私はコルネーリア・ポット、獣人王国の重臣ポット伯爵の一人娘だ。
今は騎士学校に通っていた。
私達獣人は女でも戦闘能力は高い。
それに私は女豹に獣化するのだ。
皆は子犬に獣化したマクシム様は獣人王にはふさわしくないと言っているが、私は子犬になったマクシム様が好きだった。騎士姿の颯爽としたマクシム様も好きだったが……
剣聖以上と言われたマクシム様はたまに私に稽古をつけていただけた。私は立ち打ち出来なかったが、少しでも強くなるために剣術の学校に通い出したのだ。
そう、子犬の可愛いマクシム様は私が守るのだ。
そう思って苦しい騎士の訓練も続けてきたのだ。
我がポット伯爵家は獣人王国建国の時からの重臣で配下の者達も多かった。
マクシム様が私を娶ればバーレントなどという側室腹の王子が王になれるわけはないのだ。
マクシム様と私は5歳差であるが、私としては丁度良い年の差だ。
私がマクシム様のおそばにおいてもらえるかどうかは判らなかったが、昔からマクシム様をお慕い続けていたのだ。
望めばいつか叶う。そうマクシム様が昔私に言って頂けたのだ。
私はその言葉を胸に必死に今まで努力してきた。
しかし、私の恋憧れるマクシム様が数ヶ月前にいきなり行方不明になられたのだ。
私はその事を知ったのは1ヶ月以上経った後だった。
「どういう事ですの? お父様」
それを騎士学校の友人から聞いた私は、お父様に剣を片手に詰め寄ったのだ。
「いや、待て、コルネーリア、落ち着くのだ」
お父様はそう言って私から逃げようとしてくれたが、お父様は獣化してもカバだ。私は女豹なのだ。逃げられる訳はなかった。
「いや、コルネーリア、悪かった。陛下からはくれぐれも内密にと頼まれてだな」
お父様は必死に私に言い訳してくれたが、私はキレていた。
「もし、マクシム様がお亡くなりになっていたら、私はお父様を許しません」
私はそう言うと剣をお父様の鼻先に突き刺したのだ。
「ヒィエエエエエ、落ち着け、落ち着くのだ、コルネーリア」
「これが落ち着いていられますか! マクシム様の行方不明には絶対に側室腹のバーレントの仕業に違いありません。私がこれからマクシム様の仇討ちをして参ります」
「何を言うのだ。コルネーリア。マクシム様でもやられたのだぞ。その方のような娘が一人で行っても勝てる訳はなかろう。のう、エルマ」
お父様は私の侍女に同意を求めてきたんだけど、
「さようでございます。お嬢様。今はバーレントなどどうでも宜しい。マクシム様の行方を調べませんと。お父様に一ヶ月以内に行方を必ず捜してもらいましょう。見つからなかった時に始めてバーレントを始末すれば良いではありませんか?」
エルマは相も変わらず過激だ。
「いや、ちょっと待て、エルマ、それは更に大変なことになっているではないか。バーレント様は一応王族ぞ。その王族を亡き者にするなど反逆ではないか」
お父様は何か言っているが、
「マクシム様こそ、正当な跡継ぎなのです。そのマクシム様を亡き者にしたのがバーレントなれば歴とした反逆罪ではありませんか!」
私はお父様に言い切ったのだ。
「お父様。我がポット家のものが世界各地に散らばっておりましょう。それを使って直ちにマクシム様の行方を調べてくださいませ」
「いや、コルネーリア、それは」
なおもグダグダ言いそうな父の鼻先にもう一度剣を突き刺したのだ。
「お父様が今まで何をしていたのですか? 良いですね。1ヶ月です。一ヶ月してマクシム様の行方が知れずば、私にも考えがあります」
「判った。コルネーリア。一ヶ月我がポット家の総力を挙げてマクシム様の行方を調べよう」
お父様が約束してくれた。
私は一ヶ月我慢して待ったのだ。
でも、一ヶ月待ってもマクシム様の行方は知れなかった。
そんな時だ。バーレントを見張っている手のものがバーレントが暗躍している証拠を掴んできた。
私は、今こそ、バーレントを亡き者にしようと思い立ったのだ。
「お父様!」
私がバーレントの所に殴り込みをかけようとお父様に直談判に向かうと、
「おお、コルネーリア。やっとマクシム様の居場所が判ったぞ」
お父様が突然今まで知れなかったマクシム様の居場所を掴んでくれたというのだ。
「本当ですか?」
私は半信半疑だった。
「モルガン王国の国王陛下から我が陛下に親書が届いてじゃな。マクシム様はそこにいらつしゃるそうだ」
「その親書が正しいという証拠もありますまい」
「ドリース殿が事実かどうか、見に行かれたのだ。直に結果は知れよう。だからお前も騎士学校に帰ってだな」
「私もドリース様に連れて行ってもらいます」
私はお父様に宣言したのだ。
「何を言っている。コルネーリア。ドリース様はもう立たれて3日になるぞ 今から追いかけても追いつけまい」
お父様はそう言ってくれたのだが、何故3日前に教えてくれなかったの?
こうなれば直接、モルガン王国に行句しかないわ。
お父様が信じられなかった私は、エルマ達を連れてその日のうちに出発したのだった。