(あれよあれよという間にユースさんと一緒にまた採掘に行くことになってるけど……なんだかまだ夢を見てるみたい)
騎士服に身を包んだユースは、カロンの隣を当然のように歩いている。そんなユースをチラリと見ると、カロンは頬が緩む。もう二度といっしょに採掘へ行くことはないのだろうと決心していたカロンは、現実に戸惑いつつも嬉しさを隠せずにいた。
採掘場に到着すると、カロンは花のように白く輝く採掘場の美しさに目を輝かせる。そんなカロンを見て、ユースは優しく微笑んだ。
「ゲラルド渓谷の雪月光石は、初めてカロンと一緒に採った鉱石花だな」
嬉しそうにそう言うユースと目が合って、カロンは思わず顔が真っ赤になる。
「そ、そうですね!懐かしい!」
(初めてユースさんと一緒に来た思い出の場所。まさか、こうしてまた一緒に行けるなんて)
じんわりとカロンの胸の中に熱いものが広がって行く。あの時は出会ったばかりでまだお互いによくわからなくて、それぞれの生い立ちを話しながら互いを知って行ったのだ。
カロンは荷物から採掘道具を取り出し、雪月光石を丁寧に採掘し始める。それを見て、ユースも採掘道具を借りながらカロンの近くで採掘を始めた。
「またこうしてユースさんと一緒に採掘することができて嬉しいです」
嬉しそうに言いながら、カロンは雪月光石を採掘していく。雪月光石は白い花のように輝き、カロンを照らしていた。そんなカロンを見て、ユースはそっと口を開いた。
「あの時、俺にもかけがえのない愛が見つかるといいとカロンに言われて、俺はその相手はカロンがいいと思った。愛を受け取るのも、与えるのも君がいいと思ったんだ」
採掘をしながら、ユースは静かに、しっかりとした声で言う。
「その気持ちは、今でも変わらない。俺は、カロンと一緒にいることでかけがえのない愛を見つけることができた」
(えっ……ユースさん、それって……)
カロンは、手を止めてユースをじっと見つめている。カロンの頬は赤く染まり、瞳は雪月光石に照らされてキラキラと輝いていた。
「カロン、これからも、俺は君のそばにいたい。俺は、君のおかげで愛を知ることができた。そして、これから君とこの愛を育んでいきたい。これからも、俺とずっと一緒にいてくれないか。君が俺に鉱石花言葉を教えてくれた。その鉱石花言葉の意味も含めて、どうか受け取ってほしい」
ユースは、採掘した雪月光石を手に持って、カロンに差し出した。
(雪月光石の鉱石花言葉は、『真実の愛』……!)
カロンはユースの手元の雪月光石を見てからユースの顔を見つめる。ユースの顔はいつにも増して真剣で、眼差しは燃えるように熱い。カロンの心臓はドクドクと早くなって行った。カロンはユースの差し出した雪月光石にそっと手を伸ばしたが、途中で止まる。そして、弱々しい声でユースに尋ねた。
「本当に、私で、いいんですか?私は、どこかの令嬢でもなくただの魔鉱石屋の店主で、特に取り柄もないですし美人でもないです。ユースさんみたいなかっこよくて、騎士としても立派な人なんかと釣り合うとは思えないんですが」
不安げな表情でカロンが言うと、ユースは真剣な眼差しでカロンを見つめた。
「俺は、君がいいんだ。君は、俺じゃ嫌か?」
「そんな!私も、ユースさんがいいです!」
(って、私ったら何を勢い余って言ってしまってるの!?)
カロンはハッとして顔を真っ赤にする。そんなカロンを見て、ユースはフッと嬉しそうに微笑んだ。その微笑みは、心底カロンを愛おしいと言わんばかりだ。
「だったら、これを受け取ってくれ」
そう言って、ユースはカロンの手のすぐ前に雪月光石を差し出す。カロンは、それを見て思わず手を握り締め、ゆっくりと開いてから恐る恐るユースの手を包みこむようにして手を添えた。
「よろしく、お願いします」
そう言って、カロンはフワッと花が綻ぶように微笑む。その微笑みを見て、ユースの心臓は大きく跳ね上がった。