キースからの告白。
これで私は、何度目の告白を受けてきたのだろうか。
ずっと私は、自分はヒロインではないと思ってきた。
マジラブの世界では実際ヒロインではないし、今もフローラこそがこの世界における唯一のヒロインだと思っている。
でも、そうではないのだ。
この世界で誰がヒロインとかそんなものは関係がなく、みんな私のことをちゃんと見てくれていた。
そのおかげで私は、私自身と向き合わなければならないのだと気付くことができた。
――だからありがとう、キース。
告白するのなんて、絶対に勇気のいることだ。
それでもこうして、キースは私と向き合い思いを告げてくれた。
だからこそ私は、感謝するとともにその思いに対して真摯に向き合わなければならない。
きっとキースが相手なら、私は幸せを得られるのだろう。
身近にいる存在の中でも、キースが一番非の打ちどころがない完璧に近い存在とすら思える。
その見た目の良さはもちろん、性格や気さくさ、そして思いやり――。
何を取っても、キースが相手なら何一つ不満はないだろう。
……でも、それでも私の頭の中に浮かんでくるのは、キースではないんだ。
私の心の中には、いつだってキースではなくクロード様がいる。
それはこれまでずっと、婚約相手という身近な相手だからだと思ってきた。
でもこうして、キースから思いを告げられることで気付いてしまったのだ。
婚約相手だからではなく、私はクロード様だから惹かれてしまっているという事に――。
――やっぱり、そうなんだ。私はクロード様のことが、好きなんだ。
これまでずっと、私自身も分からなかった内なる感情。
けれど、一度認めてしまえばすっきりと腑に落ちていく。
だからこそ、もう中途半端は許されない。
胸にチクリとした痛みを覚えながら、私はキースとしっかりと向き合い返事をする――。
「……ごめんなさい」
余計な言葉は要らない。
私は、キースとお付き合いすることは出来ない。
その答えだけを、はっきりと伝えた。
もっと早くキースから告白されていたら、もしかしたら結果は違ったのかもしれない。
けれど、向き合っているのは今の私。
だから“もしも”はないし、この結論は変わらない。
……でもやっぱり、心にきゅっとした痛みを覚える。
私の返事を受けたキースの表情は、少し曇りを浮かべたあと、すぐにスッキリとしたような笑みに切り替わる。
「……そうか、ちゃんと聞いてくれてありがとな」
「いえ、そんな……」
「いいんだ、気にしないでくれ。むしろ、俺の我儘に付き合わせて悪かったな」
「そんなこと、言わないで……」
「……すまん。本当はずっと分かっていたんだ。メアリー嬢は、俺ではなく違う誰かを見ているって。だからこれは、俺の気持ちの整理のためだった……なんて言えば聞こえはいいが、期待していなかったわけでもないんだよな」
そう言って、苦笑いを浮かべるキース。
どうやらキースは、私が自覚するより先に気付いていたようだ……。
「……クロードが、好きなんだろ?」
「……はい」
「そうか」
「ごめん、なさい……」
ここで私が泣くなんて、絶対に駄目だと分かっている。
けれど込み上げてくる感情とともに、溢れてくる涙が止められない――。
なんでこんなにも泣いているのか、自分でもよく分からない。
それでも込み上げてくる感情を、弱い私は止めることはできなかった。
泣きじゃくる私を、キースは隣で見守ってくれている。
私は断った側で、悪いのは全部私なのに、それでもキースは変わらずに優しかった――。
そんな優しさが温かくて、苦しくて……私の涙は止まることはなかった――。