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第十四話『首都へ』・参

「-ああ、お帰りっ!…って、えっ!?」

 やがて、日が傾き始めた頃。俺達は無事にお店に到着した。すると、店主らしき人が出迎えてくれたのだが当然彼女は驚いた。

「ああ、こんばんは」

「この方達が困っていたようだったのでお手伝いさせて頂きました。…っと。

 じゃあ、先に荷物を運んでしまいますね」

「…えっ、あっ。…ふぁっ!?」

 とりあえず、班長は簡潔に事情を説明しまた壺を持ち上げた。…それを見た店主は、とても驚いた。

「…では、こちらです」

「「はいっ!」」

 とりあえず、俺も壺を持ち上るとお店の人に案内で裏口から中に入り、ひんやりとした保管倉庫に入った。

「…っと」

「…ふう」

 そして、指定された場所に壺を置き外に出てまた壺を運んだ。

 -その往復を数回繰り返し、全ての壺を運び終えた後俺達はお店の二階にある居住空間に通された。


「…まずは、荷物の運搬を手伝って頂き誠にありがとございます」

「いえ。…先程、お店の方にも言いましたがこちらも聞きたい事があったので」

 そこの居間で、店主は俺達に深々とお礼を述べて来た。すると、班長は手伝った理由を明かした。

「はい、伺っております。

 それで、その内容とは?」

「…実は、先日この宿場町に来た中央の輸送部隊の様子を聞きたいのです。

 あ、先に誓いますがこの情報を悪用するつもりはありませんので、ご安心下さい」

「…なるほど。

 -ああ、わざわざ誓っていただくなくても最初から疑っておりませんよ。…だって、貴女達がとても良い人達なのは見て分かりますから」

「「…っ」」

 班長が誓いを口にすると、店主は優しい笑顔を浮かべてそんな事を言った。…多分、この人は人を見る目があるのだろう。

「…そうですね。

 私や店の者が見た限り、皆様は多少疲れたご様子でしたが店の品を食べた後は元気を取り戻していました。

 ただ、その時不可解な事が起きたのです」

「「……っ」」

 そして、店主は昨日の事を話し始めた。…すると直ぐに、店主は異変を口にした。


「…皆さん、楽しくお食事をされていたんですが途中ふと静かになられたんです。

 しかも、接客をしていた者や私は急に意識がぼんやりとしました」

「「……」」

「…けれど、少ししたらそれは収まりました」

「…なるほど。

 …ちなみにですが、その後お店の方に体調不良の方は出ましたか?」

 店主の話を聞いた班長は、凄く真剣な顔をしながそんな質問をした。…あ、もしかして仕入れの人が少なかったのは技の影響か?

「…っ!は、はい。

 実は、今朝急にかなりの数の高熱の者が出たんです。

 まあ、幸いにも今し方皆回復したのでご安心下さい」

「「……」」

 すると、店主はこちらの予想通りの事を話してくれた。…後、問題は敵の闘士はどちらに潜入していたかだ。

「…そうですが。

 -では、最後の質問ですが他に何か気になった事はありますか?」

「…はい?………-」

 そんな質問をされた店主は、首を傾げながら昨夜の事を思い出そうとする。…果たして、何か手掛かりは得られるだろうか?


