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一二話 Aiutati che Dio t'aiuta. ⑦

(傍からみると案外に似てない…、身長もだけど顔の造形に可愛らしさが足りないのかな?…これでも十分だけど)

 ラザーニャはチマに扮したゼラを見て、小さくない違和感を覚えながらも、彼女に詳しくない人であれば問題なく騙せるだろうと確信をする。

 二梃銃にちょうじゅうを携えたゼラが巨大な無廟むびょうかいへと向かう後を追い、スキルの範囲外にならず攻撃を躱せるだろう位置に隠れた。

「。」

(さっさと片付けて合流しないと)

 初めて使用する魔法銃だが、魔法道具スキルにより自然と身体が理解し照準ねらいを調整、一切の躊躇無く引き金を引く。

 魔法銃内部に装填されている加工残響炭がゼラの保有する魔力と反応し隆起、魔法弾丸として放たれる。

(スキル反応変動式、神世の遺物を元に残響炭で使用者の負担軽減と威力強化を行う改造武装。信仰心の強い北方でこんなのを用意してるなんてね)

 魔力を成形し作られた弾丸は銃身から放たれるやいなや赤い雷を帯びて直進、巨躯の鎧を貫いて風穴を開けた。

(私だと貫通性能が高くなりすぎるから角度の調整が必要、水平には撃てない)

 空いた風穴はミチミチと肉が塞いでいき、探している対象だと認識した巨躯はザラに襲いかかる。

 成人男性二人分は有りそうな大剣で大振りに薙ぎ払えば、一帯の木々は全て伐採され、斧を振り下ろせば地割れかと見間違う痕跡が残り、大槌で撃たれれば地面の染みに変わるであろう。

 それらを一撃も喰らうことなく回避し、隙が生まれた瞬間に銃口を向ける。

 然し相手もある程度は知能があるようで、銃口を向けられた瞬間に横へ飛び退いて射線を外そうとした。

 カチと引き金を引く音が響けば、銃口を向けていた方とは異なる魔法銃で相手の腕を、視線すら向けることなく撃ち抜く。

 大剣を握っていた腕は吹き飛び、傷口が蠢いて再生をし始めるのだが、完全再生には時間が掛かる様子。

 ならば、とゼラは魔法銃一梃を銃嚢じゅうのうへと収め、手投弾を取り出してを放り投げ相手の足元を爆破。魔物に爆破自体は回避されるも、巻き上げられた小石や手榴弾の破片が突き刺さり、軽度の損傷を与える。

 巻き上げられた土煙、それが動いたと思えば、ゼラが飛び出してきて超至近距離からももを撃ち抜く射線で引き金に力を込めた。

 カチリ、バン!と弾けたのは魔物の腿半分。そんなに分厚い鎧を纏っていようが、距離に関係なくぶち抜く遠距離攻撃持ちとは相性が悪い。

「ウオオォォァァアア!!」

 地団駄を踏み足元のゼラを踏み潰そうとした魔物だが、彼女はするすると距離を置き再び銃口を向け、魔物も一切の躊躇無く飛び退く。今回ゼラが持っている魔法銃は一梃なので、不意打ちはない。

 その確信からか、魔物は全身の鎧を弾き飛ばし無差別攻撃を行ってから、素手でゼラを押し潰さんと拳を振るう。

 瑞々し葡萄を潰す音。…本来であれば聞こえる筈の音がせず、拳にも勝利を確信させるだけの感触はない。拳の下を確かめようと腕を上げようとするのだが。

「肩透かし」

 拳の下にいたゼラは片手で魔物の拳を防いでおり、うっすらと笑みを浮かべた。

 魔物はゼラの笑みを見てはいない。然し漫然とした恐怖を感じて逃げ出そうとするのだが、カチッと死を告げる音が響き、腕を貫通した魔法弾が貫通し頭を吹き飛ばす。

 頭を吹き飛ばされたのにも関わらず、まだ傷口が動いていることを確認したゼラは、持ってきた手投弾を片っ端から起動し大の字で伸びている巨躯の無廟の鎧へと投げつけ、木っ端微塵の肉片へと変えてしまった。

「。」

 小さく息を吐きだしラザーニャを探すと、怯えた小動物のように小さく丸まっていて、「使い物にならなくなった」と嘆息し回収する。

「あ」

 硝子に亀裂が走るような異音を耳にしたゼラ。懐から護陣佩ごじんはい、銃嚢から魔法銃を取り出してみれば、それらは一概に全て破損しており、困ったように頬を掻いた。

 スキルを用いた道具への過負荷状態。彼女が本気を出すと使用した道具は著しく損耗し破壊される。


 ジェローズ・ザラ。レベル128。道神【1/1】、道具術【50/87】、身体能力強化【60/102】、釣り【10/14】、敵性察知【3/14】、料理【2/5】、舞踏【1/6】他。


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