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第100話 ころちゃん視点 外に逃げ出して味方を探しました


俺はその男を見て慌てた。

獣人王国の特殊部隊のトップで、異母兄の手下になっているブラームスが目の前で笑っていたのだ。他に2人いる。

ブラームスは獣と化したらオオカミに、もう一人の男は確かヒョウになるはずだった。

それともう一人の女は侍女のデボラだ。


「ふんつ、王女の所にわざわざやってくるなんて、飛んで火に入る夏の虫だな」

「本当に子犬なのね、王子なのに!」

「そうだろう。獣人王国では皆の笑いものさ」

好き勝手に3人は言ってくれた。

「貴方たち、王子殿下に対して不敬よ!」

カーラが思わず俺を抱きしめてブラームスに言い放つてくれた。


「ふんっ、何言うんだ。俺達の王子殿下はバーレント様だけだ。マクシムなんて奴は王子でも何でも無い。獣化してこんな子犬になるめなんて平民でもいないぜ。なあトム」

ブラームスはそう言って笑って隣の男に同意を求めた。

「本当だ。陛下もお前が生まれた時は泣いていらっしゃっただろうよ。こんなよわっちい奴が跡継ぎだと知った時にな」

「勝手な事を言わないで。どこの親が獣化する獣が子犬だからって泣くのよ。あなたみたいな野蛮なオオカミより、余程ましよ」

きっと睨み付けてカーラが言ってくれた。


「何だと、人間。貴様、俺を馬鹿にするのか!」

「まあまあ兄貴、相手は子犬を可愛がっている女ですぜ。ペットには子犬で丁度良いんじゃ無いですか」

トムが横で取りなしていた。

「そうだな。俺も縄で縛ってそのペットを飼うか? 奴隷商人に高く売れるかもしれんしな」

ブラームスが高笑いしてくれた。

おのれ、人間のままだったら今頃斬り倒してやったのに!

俺は後悔した。


「さあ、せっかく2人揃ってくれたんだから、さっさと始末してここをとんずらしないと」

デボラが言いだした。


これは絶対にまずい。

俺は何か手が無いか考えた。

1人だったら天井裏から逃げ出せたが、カーラを1人で残す訳にはいかなかった。

後はフェルディナントだ。あいつらは何をしているのだ。本当に遅い。

俺はフェルディナントをおいてきたのを後悔した。

そうか、途中で会った騎士達を少しは連れてくれば良かった。

後悔先に立たずだ。


「貴方たち、獣人王国は我がモルガン王国に戦争を仕掛けるというの?」

「はああああ?」

カーラの言葉にブラームスは馬鹿にしたように見下した。

「それは確かにお嬢ちゃんもこのちっぽけな小国のモルガン王国の王女殿下だものな。殺したりしたら国王は怒るだろうよ。でもな、俺達の獣人王国に比べればこの国は本当にちっぽけな国なんだよ。国王がそれを知ったところで何を言えると言うんだ?」

「そうさ。それにカーラ王女と国王を殺してアレイダ様がこの国の国王になられるんだよ」

デボラが本心を言いだした。こいつはアレイダの手下なんだ。


「何ですって、獣人王国はお父様まで殺そうというの? そんなことが許されると思っているの?」

カーラがデボラに言うと

「ふんっ、お前らは宰相様を殺したんだ。当然の因果応報だろう」

デボラがそう言い切ってくれた。

「まあ、俺達はマクシムさえ死んでくれたらいうことは無いんだが、アレイダがお嬢ちゃんを許さないって言うんでな。一緒に死んでもらうしかないんだよ。悪いな」

ブラームスはそう言うと手にナイフを持ってくれた。

こいつ獣人化せずに俺をやるつもりだ。

それなら少しはやりようがあるかもしれない。

俺はブラームスに襲いかかるタイミングを計った。


「ころちゃん! 逃げて!」

でも、その前に、カーラが俺を天板目がけて投げてくれたんだけど……どういう意味だ?


ズボッ


俺は薄い天板に頭から突っ込んでいた。


「おい何をする」

ブラームスは慌てて俺を捕まえようとしたが、俺は天井に入り込んだのだ。


「おい、マクシム、王女がどうなつても良いのか」

ブラームスの声が聞こえた。俺は一瞬、戻ろうかとも思った。

でも、俺がいなければ俺を誘い出す為にカーラを殺すことは無いだろう。

俺はそう信じることにして逃げ出した。

「おい、何してる! マクシムを追いかけろ」

「ちょっと、カーラはどうするのよ」

「取りあえず、捕まえていろ」


ドシーン!

天井が大きな音がして穴が開いた。

オオカミと化したブラームスが顔を出してくれた。


俺は必死に駆けたのだ。


「ガオーーーー」

ブラームスが叫んで追いかけようとして、ズボッと天井を踏み抜いていた。


「ガオーーーー」

待てと叫んでいるつもりだろう。

誰が待つか。

俺は騎士を見つけて飛び降りたのだ。


「ギャッ」

騎士は俺に顔に乗られて叫んでいた。


そこにオオカミが落ちてきた。


「ギャーーーー」

騎士の手がオオカミの爪で切り裂かれていた。

騎士の悲鳴がする。


「出会え、魔物が出たぞ」

「ピーーーーー」

笛が鳴らされたのだ。


良し、これなら良い。

もっと笛を鳴らせ。


オオカミは俺に飛びかかってきたが、俺はそれを避けた。


「グオーーーー」

オオカミは周りが見えていなかったみたいだ。


獣になるとどうしても獣の思考になってしまうのだ。

もう一度俺に飛びかかつてくる。

俺はそれを避けた。


俺には周りから騎士達が駆けてくるのが見えた。

俺はそのまま脱兎の如くカーラの部屋に向かって駆け出しのだ。










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