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第102話 せっかく逃がしたころちゃんが帰ってきてオオカミに殺されそうになりました

私は思いっきりころちゃんを天井に投げつけた時に、自分の命はどうなつても良いと思ったのだ。


ころちゃんさえ生き残ってくれたら、それでいいと。

ころちゃんが白い騎士マクシム様だと判って私も思うところはあったけれど……白い騎士様、マクシム様は私が傷ついたころちゃんを助けたから、その後恩を返そうとしてくれたんだと思う。

私が傷を治した事なんて、ころちゃんがしてくれたことに比べたら、微々たる物だった。


この小国の王女である私が悩んでいる時に、傍にずっといてくれた。サウス帝国の第四皇子のフェルディナントが来た時も一緒にいてくれた。


というか、その後、私の命を守る為に必死に色々やってくれた。

アレイダの命令で私を攫おうと破落戸達が襲ってきた時は、白い騎士として私を助けてくれた。

宰相が反逆した時も、お父様の命を守ってくれて、私が宰相に殺されそうになった時ですら、助けようと姿を現してくれたのだ。


でも、そのマクシム様が、どうしてこんな大切な時にころちゃんに戻ったのか、私には判らなかったが、マクシム様にも人に言えない事情があるんだろう。

そんなころちゃんをこんな破落戸みたいな奴らに殺させる訳にはいかなかった。

天井は全部ぶつかったら動くと思っていたんだけど、そうでは無かったみたいで可愛そうにころちゃんはズボッと天井に嵌ってしまった。

「こ、ころちゃん」

「この女、何してくれる!」

そう叫ぶとブラームスとか言う男は瞬時に獣と化したのだ。オオカミだった。そのまま、飛び上がってころちゃんに飛びかかったのだ。

「ころちゃん!」

私の悲鳴を聞いたのか、ころちゃんが天井に入り込んだ。


ドン!

オオカミが天井に突っ込んだのだ。

顔を天井から突き出したが、そのまま落ちてきた。

ドン!

「ギャ!」

下にいた、トムとか言う男の真上に落ちてきたのだ。

「兄貴、何するんでさ」

「ガオーーーー」

オオカミはしかし、一言吠えると天井に飛んで行ったのだ。

今度は天井を突っ切っていた。

「ちょっと待ってよ、兄貴!」

そう叫ぶとトムもヒョウに獣化して、天井に飛んで行った。


「ころちゃん!」

ころちゃんは逃げられただろうか?



私が天井を見ていたら、


パシーン!

ほおを思いっきり張られたのだ。


「キャー」

私はそのまま地面に身を投げ出されていた。

体が痛い。

私はなんとか立上がろうとしたが、

「余計な事をしてくれて、何をしてくれるんだい」

デボラが私のおなかを思いっきり蹴飛ばしてくれたのだ。


「グッ」

私はおなかを押えた。


「お前、良くもマクシム王子を逃がしてくれたな」

デボラは私の前にやってきた。


そのまま胸ぐらを掴んでくれる。

「さっさと処分してやろうと思っていたのに、マクシム王子を逃がしてくれるなんてとんでもないことをしてくれて」

そう言うと私につばをかけて来たのだ。

汚らしい!

何をしてくれるのよ!


「何だい、その顔は」

パシン!

デボラは私の顔が気に入らなかったみたいで、もう一度私の頬を張ってくれた。


「せっかく楽に殺してやろうと思ったのに、仕方が無い女だね。お前は獣人共にいたぶられて、おもちゃにされて死ぬんだね」

そう言うとデボラは私を何度も張ってくれたのだ。

途中から私の唇が切れて血が流れてきた。


白濁した意識の中で私はころちゃんの事を想った。

ころちゃんは逃げてくれただろうか?

私は自分のことよりもころちゃんが獣人達からちゃんと逃げてくれることを祈ったのだ。

もう十分にころちゃんには私は助けられた。何回も死にそうなところを助けられたのだ。

今度は私がころちゃんを助ける時だった。

ころちゃんは獣人王国の王子様だ。生き残っていれば必ず、良いことはあるはずだ。国に帰れば王子様なのだ。異母兄と争っているみたいだったが、こんなところで死んではいけない。無事に逃げ延びて国に帰れば味方もいるはずだ。


私は再び手足をデボラによって縛られていた。


「わんわん!」

私が意識がもうろうとした時だ。

ころちゃんの声が聞こえてきたのだ。

「ころちゃん?」

私は夢だろうかと思った。


その時だ。ころちゃんが飛び込んできたのだ。

「えっ、なんで?」

せっかく逃がしたのに!


「来たわね」

デボラがナイフでころちゃんに斬りかかってきたけれど、ころちゃんはそれを躱して、そのままデボラに飛びかかったのだ。デボラに張り手を喰らわせてくれたのだ。

私の代わりに!

「ギャーーーー」

デボラは目を押えて、その場にうずくまっていた。

良くやってくれたわ。ころちゃん!

私は拍手喝采したかった。

更に倒れたデボラにころちゃんは噛み付いてくれていた。

「痛い!」

デボラが悲鳴を上げた。さすが私のころちゃん。今までの私の恨みを晴らしてくれた。

でも、デボラはころちゃんごとその手を地面に叩きつけようとした。

「危ない!」

でも、その瞬間ころちゃんは飛び退ってくれたのだ。

「ギャーーーー」

自分で手を地面に打ち付けてデボラは悲鳴を上げていた。

手を押えて、のたうち回る。

ざまあみろだ!


更に再度ころちゃんはデボラの手に噛み付いてくれた。


「ギャーーーー」

デボラは悲鳴を上げていた。

私が拍手喝采しようとした時だ。


後ろから駆けて来た、オオカミが思いっきりころちゃんを跳ね飛ばしたのだ。


ダンッ

「キャイーーーーン」

ころちゃんの悲鳴が聞こえた。

ころちゃんは地面に叩きつけられて動かなくなった。


「ころちゃん!」

私は悲鳴を上げた。

その悲鳴をにやりとオオカミが笑ってくれたのだ。

絶体絶命のピンチだった。

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