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七海トモマルラボ 第六実験結果集

第251話 カラスロボット

カラスロボットは呼べばやってくる。

カラスロボットは相互評価システムのロボットだ。


この世界において、

評価というものは特に重要視されている。

ある程度のテストをして高得点を取ることも評価ではあるけれど、

それだけでははかれない、評価もある。

それが、人間としての評価になる。

どれだけ人に優しくしたか、

どれだけ人に大切に思われているか、

あるいは、どれだけの悪人かなど、

それらの評価を相互にすることにより、

この世界においての人間評価が出来上がっていく。

カラスロボットはそのためのシステムだ。


カラスロボットは通常空を巡回している。

街にいる人が、カラスと呼びかけると、

カラスロボットは空から降りて、

呼びかけた人のもとにやってくる。

カラスロボットは人に対する評価を聞く。

名前と、どんなことをしたか、

カラスロボットを呼んだ人に対して何をしたか、

それに対して、評価を上げるのか下げるのか、

一通りの報告を終えると、

カラスロボットはサーバーに評価の連絡を入れて、

カラスロボットは巡回に回る。

カラスロボットは人々のいろいろな評価を聞いて回るシステムだ。


無論、いい使われ方をしているばかりではない。

カラスロボットを呼びつけて、

とにかく他人の評価を下げる報告ばかりするものもいる。

社会的地位を下げようと、

著名人に対して評価を下げる報告を行うものもいる。

あるいは、真偽のわからない情報で、

評価を下げようとするものもいる。

また、何かに選ばれるのも、

カラスロボットの報告から行く評価が重視されるから、

選ばれたいために、対抗勢力の評価を下げるものもいる。

そんな使い方をするものも多数いる。


カラスロボットはどんな小さな評価もちゃんと聞いて報告する。

サーバーを介して、真偽のほどが定かではない情報も、

ちゃんと調べて評価する。

偽情報を流したものの評価は下がる。

そうして、より正確な人間の評価を作らんとしている。

ただ、自分にそぐわないから評価を下げるという行為は、

カラスロボットに見透かされている。

カラスロボットはシステムの一部かもしれないけれど、

嘘や悪意は人間以上によく見える。

隠しているものも、すべて暴いている。


まだ、カラスロボットが嘘を見破れないものと思って、

悪意を持った評価をしているものもいるけれど、

彼らはやがて自分の評価が下がっていることに気が付くだろう。

なぜ自分の評価が下がっているかもわからず、

誰かが不当に評価を下げたと思うだろう。

すべては自分が巻いた悪意の所為であることに、

気が付いたときには、評価は地の底にまで落ちているだろう。

何にも選ばれず、信用もされない、

良い評価が全くない存在になっていくだろう。

それはこの社会からはじき出されるということ。

おそらく、誰かの所為で社会からはじき出されたと思うかもしれないけれど、

すべては悪意をまき散らした彼ら自身の所為だ。

身から出た錆とはよく言ったものだ。


カラスロボットはすべてを知っている。

空を巡回しながら、

良き行いをしているものをちゃんと記録している。

声高に声をあげないそのようなものの評価を、

カラスロボットはサーバーに報告して、

システムで解析した後、しかるべき評価を下している。

誰にも悪意を向けず、

ただ、大切なものを大切にしている行為を、

カラスロボットはちゃんと見ている。

人が人を評価するような世界かもしれない。

相互評価としてはそのシステムもある。

しかし、カラスロボットも評価している。

世界の片隅で懸命に生きているものを、

カラスロボットはちゃんと見ている。

人に見つからないまっとうな生き方を、

カラスロボットはちゃんと見ている。

カラスロボットは監視や密告のシステムでなく、

正しく人が評価されるシステムとして、

今日も世界を飛び回っている。

カラスと呼べば誰かのもとに降りてくる。

そして、いろいろな思いを聞いて、報告をしている。


本当に救われるべき存在を選ぶとき、

カラスロボットのシステムが下した評価が生きるのかもしれない。

たとえば世界が終わりになる時など。

そんな時が来るのかはわからないけれど、

カラスロボットは今日も空を巡回している。

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