「-あっ。…そういえば、お客様の中に『輪に入っていない』人が居たような気がします」

「…っ!」

「…どんな人か、覚えていますか?」

「……。…申し訳ありません。注意深くは見ておりませので、容姿までは。

 ただ、物静かそうな男性だったのは覚えています」

「…ありがとうございます」

「…助かります」

「お役に立てたなら、幸いです」

 そして俺達は、店主にお礼をして店を出た。それにしても、まさか輸送部隊に潜入していたとはな。

「-はあ、今すぐにでも追いかけたいけど流石に無理だな」

 宿に戻る途中、班長は残念そうにそんな事を言う。…確かに、今から追いかけても間に合わないだろう。それに、仮に間に合ったとしても闘うのは厳しいな。

「…今は、休む事に専念しよう。

 そして、なるべく万全の状態で救援出来るようにする」

「…だな」

 班長の意見に、俺は直ぐに同意した。それが今出来る一番正しい対策だろう。


 -やがて、俺達は宿に戻り先に戻っていた仲間二人と共に一旦夕食を済ませた後、また男部屋に集まった。

「二人共、随分遅かったな~?」

「すみません。ちょっと、人助けをしていたので」

「あ、勿論情報集めもちゃんとして来たぞ」

「分かってますよ。…では、どちらから話しますか?」

「じゃあ、私達から話すわ-」

 まず、俺達が得た情報を二人に共有する。…当然、二人はどんどん真剣な顔になっていく。

「…なるほどな~。…敵の闘士の仕業か~」

「…そんな恐ろしい技の使い手が」

「だから、今日はしっかりて休めて明日に備えましょう」

「…はい」

「…分かった~。

 じゃあ、次はオイラ達だな~」

「…えっとですね。

 まず、僕達は最初に町の門番さんに聞いてみる事にしました」

 そして、次に兄さん達が話し始める。…どうやら、二人は町の玄関口から行ったみたいだ。


「まあ、最初は不審に思われたが運が良い事に顔見知りが門番をしててな~。おかげで、きちんと話してくれたな~」

「…それで、聞いた話纏めると『特におかしな事はなかった』そうです」

 だが、有力な情報は得られなかったようだ。けれど、二人は申し訳なさや落ち込んだ様子を見せていない。…これは、ひょっとして?

「…んで、次は馬達の宿に行ったんだがそこで妙な話を聞いたんだ~」

「…っ」

「…お世話をしていた人の話では、昨晩輸送部隊の方が訪ねてきたようです。

 そして、その人が馬達に言葉を掛けていくと馬達は興奮した様子になり、けれど直ぐに落ち着いたようです。

 当然、気になったお世話の人は『何を話したんですか?』と聞くと、輸送部隊の人は『明日で君達は解放されるよ』…と、言ったそうなんです」

「…普通に考えれば『頑張れ』って言ってるように思えるが、なんか引っ掛かるんだ~」

「…その訪ねて来た人の容姿は?」

「…えっと、確か北部の高原の方だったとお世話の人は言ってました」

「ああ、褐色の肌に偉丈夫(ノッポ)だから間違いないだろうな~」

「……」

 それを聞いた班長は、確信を得た顔になる。つまり、『そういう事』なんだろう。


「…お姉さん?」

「…どうした~?」

「…まさか、闘士が『二人』も居るなんてね」

「「…っ!?」」

「…やっぱり、そいつも闘士なのか?」

「…馬と深く意志疎通が出来るのは、『午』の闘士しか考えられないわ。

 それに、歴代の午の闘士は皆北部の遊牧民なのよ」

「…なるほど」

「…一体、その人は何を吹き込んだのでしょうか?」

「…恐らく、『頃合いを見て輸送部隊の命令を無視しろ』とでも言ったのでしょうね」

 弟分は、不安そうな顔で聞いて来た。なので少し彼女は考え、予想を口にする。

「…だな~。んで、そうなれば輸送部隊の機能が麻痺するな~」

「…しかも、輸送部隊は寝坊させれた事によりとても急がなければならない。

 当然、馬達に無理を強いるから馬達も苛立ち闘士の命令を優先しやすくなるな」

「…どうして、そんな恐ろしい事を?」

 俺達の予想を聞いた弟分は、当然の疑問を口にした。…こればっかりは、俺達も予想出来ないな。


「…まあ、何にせよ連中の企みを阻止する必要があるわ。

 この事は、間違いなく首都の催しに関わっているのだから」

「…だな~」

「…ああ」

「…分かりました」

「…じゃあ、その為にも今日は早めに休んで明日に備えましょう。

 -…という事で、おやすみなさい」

「おやすみな~」

「おやすみ」

「おやすみなさい」

 そこで、彼女は話し合いを終わらせ挨拶をしてから男部屋を出た。そして、俺達も少ししてから眠りに着いた-。

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