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第106話ころちゃん視点 最悪なことに自分の世話は男がすることに決まりました

俺はブラームスの視界を覆ったのだ。

次の瞬間に前足で吹っ飛ばされていた。

「キャインーーーーン」

壁に激突して力尽きた。

しかし、その時にフェルディナントがなんとかブラームスを退治してくれたのだ。


「ころちゃん!」

俺はカーラの声が聞こえた。

カーラは思いきり俺を抱きしめてくれたのだ。

俺はカーラの暖かさを感じてほっとしたのだ。カーラが助かって良かったと……


「死なないで! ころちゃん!」

カーラが泣き叫んでくれた。俺は獣人だ。こんな傷ではびくともしないが、折角なのでカーラの胸の中でその暖かさを堪能していた。

そうしたら俺の頬にカーラの涙が落ちてきたのだ。

さすがにこのままな寝ているのは悪いと俺は良心の呵責を感じた。

仕方がない。

「クウーーーン」

俺はちょっとだけ目を開けて鳴いてみたのだ。

「ころちゃん!」

カーラが更に思いっきり抱きしめてくれた。

俺は本当に幸せだった。

「カーラ様! ご無事でしたか?」

その時に行動が遅くて危うく死にかけた原因のフェルディナントがやってきたのだ。

遅いぞと俺は叫びたかった。

「私は大丈夫です。それよりもマクシム様の治療を」

優しいカーラはそう言ってくれたのだ。獣人の俺は自己再生能力も高くて医者も必要ないと思ったのだが、折角カーラがそう言ってくれたのだ。俺はカーラの言葉に従うことにしたのだ。

王宮医がやってきて、俺を診てくれた。

そして、傷薬等を処方して看護婦が塗ってくれたのだ。

俺は至れり尽くせりだった。

その日の夜はなんとカーラが俺の面倒をみてくれた。

国王やフェルディナントは俺の面倒なんて侍女に診させれば良いとかふざけた事を言ってくれたが、カーラがちゃんと診てくれたのだ。俺はとても幸せだった。


その翌日だ。

俺はある程度動けるようになったので、カーラと国王、騎士団長とフェルディナントが揃ってこれからの対策会議を立てることにしたのだ。


「しかし、マクシム殿は儂が襲われた時には人間に戻って戦ってくれたのに、今回は何故戻って戦ってくれなかったのじゃ?」

国王が余計な事を言ってくれた。

「クーーーーン」

俺は視線を逸らして適当に誤魔化そうとした。

でも、カーラも何故かとても不思議そうに俺を見てくれた。

カーラの視線を浴びて俺はやむを得ず顔を逸らしてたのだ。

俺の秘密が判ってしまえば、俺のこの快適な生活が脅かされる可能性が大きかった。


「マクシム殿、ここにいるのは皆そなたの秘密を知る者達だ。理由を明かしてはくれんか」

「そうだ。また、獣人達が襲ってこないとも限らない。その原因を教えておいてもらわないと対処のにしようもないと思うのだが……」

国王とフェルディナントが聞いてきたが、ここは無視するに越したことはなかつた。


「ねえ、ころちゃん、どうしてなの?」

でも、カーラは俺の瞳を覗き込んできたのだ。

「わんわん!」

俺はそう吠えるしか無かった。

「ころちゃん!」

カーラはそんな俺を抱きしめてくれた。

俺はうれしかった。


「あのう、陛下とカーラ様。一つ考えたことがあるのですが」

そこで不敵な笑みを浮かべたフェルディナントが話し出した。

「なんなのじゃ?」

「ころちゃん、いえ、マクシム様はカーラ様に抱きつかれると子犬に戻るのではないですか」

俺は固まってしまった。こいついつの間にそんなことを知ってくれたのだ。

と言うか、その事を皆にばらすなよ!

「そんなことがあるのか?」

国王も驚いていた。

確かにカーラが初めて街で破落戸に攫われそうになり助けてもらった時にカーラに抱きつかれて俺はすぐに獣化する前に逃げ出した。

王宮の宰相の反乱の時もカーラに思いっきり抱きつかれてその後慌てて用があると逃げ出したのだ。でも、そこでフェルディナントに俺が獣化したと見つかってしまったのだ。

でも、原因まではわからなかったはずだ。

何故、判ってしまったんだろう?


「そうなの、ころちゃん?」

カーラにそう聞かれて俺は視線を泳がせた後、嘘はつけないとカーラの瞳を見ると大きく頷いたのだ。

「そんな! じゃあ、私が抱きついたからマクシム様はころちゃんに変わってしまうって事なの!」

「なるほど、マクシム様は女の人に触れられるとマクシム殿に戻れなくなると言われるのですな」

何故かフェルディナントはとても嬉しそうに俺に確認してくれた。

こいつにだけは理由が知られたくなかつた。

「クウーーーー」

でも、俺は泣くしか出来なかつた。

「それは大変じゃな。とするとマクシム殿の世話は男がした方が良かろうて」

国王が最低のことを言いだしてくれた。

でも、それは事実だ。いつまた異母兄が王宮に攻め込んでくるとも限らなかった。

俺はその時は人間でいないと絶対に異母兄に勝てないだろう。

悲しいことに俺の面倒は騎士と侍従達がやることに決まったのだ。

そして、新たな部屋も与えられたが、その部屋は女人禁制になってしまったのだ。


俺はカーラの胸の中で眠りたかったのに、完全に禁止されてしまった。

本当にもう最悪だったのだ。




「クウーーーン」

俺は悲しそうにカーラ私を見たが、こればかりはどうしようもなかった。


そして、俺がカーラから離れて3日後に俺は人間に戻ったのだった。













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