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第103話 ころちゃん視点 オオカミの視界を命がけで邪魔して、フェルディナントが剣で斬り裂くのを助けました

壁に叩きつけられた俺は凄まじい衝撃を受けた。

絶対にあばら骨の二本や三本折れたと思う。

俺はすぐには立ち上がれなかった。


くっそう!

俺は力を入れたが、無理だった。


そんな俺は視界の端にオオカミの奴が笑うのが見えたのだ。

しかし、その目はギラギラしていた。

それは獲物を狙う狩人の目だった。


くっそう、このままでは駄目だ!

負けてしまう。立て! 立つんだマクシム!

でも、立てなかった。

このままでは俺はやられる。

でも、俺ばかりかカーラもやられてしまう。

それだけは絶対に避けたかった。

俺は今一度立上がろうとした。

でも、その時にはオーカミが倒れた俺の前まで来ていた。


そして、にやりと笑ってくれたのだ。

やばい!

そう思ったが、俺は逃げられなかった。


バン!

オオカミの野郎は俺を前足で蹴飛ばしてくれたのだ。


「キャインーーーーン」

俺は悲鳴を上げて吹っ飛ばされた。


バシン!

壁に激突する。俺は息が止まった。窒息死寸前だ。

そのまままた地面に激突した。

激痛が体を走る。


このままでは本当にやばい。


くっそう、人間に戻れたら、こんなオオカミなんて一撃で斬り倒せるのに!


でも、それは願っても出来ない事だった。

カーラに抱きつかれた時に無理矢理剥がしておけば良かったのに、喜んで腕に抱きしめたからだった。

自業自得だった。

でも、俺のせいでカーラが命の危機に陥るのは違う話だった。

フェルディナントの野郎は何をしているんだ?

他の騎士達は?


でも、奴らを待っていたところでどうなるものでもない。

なんとか自分でしないと。


俺はもう一度立上がろうとした。

「グッ」

痛い!

俺は立てなかった。


「ころちゃん!」

カーラが悲鳴を上げてくれた。


「わん」

俺は力なくカーラに吠えてみた。


入り口から影が映った。やっと来たか?

でも、そちらを見たら騎士ではなかった。

最悪なことに入り口からヒョウが現れたのだ。

俺は絶対絶命のピンチを感じた。


もう終わりか?


でも、カーラがいる限りまだ戦わないと、

俺は立上がろうとした。


その時だ。ヒョウが手を上げてくれたのだ。

叩いてまた吹っ飛ばされる!

俺が覚悟した時だ。


「ギャーーーー」

血しぶきを上げてヒョウが倒れたのだ。

その後ろには待ちに待ったフェルディナントが剣を振り抜いていた。


「フェルディナント様!」

カーラが喜びの声を上げた。

「遅くなりました」

フェルディナントが謝りつつ剣を握ってくれた。フェルディナントは剣を上段に構えた。


「ガオーーーー」

ブラームスが咆哮した。


「ふんっ、獣化した獣人か、来い!」

フェルディナントが呼び込んだ。


次の瞬間、巨大オオカミとなっているブラームスがフェルディナントに飛びかかった。


ガキン!

それをフェルディナントが剣で受けるが、ブラームスは爪を剣に叩きつけていた。

凄まじい衝撃で、フェルディナントは吹っ飛ばされていた。

外の廊下にフェルディナントは飛んで行った。


ブラームスがそのままフェルディナントを追いかけようとしたが、サウス帝国の騎士達が剣を持ってフェルディナントを援護する。

ブラームスは爪で騎士達に怪我を負わせようと振り回す。

「ギャッ」

一人の騎士がブラームスの爪に腕を引っかけられて、吹っ飛ばされた。


「おのれ!」

2人がかりで騎士がブラームスにかりかかる。


ブラームスは爪で剣を受けていたが、そこにフェルディナントが斬りかかってきた。


「グォーーーー」

オオカミは咆哮すると少し飛び退って部屋の中に入ってきた。

部屋の中では、騎士が3人も入れない。

フェルディナントが真っ先に入ってきたが、ブラームスの爪でまた弾き飛ばされていた。


次の騎士は入ってくるなり、斬りかかったが、ブラームスに避けられて、却って爪の一撃を受け手腕を斬られて吹っ飛んでいた。


もう一人の騎士が躊躇する。


ブラームスも今度は外に追っていかなかった。

このままでは埒があかない。

まあ、騎士達がどんどん集まって来れば、負けることはないが、果たしてブラームスがそれまで待ってくれるかだった。ブラームスとしては俺の命さえ奪えば良いはずだ。

逃げようとすればオオカミのまま走り去れば良いのだ。こいつの跳躍力ならば俺と違っておそらく城壁を軽く越えられるだろう。

俺を殺して逃げ出せば良いのだ。

逃げるついでにカーラも殺していくかもしれない。


俺はブラームスが気付く前に動く必要性があった。

幸運なことに少し休めたので、俺はなんとか立てるまでになっていた。

後は獣人の強靱さを使えば良いのだ。

俺は立ち上ったのだ。

ブラームスは俺を見ていなかった。

そして、騎士が斬りつける。

ブラームスは爪で受けていた。

別の騎士が外から斬りつける。

ブラームスは余裕で躱していた。

そして、次はフェルディナントだ。

俺はその瞬間ブラームスに飛びかかったのだ。

渾身の力を使って飛んだのだ。

そして、ブラームスの爪を掻い潜ってブラームスの顔に飛び乗ったのだ。

「グォーーーーー」

ブラームスは咆哮すると俺を前足で吹っ飛ばした。

「キャインーーーーン」

俺は壁に激突したのだ。

もうだめだ。


でも、その俺の目に振り下ろされるフェルディナントの剣筋が見えたのだ。


「ギャーーーーー」

フェルディナントの剣によって、オオカミは真っ二つに切り裂かれていたのだ。












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