはどういうことなんですか?」

私はそれから延々フェルディナントに怒られたのだった。

私はころちゃんがいなくなるわ、フェルディナントに怒られるわで泣きたい気分だった。


やっと30分でフェルディナントの説教が終わって、それから私は懸命に宿題を始めた。判らないところはフェルディナントに聞いて……

フェルディナントは今までの説教モードとは別人のように親切丁寧に答えてくれたのだ。

なんかギャップがありすぎた。


そして、やっとお昼休みになった。

私はフェルディナントに一緒の食事を取ろうと誘ったのだ。

フェルディナントは喜んで誘いに乗ってくれた。


私は食事をしながら、フェルディナントにころちゃんの様子を聞いた。

「いやあ、子犬は元気に走り回っていますよ。カーラ様の所ではあまり走らせなかったのですか? その辺りが不満だったのかも知れませんね」

フェルディナントは教えてくれた。


確かに、ころちゃんが一時期いなくなったから、締め付けは厳しくしたとは思う。一時期は完全に部屋の中に閉じ込めた。でも、最近は随分締め付けも緩めたはずだ。ころちゃんには自由にさせていたはずなのに……

なのに、それで私の所からいなくなるなんて、私には信じられなかった。


「後でサーヤをもう一度そちらに行かせてもいいですか?」

私はフェルディナントに頼んでみた。


「別に来て頂いても構いませんが、子犬の考えは変わらないと思いますよ」

フェルディナントは自信満々に言ってくれるけれど、男のフェルディナントよりも女の私の方が魅力がないと言うことだろうか?

私には到底信じられなかったんだけど……


でも、その後フェルディナントの部屋に行ったサーヤはころちゃんを連れて帰ってこなかった。


やはり無理だったみたいだ。

私はがっかりした。


サーヤに聞いたところ、ころちゃんは元気だったそうだ。

私がこんなに悲しがっているのに……元気だなんてどういう事?

私はそれが少し許せなかった。


サーヤ言うにはころちゃんは、今はどうしてもやらないといけないことがあるので、それが終われば帰って来るとの事だった。


なんか、サーヤが無理矢理作った理由のようにも聞こえた。


私はころちゃんに完全に見捨てられたんだろうか?



午後からはフェルディナントの出した次の宿題をしながら私は、悶々としていた。

今まで一緒にいたころちゃんが、私の所から出て、フェルディナントの所に居る理由ってなんなんだろう。

私には全く判らなかった。


「何故なんでしょうね。ころちゃんがフェルディナント様の所に居るのは? 今までお二人は仲が良いとは言えませんでしたのに」

私に新しくつけられた王宮の侍女だったデボラが独り言のように呟いた。

「そうよね。変よね」

私はデボラの言葉に頷いた。

「ころちゃんはフェルディナント様に何か弱みを握られているのにかもしれませんね」

デボラが呟いてくれた。

「弱みってなんなの?」

「さあ、それはわかりません。でも、今まであんなに仲が悪かったのが、急にその傍にいたいって言われても中々信じられませんわ」

デボラの言うことは尤もだった。

「私の方でも何かわかるかもしれないので、色々と侍女仲間達に聞いて探ってみますね」

「よろしく頼むわ」

私はデボラにお願いしたのだ。


確かにあんなに仲の悪かったフェルディナントところちゃんが急に仲良くなったというのはおかしいのだ。

ころちゃんが何か弱みを握られてフェルディナントの傍にいるということは十分に考えられた。

でも、その弱みってなんなんだろう?

私には全く判らなかったのだ。


翌日の昼前。今日はフェルディナントは来なかった。何でも急用があるとかで、王宮にもいなかった。

ただ、私はぼうっとしている暇も無いほどフェルディナントには課題を与えられていた。

その課題をわからないなりに懸命にやっていた時だ。


「カーラ様。ころちゃんがフェルディナント様に付き従っている理由がわかったかも知れません」

デボラが私に報告してくれたのだ。


「なんなの?」

私はデボラに聞いてみた。

「庭師が聞いていたようで、出来たら直接聞いて頂けた方が理解できるかと思うのですが」

デボラがそう提案してきた。

庭師はすぐ傍の部屋に待機させているらしい。


私はデボラについて行ったのだった。

私がデボラについて部屋に入るとそこには庭師らしい男達が3人ほどいた。

男達は私を見るなり跪いてくれた。


「ころちゃんがフェルディナント様と一緒にいる理由がわかったとのことだけれど、どういう理由なのかしら」

私が男達に聞いた時だ。


男達はいきなり私の目の前で獣に変身したのだった。


私は一瞬何が起こったか全く理解できなかったのだ。





































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