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第112話 ころちゃん視点 異母兄が来るのを待ち構えました

「殿下、苦しいです」

ゲホゲホしながらドリースが叫んだが、そんなのは知ったことでは無い!

「し、死ぬーーーー」

ドリースが叫ぶが、こいつはいつも大げさなのだ。

これくらいで死ぬ訳はない。俺は更に脅すことにした。

「ギャーギャーうるさいが、剣で殺してやろうか」

「で、殿下、本当に死にまする」

「マクシム様。もう、それくらいで許してあげればいかがですか」

カーラにそう言われたら仕方がない。

俺はドリースの胸ぐらを掴んでいた手を離した。

その途端、ドシンとドリースは地面に落ちた。


「痛たたた! 殿下酷いではないですか」

ドリースが文句を言ってくるがカーラに文句を言ってきた段階で許せることではなかった。


「何が痛いだ! 貴様カーラ様に謝れ」

俺がドリースに言うと

「マクシム様。アレイダがバーレント様の方についたのなら、致し方ないことだと思いますが」

カーラはそう言ってくれるが

「いや、ドリース殿。後継者争いに関係のないカーラ様は巻き込まれたのだ。責任は獣人王国が取るのが基本であろう。サウス帝国なら必ずそうするが」

フェルディナントが口を出してきた。

確かにフェルディナントの言う通りだった。


「フェルディナント殿下。そうおっしゃいますが、カーラ様が襲われたのはこちらの反乱の首謀者の1人のアレイダの手によるものと既に判っております。それを全て獣人王国側に求められるのは違うと思うのです」

「では一部の損害賠償を支払う予定があると言うことか?」

フェルディナントが食らいついた。

「国元に持って帰って考えさせていただきます」

ドリースは首を振って答えた。まあ、ドリースでは判断は出来まい。


「それに、傷ついたマクシム殿を看病して元気な姿に戻したのはカーラ様だ。それに対するお礼もないというのは獣人王国はいささか国際社会の礼儀作法に欠けているのではないか」

フェルディナントが更に突っ込んでいた。

「遅くなって申し訳ありません。その件については陛下より、お礼の言葉と宝飾品をお預かりしております」

頭を下げてドリースは書面と宝石箱を取り出した。

こいつ言われなかったらそのまま持って帰るつもりだったのか?

私は許せなかった。


「それだけで終わらされると?」

フェルディナントはそれだけでは許さないようだった。

「まあ、フェルディナント様。それ以上はマクシム様が王太子殿下となられてからお考え頂ければいかがでしょうか」

ドリースはそう言って首を振ったのだ。

「バーレント様の陣営はいつでも攻撃できる準備をしておりましたぞ。こちらも早急に準備いたした方が宜しいのではありませんか?」

「ドリース、その方、兄上の所にも行ってきたのであろう」

俺か聞くと

「さあ、それはいかがでございましょうか?」

「誤魔化すな。それくらい俺でも判るぞ」

「判るとおっしゃられても私にはなんとも申し上げようがありませんな」

知らぬ存ぜぬでドリースはとぼけそうだ。

「まあ、良い。ドリース殿。一つだけお伺いしたい」

フェルディナントが俺を押えて横から口を出してきた。

「バーレント殿はノース帝国の力を借りるのか?」

その言葉に全員固まっていた。

ノース帝国が介入するのならばこちらも相当の覚悟がいる。

と言うか、獣人王国のバックアップを受けるかフェルディナントのサウス帝国に援護してもらわねば勝ち目は無かった。

「どうなのだ、ドリース?」

俺がフェルディナントに被せて尋ねた。


「さあ、詳しくは判りませんが、長引けば判りませぬが、今のところはその心配はないのではありますまいかとしか申せませんな」

ドリースが考えながら答えてくれた。

「それだけ知られればこちらも対処のしようがあるという物だ。いや、よく教えてくれた」

フェルディナントが言わなくても良いのにドリースに礼を言っていた。


「ふん。確かな情報かどうかも不明な情報だろう」

「そうは言ってもすぐにノースの大軍を相手にしなくて良いと判っただけでも朗報でしょう」

俺の言葉にフェルディナントは笑ってくれた。


「それはそうだが……」

「ドリース伯爵、貴重な情報提供感謝する。それとマクシム殿のことはお任せあれと獣人王国の陛下にお伝えくだされ」

国王が俺を応援してくれると明言してくれた。

「陛下。そう言って頂けたら我が陛下もさぞお喜びになりましょう」

ドリースは国王に再度跪いていた。

父は後継者争いには関与しないと言っていたはずだが……国王には別の手紙を送っていたのだろうか?

「何、私やカーラが今ここにいるのはマクシム殿の活躍のお陰だ。マクシム殿を全面的に応援するのは当然の事じゃよ」

国王がそう宣言してくれた。

「その言葉しかと陛下にはお伝えいたします」

そう言って頭を下げるとドリースは去って行った。



ドリースが去って、対バーレント、アレイダ対策が急いで進められた。

侍女と侍従等の全て使用人の見直しが行われた。それと平行して、不審な人物の入国に対しても再度注意が喚起された。しかし、相手は獣人だ。いつ獣に獣化して侵入してくるか判らない。

相手が王宮に入ってくれば俺が斬るだけだった。敵はおそらく後50名も残っていまい。

俺は王宮の騎士や兵士を少しでも戦力アップになるように鍛え直したのだ。

そうして俺はバーレントがやってくるのを待ち構えていたのだ。

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