祭りを終えた後、コトハたちは宝玉で本当に穢れが浄化できるか確認を行っていた。
宝玉はズオウの母であるキッカに託され、彼女が宝玉の管理者となる。彼女が宝玉の管理者になったのは、長老代理の母である事も勿論だが、実は彼女もアカネと同様、穢れが見えているらしい。
祭りにより浄化の力が溜まった宝玉は、ほんのりと光を纏っていた。丁度その時、
周囲が見守る中、キッカが宝玉に祈りを捧げる。周囲の観客たちもキッカと共に祈りを捧げると、宝玉が光るのと同時に水面も光り輝いた。コトハが浄化した時と同じような現象が起きたのだ。
その瞬間、周囲の者たちの喜びようと言ったら……やはりズオウの言葉があっても、半信半疑だったのだろう。実際浄化されたところを見た村人たちは水面が光ったのを見て、「浄化されている」と実感したようだった。
それから数日後。
コトハたちは
コトハとイーサン、マリとヘイデリク、アカネとジェフの六人が転移陣の上に立つ。
「皆様、村を助けていただき、ありがとうございました。皆様のお力添えにより、村は救われました……ここに感謝の意を」
キッカの言葉に全員が頭を下げる。手前にいたズオウが顔を上げた後、イーサンは困惑した表情を隠す事なく告げた。
「ズオウ殿、本当にいいのか?」
イーサンが訊ねているのは、コトハについてではない。ヘイデリクとジェフが持っている本についてだった。この本は呪術について書かれている本である……しかも禁術についての、だ。
ズオウは禁術について書かれている本を処分する事に決めた。どう処分をするか考えていた時に、興味深く読んでいたマリを見てズオウは閃いたのだ。帝国に戻る面々へ託す事を。
「ああ、構わない。お前たちであれば、悪用する事もないだろうからな」
「あら、信用してくれているのね?」
マリが少し揶揄うように言えば、ズオウは肩を竦めた。
「元巫女姫である彼女が信頼している者たちだ。それだけで信用に値する。それに……村を救ってくれたからな」
マリたちは彼の言葉に微笑んだ。ズオウはぶっきらぼうに答えているが、これが彼にとって最上の褒め言葉だという事を理解したからだ。生温かい視線を送られている事に気づいたズオウは、照れを隠すかのようにコトハへ顔を向けた。
「今までのお役目、ご苦労様でした。こちらの事は我々に任せて下さい」
「……ありがとうございます、長老様」
「あなたの人生に……幸多からんことを願っております」
「私も、五ッ村の繁栄を祈っております」
わだかまりが無くなったであろう二人は、満足そうに微笑み合う。二人のやり取りを見ていたイーサンが、コトハに話しかけた。
「では、戻ろうか」
「はい、戻りましょう。帝国へ!」