『-まずは、双方を落ち着かせたらどうだ?』
(…どちらも、聞く耳持たないと思うぞ?)
『ならば、否が応でも-持たせて-やれば良い』
(…あっ-)
相棒にそう言われて、俺はハッとした。…確かに『あの技』なら、強制的に言い争い止まるかもしれない。
なので、素早く氣を練り上げ雷を手に集めていく。
『…っ!』
「…ちょっ、何する気?」
「…とりあえず雷玉を投げ込んで、双方を強制的に落ち着かせてみようかと」
当然、仲間達はこちらの様子に気付き班長は直ぐに確認してきた。なので、今からやる事を口にする。
「…それ、仁の相棒の提案?」
「ああ。
-雷玉。…そいっ!」
そして俺は、双方からかなり離れた所目掛けて雷玉を投げ込る。…すると、ほんの少し後に閃光と大きな音が周囲に広がった。
『うわああああっ!?』
『な、なんだああああっ!?』
『…っ』
やがて、それらが収まると現地部隊は混乱状態になっていた。…一方、対策部隊は冷や汗こそ流していたが全員落ち着いていた。
『……-』
「…っ!」
しかも、大隊長と副隊長はこちらを見て軽く頭を下げて来た。…どうやら、冷静になってくれたようだ。
「-我々は、皇帝陛下の命によって世を騒がせている賊を壊滅させる為に動いているっ!」
『…っ!?』
「…こ、皇帝陛下だと?…っ!?」
そして、大隊長は轟き渡る声でそう言った。更に、巻物を取り出して中身を現地部隊の代表に見せる。…それを見た代表は、一瞬で顔を青くした。
「故に、我々は諸君ら現地部隊と揉める事を望まない。
何故なら、諸君らもまた陛下の命でこの地の守護を任された者達であるからだっ!」
『…っ!』
大隊長の言葉に、向こうはびっくりした顔になる。…一気に相手の意識を変えた。しかも、あの人は本心で言ってる。いや、凄いな。
「…あんたらは、『昨日の奴ら』とは違うな」
「…っ!…その辺りの事情を、ゆっくりと聞かせて欲しいのだが、よろしいか?」
すると、向こうの代表は驚いた様子でそんな事を呟いた。…当然、大隊長は嫌な予感がしたのかなるべく落ち着いて相手に聞く。
「…ああ。
-総員、直ちに道を開けろっ!」
『…っ!了解っ!』
すると、向こうの隊長は頷き部下に道を開けるように言った。直後、宿舎の出入口を塞いでいた部下達は左右に別れて道を開けてくれた。
「感謝する」
「…いや、本当にすまなかった。じゃあ、隊長さんと副隊長さんはついて来てくれ」
「…あ、少し待って下さい」
「…ん?」
そして、向こうの隊長はこちらの代表を案内しようとするが、直ぐに副隊長はそう言ってこちらにやって来た。
「-…あの、桃歌殿」
「あ、話は聞いていたので大丈夫ですよ。…ああそれと、貴方も一緒に来て」
「…は?……分かった」
班長は副隊長の頼みを快諾するが、ふと俺を見てそんな事を言った。…まあ、理由は後で話してくれるだろうと思いとりあえず頷く。
「ありがとう。
じゃあ、行きましょう」
「…は、はい」
すると班長は、副隊長に声を掛ける。…当然向こうは少し戸惑うが、直ぐに切り替えて二人の代表の元に駆け出したので俺達も続く。
「…すみません。お待たせしました」
「…いや、大丈夫だ。
それより、その二人は?」
「…申し訳ないが、その事は後できちんと説明する」
当然の疑問に、大隊長は申し訳なさそうにそう言う。…多分、人が多い所で俺達の事を話したら混乱が起きると考えたからだ。
「分かった。
じゃあ、行こう」
向こうの隊長はとりあえず納得し、改めて俺達を案内し始める。…果たして、この砦で何が起きたのだろうか?
