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第124話 ともに夜空を見上げる馬鹿者

なんでこんなことになったんだろうなと俺は考える。

ここは街灯の少ない夜の公園。

懐中電灯でもなければすっ転ぶほど暗い公園だ。

俺と、隣のこいつは、

暗い夜の公園で互いにブランコに腰かけて、

夜空を見上げながら、ぽつぽつ話をしていた。

大学受験も佳境だ。

そろそろ進路が決定してもおかしくない頃だ。

俺と、隣のこいつは幼馴染で、

ガキの頃からこの公園でバカやってた。

商店街で買ったものを公園に持ち込んで、

ブランコ揺らしながら食ってたこともあった。

俺たちよりもガキの子供らとめちゃくちゃに遊んだこともあった。

携帯ゲーム機で遊んだこともあった。


とにかくこの公園は俺たちのバカやった場所。

すがすがしいほどバカな記憶しか残っていない。

今夜はその公園で、ブランコ揺らしながら、ぽつぽつ話をしている。

ほとんどは思い出話。

なんだか、将来の話ができない。

した途端、なんだか全部が終わりそうな気がした。

今までの楽しいバカバカしいことが全部。

隣のこいつもそうなのか、

バカやったことをぽつぽつと話している。

楽しかったなぁ。

すっげぇ怒られたなぁ。

そんなことを繰り返す。

寒い寒い冬の真っ暗な公園。

俺たちは核心に触れられないまま、

バカやった思い出を語る。

時々大笑いして、なんだか黙って、

ブランコ揺らしながらまた話して、

ちょっとしんみりしたりして、

俺たちの思い出話は、だんだん今に近づいてきた。

それでもなんとなく、将来には触れられないでいる。


「だいたい星はどこでも同じように見えるんだろうな」

隣のこいつが言う。

「星座ってのは多分同じなんだろうな」

俺が言う。

「なんか星座ってわかるか?」

「なんか星が三つ並んでんのがあるとしか知らねぇ」

「あー、あれかぁ」

「他の星座とかわかんないけど、あの星は目立つよな」

「あの三つの星だったらどこでも見れてわかっかな」

「どうだかなぁ。星って季節で変わんだろ」

「知らねぇけど」

「とにかくくそ寒いこの季節、あの三つの星は目立つってことだ」

「なるほどなぁ」

俺たちは星を見上げながらつらつらと話をする。

三つの星はとにかくよく目立つ。

暗い公園だからなおさらよく目立つ。

「俺たちがどこに行っても、くそ寒い季節はあの星が見れるってことだな」

隣のこいつが言う。

「そして、くそ寒い公園でわけわからない話をしまくったことも思い出すわけだな」

俺が言う。

「マジで何の成果もない話だったなぁ」

「実りがないってこのことだな」

「今までバカやったなぁ」

「ほんとにバカやったなぁ」

俺たちは言い合ってゲラゲラ笑った。

「俺たちはバカだな」

「ああ、バカだな」

沈黙が降りて、

「これからも世界のどっかでバカやっててくれよな」

隣のこいつが言う。

「おめーもな」

俺も答える。

多分進路は別々になる。

滅多に会えなくなるだろう。

それでも、くそ寒い公園で星を見上げてバカ話した記憶は、

互いの中にずっと残り続ける。

「くそ寒い季節に、また、夜空見上げてくれよ」

「気が向いたら三つの星を探そうぜ」

「まったく星座はわかんねぇけどな」

「俺もわかんねぇからお互い様だ」

ゲラゲラ笑う馬鹿者の俺たちと、三つの星も笑っている。


これからどこに行っても、

くそ寒い季節にはこの星を探そう。

どこかでこいつも星を探している。

星を見上げるとき、

やっぱり俺たちはバカやったことを思い出して笑うんだと思う。

なんとなくでやってきた夜の公園のことを、

俺たちはずっと思い出すんだと思う。

くそ寒い夜にこの星がある限り、

俺たちは何度も思い出す。

多分、お互いがどこかでがんばってるとか思ったりして、

なんだかやる気になったりするかもしれない。

会えなくても励まし合えるってことかな。


なんかそれってすごくねぇかな。

バカだからよくわかんねぇけど、

永遠の思い出みたいで、なんかいいなって思った。

馬鹿者の俺たちの、永遠の友情みたいなものってことだ。

友情は輝いてなんぼってことだな。

しらねぇけど。

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