採掘が終わり店に戻って来る頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。
「ユースさん、お疲れさまでした。今、お茶を淹れますね。座って待っていてください」
店の奥で荷物を下ろしカロンがそう言うと、ユースは小さく頷いて椅子に座る。
(ユースさんに告白されてOKしたけど、これからどうしたらいいんだろう?付き合う、ってことでいいんだよね?)
お湯を沸かしてお茶の準備をしながら、カロンは昼間の光景を思い出して赤面した。ユースが戻って来たことにも驚いたが、なによりもユースにあんなに熱烈に告白されるとは思わず、カロンの心臓はまたドキドキと大きく鳴っている。
「お待たせしました」
お茶をユースの前と自分の席の前に置くと、カロンはよいしょと椅子に座る。ユースはそれを見てからお茶を手に取り、静かに飲み始めた。
「やっぱりカロンの淹れるお茶は美味しいな。心がほぐれていくようだ」
そう言って、ユースは静かに微笑む。
(うっ、やっぱりユースさんの微笑みは心臓に悪い!イケメンすぎる!)
とすんっとカロンの胸に矢が刺さったかのようだ。カロンが胸を抑えてううう、と唸ると、ユースは慌てて心配そうにカロンの肩に手を置く。
「どうした?具合でも悪いのか?」
「うっ、いえ、違うんです、ユースさんの微笑みがあまりにも素敵すぎて……」
そこまで言って、カロンはハッとしてユースを見る。ユースと目が合うと、ユースは嬉しそうに微笑んでいた。
(わ、私ってばなにをうっかり本心を漏らしてしまっているの!?)
カロンの顔はどんどん真っ赤になっていく。そんなカロンの顔を、ユースはもっと見たいというように覗き込んでくるが、カロンは慌てて両手で顔を覆った。
「恥ずかしいので、み、見ないでください!」
「どうしてだ。俺はカロンの照れた顔が見たい」
「あああ!そんなこと言わないでください!もうっ」
カロンが顔を隠したままうめいていると、すぐ近くでユースがクスリと小さく笑ったのがわかる。
「カロン、お願いだ、顔を見せてくれ」
ユースの静かな、優しい低い声にカロンの体が思わず揺れる。カロンはそうっと両手を下ろすが、視線は床に向けられている。
(恥ずかしすぎてユースさんの顔、絶対に見れない)
ドキドキと鳴りっぱなしの心臓が今にも口から出てしまいそうだ。そんなカロンを見て、ユースはそっとカロンの頬に手を添える。
「カロン、俺の顔を見てはくれないのか?」
「み、見れません!」
「これから、ずっとそうなのか?俺ともう目を合わせてはくれない?」
「う、それは……」
そんなわけにはいかないことはわかっている。カロンはそうっと視線をユースに向けると、ユースの美しい蒼色の瞳にぶつかる。
「カロン、お願いだ、視線をそらさないでくれ」
(ううう、そんなこと言われたら、そらせなくなっちゃう)
ユースの熱のこもったような瞳にカロンの心は射抜かれてしまい、今度はいつのまにか目がそらせなくなっている。どのくらいそうしていただろう、フッとユースが小さく微笑み、カロンからそっと離れた。
「今日はこのくらいにしよう。カロンには、俺の顔に慣れてもらわないと困るからな」
「えっ、またこれをやるんですか?」
カロンが驚いて尋ねると、ユースはククク、と嬉しそうに小さく笑った。
「ああ、せっかく両想いになれてこれからずっと一緒に生きていくのに、目を合わせられないなんて困るだろう?それに、俺はカロンを見つめたいしカロンにも見つめられたい」
(ああああ!もう、なんでそういうことをさらりと言えちゃうのかな!)
ボンッと顔から湯気が出てしまうのではないかと言うくらい、カロンの顔はまた真っ赤になる。そんなカロンを、ユースは愛おしそうに見つめた。