俺は不安を抱きながら、彼の後に続いた-。
「-じゃあ、まずはこちらから名乗ろうか」
宿舎の応接室に着き椅子に座ると、向こうの隊長さんは名乗った。すると、こちらの責任者も名乗る。…それが終わると、向こうの隊長さんは俺達を見た。
「…お初にお目にかかります。私は-」
なので、班長から名乗りその後に続いて俺も名乗った。…まあ、向こうの隊長さんはこちらの名乗を聞いてもピンと来てないようだった。
「…これから話す事は、内密にお願いする」
「…分かった」
「…まず、我々の部隊に与えられた任務は彼らの『補助』だ」
「………は?」
大隊長が本題に入ると、向こうは少し遅れて驚いた反応をした。…まあ、いきなりそんな事を言われて驚かない人はいないだろう。
「…は?ちょっ、ちょっと待て?
何で、国の中央から来た部隊が、何処にでも居そうな若い奴らの補助を?」
「…それは、彼らの素性に関係している」
「…では、少々『失礼します』ね?
-…ふうううう」
「…っ!はああああ-」
大隊長はこちらを見たので、班長は先に断りを入れてから氣を練り上げた。多分、先に分かりやすい『証拠』を出してから話すつもりなのだろう。
だから、俺も彼女と同じ事をする。
「…っ!?な、なんだ?」
「「…ふう」」
当然、向こうの隊長はこちらに気圧され冷や汗を流し始めた。…なので、俺達は直ぐに氣を抜いた。
「…一体、この二人は何者なんだ?」
「…そうですね。
-時に、隊長殿は『星獣闘士』の事をご存知だろうか?」
「……は?……ああ、知ってるよ。
確か、かつてこの大陸に居たとされるヤバい強さを持った奴らの事…え?」
唐突な大隊長の質問に、向こうの隊長さんは簡潔に答えた。…そして、答えの最中とんでもない事に気付いた隊長さんは目を見開いて再度こちらを見た。
「…え?マジで?」
「はい。…証拠は、『先程』見せた通りです」
「………」
隊長さんの確認に、班長は淡々と答えた。…当然隊長さんは、言葉を失った。…というか、ここの人ってちゃんと過去の資料を読んでるんだな。
「…マジ、か。…だが、納得した」
そんな事を思っていると、隊長さんは何とか冷静になると共に『補助』の意味を理解した。
「良かった」
「…はあ、まさか、この二人がねぇ。…いや、待てよ?
まさか、一緒に居た奴らもか?」
「はい」
すると、隊長さんは直ぐに仲間の事に気付き確認してきたので、班長は肯定する。…なんか最初の印象と違って、砦の隊長にふさわしい人だな。そんな人が、一体どうして?
「…やっぱりか。…て、事はもしかして例の賊にも?」
「ええ」
疑問を抱く中、隊長さんは連中の事について聞いた。すると、班長は真剣に頷く。
「…何て事だ。……っ」
「…どうかされた?」
「…いや、もしかしたら『昨日の奴ら』が例の賊の奴らじゃないかと思ってな」
「「…っ!?」」
「……」
ふと、隊長さんはそんな予想を口にした。当然こちらの代表は驚くが、班長は『やっぱり』という顔をした。…どうやら彼女も、同じ疑問を抱いていたようだ。
「…どうやら、お前さん達も同じ考えのようだな?」
「…はい。…その、出来れば昨日のこの地で何があったのか聞きたいのですが、よろしいでしょうか?」
「分かった。
-あれは、昨日の昼過ぎくらいの事だ」
班長の質問に、隊長さんは応じ昨日の事を話し始めた。
-その内容は、あまりにも酷かった。…なんと連中は、国の軍に化けていたのだ。しかもそのふざけた姿で、砦の部隊や旅人に高圧的な態度で接し、中には両者に侮辱をした者もいた。
それだけなら現地部隊も『ムカつく』だけで済んだのだが、あろう事か奴らは酒に酔った勢いで宿舎の窓を壊そうとしたり、部隊の兵を集団で襲ったりしたのだ。
だから、こちらの隊長さんは我慢の限界が来てしまい、奴らの纏め役をぶっ飛ばし怒りのままに『此処から出ていけ』叫んだのだ。
すると、すっかり怯えた奴らは捨て台詞を吐きながらあっさりと砦から出た。…しかし、隊長さんの怒りは収まらず『余所者は宿舎に入れない』と、決めてしまったようだ。
当然、部下の人達も同意してしまい今夜の騒動に繋がったらしい。