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第116話 マクシム様とお茶会を開くために書類仕事をさせられました

私は口を膨らませて部屋のベッドの上で天井を見ていた。

かれこれ30分くらいこうしている。


「姫様。いかがされたのですか?」

サーヤが聞いてくれたが、

「ううん、何でもないわ」

私は首を振った。


「別に私に話すくらい話して頂けても良いではありませんか」

サーヤはそう言ってくれるが、果たして言っても良いのだろうか?

私は中々言えなかった。


「まあ、私も聞かなくても判りますよ。マクシム様の事でしょう?」

「何で判ったの?」

私は驚いてサーヤに聞いていた。


「あの、姫様。私は何年、姫様についていると思われるのですか? それくらいは判ります」

サーヤが呆れてくれた。

確かにサーヤとは生まれてすぐの時からずっと一緒にいる。いい加減に私のことは判るはずだ。それに、ここ5日間ずっとマクシム様の事で騒いでいたのだ。誰でも判るだろう。


「それに、マクシム様ともっと話したいのに、フェルディナント様が邪魔してよく話せないとお怒りなのでしょう」

サーヤに図星を突かれてしまった。


「フェルディナント様が私がマクシム様に触れたらまたマクシム様がころちゃんに戻るといけないからあまり近付いてはいけないと言われるのは判るけれど……別に触れなければ良いと思うのよ。お話しすることは出来ると思うわ」

私は口を少し膨らませて、サーヤに文句を言った。

「さようでございますね」

少しサーヤは考え込んでくれた。


私もマクシム様がバーレントと対抗するために、何かと忙しいのはよく判っている。

騎士達の訓練をつけてくれているのもマクシム様だ。

でも、私もマクシム様の事をとても心配したのだ。

それに、ころちゃんをずつと世話してきたのは私だ。

マクシム様に触れることは出来なくてもお話しすることは出来るのではないだろうか?

私のために少しくらい時間を取ってくれても良いのではないか?

私がそう思っても良いと思うのよ!

でも、フェルディナントが中々認めてくれないの。


「判りました。姫様。フェルディナント様とマクシム様に私からお話ししてみます」

サーヤが言ってくれた。

「でも、サーヤ、マクシム様はお忙しいのでは?」

「幾ら忙しくても姫様と一時間くらいご一緒する時間は取れるはずです」

サーヤが自信満々に答えてくれたのだ。


「さすが、サーヤ。よろしくお願いするわ。私もマクシム様のお役に立てることがあるのかもしれないし、少しいろいろお話してみたいのよ。そんなに長々と話すつもりはないから、お願いね」

私はサーヤに頼んだのだ。



サーヤが二人にお願いに行ってくれた。

サーヤを待つ間に、私はマクシム様に何を話したら良いか考えた。

それにせっかくマクシム様とお茶をするなら何かマクシム様のお好きなものをお出しした方が良いのではないだろうか?


しまった!


マクシム様が何が好きか、ついでにサーヤに聞いてもらえば良かった。


私は後悔したが、今回はヒアリングに徹しても良いのかもしれない。マクシム様が何が好きで何が嫌いか色々お伺いしてみるのだ。そして、その次に会う時にそれをお持ちすれば良いのではないだろうか?

私は王女だから料理とかはやったことがないけれど、もし、マクシム様が好きなものがあれば、私が料理をして出来るのならば自分で作ってみても良いのかもしれない。


そうか、何か刺繍をした方が良いだろうか? 

マクシム様のイニシャルをハンカチに入れるくらいなら出来るはずだ。

そういったものが殿方には喜ばれるだろう。

イニシャルだけでなくて、何かワンポインドも入れても良いのかもしれない。

ころちゃんなんかの刺繍をしても良いだろう。

私が色々考えている時だ。


「本当に、もう、信じられません」

そこに怒り狂ったサーヤが帰ってきたのだ。

机の上に書類をドンと置いてくれた。


「も、申し訳ありません」

サーヤはその音に驚いた顔をした私に慌てて謝った。

この調子では断られたみたいだった。


「どうだったの?」

私は一応結果を聞いてみた。

「どうもこうもありませんよ、姫様!」

サーヤは頭に血が登っていた。


「こちらは今はバーレント様への対策で大変なのは理解していますよ。でも、1時間くらい姫様にお時間を頂けても良いではありませんか?」

「その時間もないとマクシム様に断られたの?」

私はがっかりしてしまった。


「いいえ。マクシム様は少しくらいの時間ならば取って頂けそうでした。でも、フェルディナント様がそのような時間はないとお断りされてきたのです。姫様とマクシム様が接触することになって、戦いを前にして万が一マクシム様がころちゃんになってしまってはいけないと。

そのように姫様がお暇ならば、自分の仕事をもっとやって欲しいとこの書類の山を私に渡されたのですよ。信じられませんよね」

サーヤは怒りが収まらないらしい。

下手したら書類を破りそうな勢いだった。


「判ったわ。この書類をやれば良いのね」

私はサーヤの書類を手に取った。

どうやら会計処理の続きみたいだった。

計算は苦手だけれど、これもマクシム様の為だ。

私は書類を広げて計算を始めたのだ。


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