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第105話 ころちゃんは女人に触れられたら子犬に変わることが判明しました

「ころちゃん!」

私はそう叫ぶと壁に叩きつけられたころちゃんに駆け寄ったのだった。

ころちゃん改めマクシム様は傷だらけだった。

その上、びくとも動かなかったのだ。

私は思わずころちゃんを抱きしめていた。


「死なないで! ころちゃん!」

私が泣き叫んだ時だ。

私の涙がころちゃんにおちた。

その時だ。


「クウーーーン」

ころちゃんは呻き声を上げてくれたのだ。


「ころちゃん!」

私はころちゃんを思いっきり抱きしめていた。

「カーラ様! ご無事でしたか?」

そこにフェルディナントが私に駆け寄ってきた。

「私は大丈夫です。それよりもマクシム様の治療を」

私がそう指示すると、ただちに王宮医がやってきてころちゃんの治療をしてくれた。


そして、その時には驚いたお父様や騎士団長がやってきて大騒ぎになっていた。




そして、今、私はころちゃんの病室にお父様と騎士団長、それにフェルディナントと一緒ににいたのだ。


「お父様もフェルディナント様もころちゃんがマクシム様だと知っていたのね」

私はきっとして周りの男どもを見た。

お父様もフェルディナントも私が睨むとついっと視線を躱してくれたんだけど。


「しかし、マクシム殿は儂が襲われた時には人間に戻って戦ってくれたのに、今回は何故戻って戦ってくれなかったのじゃ?」

お父様がころちゃんに聞いていた。

「クーーーーン」

ころちゃんは視線を逸らしてくれた。

そう、そこは私も気になっていたのだ。

いつもならマクシム様に変身して私達を守ってくれるのに今回は何故人間に戻ってくれなかったんだろう?


私達の視線を浴びてころちゃんは顔を逸らしてくれるんだけど……こういう時に話せないのは不便だ。


「マクシム殿、ここにいるのは皆そなたの秘密を知る者達だ。理由を明かしてはくれんか」

「そうだ。また、獣人達が襲ってこないとも限らない。その原因を教えておいてもらわないと対処のにしようもないと思うのだが……」

お父様とフェルディナントがころちゃんに話すがころちゃんは二人から顔を逸らしたのだ。

「ねえ、ころちゃん、どうしてなの?」

私がころちゃんを見つめると、

「わんわん!」

ころちゃんは悲しそうに吠えてくれたのだ。


「ころちゃん!」

私はころちゃんを抱きしめたのだ。

ころちゃんが真っ赤になっていた。


「あのう、陛下とカーラ様。一つ考えたことがあるのですが」

そこでフェルディナントが言い出した。

「なんなのじゃ?」

「ころちゃん、いえ、マクシム様はカーラ様に抱きつかれると子犬に戻るのではないですか」

「えっ?」

私はフェルディナントの言葉に驚いた。

「そんなことがあるのか?」

お父様も驚いていた。


確かに初めて街で破落戸に攫われそうになり助けてもらった時は、驚いたのと安心したのでマクシム様に抱きついていた。その後すぐにマクシム様はいなくなったと思ったらころちゃんに代わっていた。


王宮の宰相の反乱の時も思い出したらそうだった。私が助けられた安心感と再びマクシム様に会えたので、思いっきりマクシム様に抱きついていた。その後慌てて用があるとマクシム様が離れてころちゃんに変わっていたのだ。


そして、今日サルに襲われて貞操の危機に陥った時に、マクシム様が助けに来てくれて、私が喜んでマクシム様に抱きついたら、にころちゃんに変わっていた。

考えたら全て私が抱きついていたのだ。

私が原因でマクシム様がころちゃんに変わっていたとしたらショックだった。


「そうなの、ころちゃん?」

私が悲しそうにころちゃんに聞くところちゃんは視線を泳がせた後、私の瞳を見ると大きく頷いたのだ。

「そんな! じゃあ、私が抱きついたからマクシム様はころちゃんに変わってしまうって事なの!」

まさか、私が原因でマクシム様がころちゃんに変わったとは想像だにしていなかった。


私もいつもいつも抱きついている訳ではないが、今後はマクシム様にも抱きつかないようにした方が良いだろう。ひょっとしてころちゃんに抱きついたりしたらマクシム様に戻れなくなるのだろうか?

私はころちゃんを抱くのが好きだったのに!


「なるほど、マクシム様は女の人に触れられるとマクシム殿に戻れなくなると言われるのですな」

何故かフェルディナントはとても嬉しそうにころちゃんに確認していた。

「クウーーーー」

ころちゃんは悲しそうに鳴いていた。


「それは大変じゃな。とするとマクシム殿の世話は男がした方が良かろうて」

お父様の言葉にころちゃんはとても悲しそうな顔をしたが、否定はしなかった。


ころちゃんの面倒は騎士と侍従達がやることに決まった。

部屋も新たに客室が用意されて、その部屋は女人禁制になってしまったのだ。


私はころちゃんを抱きしめていたかったが、私が抱いていてはころちゃんがマクシム様に戻らないのならば仕方がなかった。


「クウーーーン」

ころちゃんは悲しそうに私を見たが、こればかりはどうしようもなかった。


そして、私達がころちゃんの世話をしなくなって3日後にころちゃんはマクシム様に戻ったのだった。







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