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第110話 ころちゃん視点 父からは異母兄との争いは自分で対処しろと言われました

フェルディナントの策略によって俺はカーラから引き離されてしまったのだ。

本当に最悪だった。

フェルディナントのボケナスが余計な事を言ってくれたから俺を世話する者は全て男になってしまった。

誰が男の世話になんかなりたい者か!

俺は大声で叫びたかった。

「わんわん!」

しかし、そう吠えただけだったが……


これもそけれも全てフェルディナントが悪かった。


確かに俺は女性に触れられたらまたすぐに子犬に戻ってしまうかもしれない。

そうフェルディナントに言われるとその可能性は大いにあったが、カーラに気のあるフェルディナントに言われると悪意100%としか思えなかった。

そう言われて俺はフェルディナントを睨み付けたのだ。


しかし、フェルディナントは俺の怒りの視線などどこ吹く風で全く気にしていなかった。

本当にむかつく男なのだ。


俺をカーラから引き離して、自分がカーラの配偶者になる気満々なのだ。


今も国王の前で、

「マクシム様は女性に触れられただけで子犬になってしまわれますから。カーラ様とお子を作るのも難しいのではありますまいか」

と平然と言い切ってくれるのだ。

俺は余計な事を言うなと言いたかった。


俺もこの体質をなんとかして直したかった。

カーラに触れられただけで、子犬になってしまったら、カーラを力一杯抱きしめる訳にもいかないではないか!


それを治すために本来ならば少しずつ、カーラに触れてもらってどこまでなら大丈夫か確認していけば良いと俺は思っていたのに!

フェルディナントは俺を完全にカーラから隔離してくれたのだ。

本当に許せなかった。


まあ、確かに異母兄のバーレントがいつ俺を襲いかかるかは判らなかった。

そんな時に子犬になる訳にはいかない!

それはその通りだ。


獣化したバーレントには俺も本気を出さないと勝てないだろう。

俺が剣士として本気で対峙して勝てるかどうかは五分五分だと思われた。

そんな俺が子犬になっていたら、それこそしゃれにもならないだろう。

それはわかる。

でも、ここまでカーラと隔離する必要はないのではないか?

俺はとても不満だった。

今日も、俺の前でフェルディナントが国王に如何に自分がカーラの配偶者として優れているか話してくれたのだが、俺はカーラをフェルディナントに渡す気はなかった。


「わんわんわんわん!」

さすが俺も切れかけた時だ。

俺は金色に光ると人間のマクシムに戻っていた。

「おお、これはマクシム殿」

「やっと人間の姿に戻られたか」

国王と騎士団長は俺を歓迎してくれた。

しかし、フェルディナントの野郎はなんと舌打ちしてくれたのだ。

さすがに俺も許せなかった。

「フェルディナント殿! さすがにそれは言い過ぎだろう」

むっとして俺が言うと

「事実ではありませんか」

いけしゃあしゃあとフェルディナントは言い切ってくれたのだ。

「事実かどうかはやってみないと判らないだろうが」

「しかし、今までカーラ様に抱きつかれた後は必ず子犬に獣化されていると思うが……」

「そ、それはだな……」

俺は答えに窮したのだ。


「まあまあ、マクシム殿、少し落ち着かれて」

国王がそう言った時だ。


「マクシム様!」

カーラが俺の名前を叫びながら飛び込んできてくれたのだ。

「何じゃ、カーラ! ノックもせずに男の部屋を訪ねるなど、サーヤまでついていて何をしている?」

「だってマクシム様が人間に戻られたとお聞きして、いても立ってもいられなかったのです」

俺はカーラの言葉を聞いていらだちが収まった。カーラがそこまで俺のことを思ってくれているなんて思いもしなかったのだ。


カーラが俺の元に近寄ろうとしてくれた。

俺が期待したらいきなりフェルディナントが前に出てきたのだ。

「カーラ様。マクシム殿に近寄ってはいけません」

俺の前に立ち塞がってくれた。俺は思わずフェルディナントを切り捨てるところだった。


「どういう事なのですか? フェルディナント様」

カーラもむっとしてフェルディナントを睨み付けてくれた。


「カーラ様がマクシム殿に触れるとまた獣化する可能性がありますから」

「抱きつかなければ問題はないのではないのですか?」

「マクシム殿は女性に対してどこまで触れられたら大丈夫かは定かでないとおっしゃるのです」

フェルディナントが勝手に言ってくれた。

「そんな!」

「カーラ、無茶を言ってフェルディナントを困らせるのは良くないぞ」

国王まで言いだしてくれるんだけど……

「そうなのですか?」

カーラが俺を見てきた。

「カーラ様。申し訳ありません。フェルディナント殿のおっしゃるようにどこまで大丈夫かは定かでないのです」

いきなり子犬になる訳にもいかず、俺もカーラにはそう答えるしかなかった。


「いえ、マクシム様を困らせるつもりはないのです」

カーラの言葉に俺は胸が詰まった。このやっかいな体をこれほど嫌に思ったことはなかった。


「マクシム様。そういう訳には参りません。今まで、色々と無理して頂いて、私を助けて頂いて本当にありがとうございました」

カーラは俺に礼を言ってくれたのだ。


「いえ、カーラ様がご無事であれば私の努力も報われたというものです。本当にご無事で良かった」

俺はとても嬉しかった。

「でも、私のためにころちゃんとしていろんな所に潜り込んで頂けたんでしょう。いろんなご苦労がおありになったと思います。私その事をよく判っていなくて、ころちゃんにも色々酷い事を言ったと思います。本当に申し訳ありませんでした」

「いえ、私こそ、異母兄に殺されそうになって傷ついたところをカーラ様に助けて頂いて、本当にありがとうございました。獣化している時は話す事が出来なかったので、自分が獣人王国の王子だとお話しできずに申し訳ありません」

「私は傷ついてた子犬を看病しただけです。でも、マクシム様はそれ以上に白い騎士となって私達を助けていただきました。マクシム様がいなかったら今頃。私達は宰相にこの国を乗っ取られていました」

「それは、その通りだ。マクシム殿の働きがなければ今の儂もない。宰相のに反乱の時に殺されていただろうからな。本当に感謝する」

国王もそう言ってくれた。

「我々が力になれることであればマクシム殿のお力になりたいと思うが……」

国王の言葉に俺は娘のカーラを俺の配偶者にくれと思わず言いそうになった。

しかし、必死に自制したのだ。


「その時はよろしくお願いします」

そう国王には言ったのだ。


その後だ。国王は獣人王国の父がくれた返事を見せてくれたのだ。

それは俺が期待するものではなかつた。


そこには長々と色々書かれていたが、一言で言い表すと自分に降りかかった火の粉は自分で処理せよと書かれていたのだ。


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