扉の向こうにあなたがいる。
扉のこちらに私がいる。
開けるには、どうしたらいいだろう。
私が開ければ問題ない。
あなたが開ければ問題ない。
けれど、私とあなたがとても同じ考えで、
一緒に引っ張り合ったら扉は開かない。
一緒に押し合っても、扉は開かない。
とても同じことを考えるのに、
どうしてあなたに会えないのだろうかと、
どうして扉が開かないのかと。
正しいことをお互いにしているのに、
同じようなことをしてしまったら、扉は開かない。
悩みばかりが増え、
扉は強固になるばかり。
とても気が合う人なのに、扉が開かない。
もどかしい。
拳骨グーで扉を破壊できれば、
そんなことをしていたら、
扉の向こうのあなたも痛むかもしれない。
いっそどちらかが力が強かったら、こんな悩みはなかったのに。
私たちはとても普通で、同じくらいの人間で、
扉がなければ、きっと笑顔で他愛もない会話が出来るはず。
扉がなければ、同じような悩みを打ち明けあうこともできるはず。
扉を開けようと、みんな押したり引いたりしている。
その向こうで、誰かが、
やっぱり開けようと、押したり引いたりしている。
ある日突然、何かのきっかけで、
扉が開くことがあるかもしれない。
それはきっと気まぐれで奇跡で、
強固な扉がふっと開く瞬間。
ずっと会いたかったあなたに会える。
扉を開いて。
いくつも開いて。
悩んで開いて。
いくつも、いくつも。
扉の向こうには何かがある。
扉の向こうには誰かがいる。
扉が開いて、
びっくりしたあと、照れたように笑うのは、誰も一緒だ。