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第109話 獣人王国から返事が返ってきました

ころちゃん、すなわちマクシム様が王宮のフェルディナントの近くの部屋を手配しして騎士や侍従に世話されるようになって3日が経った。


「姫様。大変でございます」

侍女のサーヤが私のところに慌てて飛び込んできたのだ。

「どうしたの?」

サーヤが慌てふためく事なんてめったにないので、私は驚いてサーヤを見た。


「ころちゃんが、いえ、マクシム様が人間に戻られました」

「何ですって!」

私は慌ててサーヤを連れてマクシム様のお部屋に向かったのだ。


「マクシム様!」

私がマクシム様のお部屋に慌てて入るとそこには、既にお父様と騎士団長とフェルディナントが揃っていた。

そして、私の目当ての白い騎士様、すなわち、マクシム様もその場にいらつしゃった。マクシム様はいつ見てもとても凜々しかった。


「何じゃ、カーラ! ノックもせずに男の部屋を訪ねるなど、サーヤまでついていて何をしている?」

お父様に注意された。

「だってマクシム様が人間に戻られたとお聞きして、いても立ってもいられなかったのです」

私は言い訳したが、

「申し訳ありません。つい、姫様の事を思って羽目を外してしまいました。姫様はこの3日間それはそれは心配しておられましたから」

サーヤは謝っていたけれど、私はそれよりもマクシム様にお礼が言いたかったのだ。


マクシム様の所にすぐに駆け寄ろうとしたら、いきなりフェルディナントが前に出てきたのだ。

「カーラ様。マクシム殿に近寄ってはいけません」

私の前に手を広げて通れないようにしてくれたんだけど……

「どういう事なのですか? フェルディナント様」

私は私の邪魔をしてくれたフェルディナントをむっとして睨み付けたのだ。


「カーラ様がマクシム殿に触れるとまた獣化する可能性がありますから」

冷静にフェルディナントは説明してくれたが、

「抱きつかなければ問題はないのではないのですか?」

私はそれまで言われていたことを言い張ると、

「マクシム殿は女性に対してどこまで触れられたら大丈夫かは定かでないとおっしゃるのです」

フェルディナントが説明してくれた。


「そんな!」

せっかくマクシム様が人間の姿になられたのに、近くに寄るくらい良いじゃない!

私はむっとしてフェルディナントを睨み付けたが、

「カーラ、無茶を言ってフェルディナントを困らせるのは良くないぞ」

お父様が聞き分けのない子供に言い聞かせるように言ってくれるんだけど……


「そうなのですか?」

私はマクシム様を見て尋ねていた。

「カーラ様。申し訳ありません。フェルディナント殿のおっしゃるようにどこまで大丈夫かは定かでないのです」

マクシムにすまなそうに言われたら、それ以上私も無理強いは出来なかった。


「いえ、マクシム様を困らせるつもりはないのです」

私は言い訳した。

そして、フェルディナントに近寄るのを邪魔されてむっとしたが、その傍の席に着いたのだ。

サーヤが後ろに控える。

「最初にお礼を言いたいのですが宜しいですか?」

私がお父様とマクシム様に尋ねた。


「そうじゃな。カーラはまだマクシム殿に礼を申しておらなんだな」

「いえ、改まったお礼など不要ですが」

マクシム様は戸惑っておられたが、私は改まってお礼がしたかったのだ。


「マクシム様。そういう訳には参りません。今まで、色々と無理して頂いて、私を助けて頂いて本当にありがとうございました」

私は頭を下げたのだ。


「いえ、カーラ様がご無事であれば私の努力も報われたというものです。本当にご無事で良かった」

マクシム様が私に言ってくれたが、

「でも、私のためにころちゃんとしていろんな所に潜り込んで頂けたんでしょう。いろんなご苦労がおありになったと思います。私その事をよく判っていなくて、ころちゃんにも色々酷い事を言ったと思います。本当に申し訳ありませんでした」

私が謝ると、

「いえ、私こそ、異母兄に殺されそうになって傷ついたところをカーラ様に助けて頂いて、本当にありがとうございました。獣化している時は話す事が出来なかったので、自分が獣人王国の王子だとお話しできずに申し訳ありません」

そうマクシム様が言ってくれるんだけど……

「私は傷ついてた子犬を看病しただけです。でも、マクシム様はそれ以上に白い騎士となって私達を助けていただきました。マクシム様がいなかったら今頃。私達は宰相にこの国を乗っ取られていました」

「それは、その通りだ。マクシム殿の働きがなければ今の儂もない。宰相のに反乱の時に殺されていただろうからな。本当に感謝する」

私の言葉にお父様も頷いてくれた。

「我々が力になれることであればマクシム殿のお力になりたいと思うが……」

お父様はそう言ってくれた。

「その時はよろしくお願いします」

マクシムが頭を下げてくれた。


「それでマクシム殿が子犬で会った時に一応、獣人王国の国王陛下に手紙を送ったのじゃ」

お父様が言い出してくれた。

お父様はマクシム様がここにいるという親書を獣人王国の国王陛下に出してくれたそうだ。

そして、今日その返事が返ってきたそうだ。


「さようでございますか。それはありがとうございます」

マクシム様はお父様に頭を下げてくれた。

「父はなんと言ってきましたか」

そう聞くマクシム様にお父様は手紙を見せた。












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