カラスロボットは呼べばやってくる。
カラスロボットは相互評価システムのロボットだ。
この世界において、
評価というものは特に重要視されている。
ある程度のテストをして高得点を取ることも評価ではあるけれど、
それだけでははかれない、評価もある。
それが、人間としての評価になる。
どれだけ人に優しくしたか、
どれだけ人に大切に思われているか、
あるいは、どれだけの悪人かなど、
それらの評価を相互にすることにより、
この世界においての人間評価が出来上がっていく。
カラスロボットはそのためのシステムだ。
カラスロボットは通常空を巡回している。
街にいる人が、カラスと呼びかけると、
カラスロボットは空から降りて、
呼びかけた人のもとにやってくる。
カラスロボットは人に対する評価を聞く。
名前と、どんなことをしたか、
カラスロボットを呼んだ人に対して何をしたか、
それに対して、評価を上げるのか下げるのか、
一通りの報告を終えると、
カラスロボットはサーバーに評価の連絡を入れて、
カラスロボットは巡回に回る。
カラスロボットは人々のいろいろな評価を聞いて回るシステムだ。
無論、いい使われ方をしているばかりではない。
カラスロボットを呼びつけて、
とにかく他人の評価を下げる報告ばかりするものもいる。
社会的地位を下げようと、
著名人に対して評価を下げる報告を行うものもいる。
あるいは、真偽のわからない情報で、
評価を下げようとするものもいる。
また、何かに選ばれるのも、
カラスロボットの報告から行く評価が重視されるから、
選ばれたいために、対抗勢力の評価を下げるものもいる。
そんな使い方をするものも多数いる。
カラスロボットはどんな小さな評価もちゃんと聞いて報告する。
サーバーを介して、真偽のほどが定かではない情報も、
ちゃんと調べて評価する。
偽情報を流したものの評価は下がる。
そうして、より正確な人間の評価を作らんとしている。
ただ、自分にそぐわないから評価を下げるという行為は、
カラスロボットに見透かされている。
カラスロボットはシステムの一部かもしれないけれど、
嘘や悪意は人間以上によく見える。
隠しているものも、すべて暴いている。
まだ、カラスロボットが嘘を見破れないものと思って、
悪意を持った評価をしているものもいるけれど、
彼らはやがて自分の評価が下がっていることに気が付くだろう。
なぜ自分の評価が下がっているかもわからず、
誰かが不当に評価を下げたと思うだろう。
すべては自分が巻いた悪意の所為であることに、
気が付いたときには、評価は地の底にまで落ちているだろう。
何にも選ばれず、信用もされない、
良い評価が全くない存在になっていくだろう。
それはこの社会からはじき出されるということ。
おそらく、誰かの所為で社会からはじき出されたと思うかもしれないけれど、
すべては悪意をまき散らした彼ら自身の所為だ。
身から出た錆とはよく言ったものだ。
カラスロボットはすべてを知っている。
空を巡回しながら、
良き行いをしているものをちゃんと記録している。
声高に声をあげないそのようなものの評価を、
カラスロボットはサーバーに報告して、
システムで解析した後、しかるべき評価を下している。
誰にも悪意を向けず、
ただ、大切なものを大切にしている行為を、
カラスロボットはちゃんと見ている。
人が人を評価するような世界かもしれない。
相互評価としてはそのシステムもある。
しかし、カラスロボットも評価している。
世界の片隅で懸命に生きているものを、
カラスロボットはちゃんと見ている。
人に見つからないまっとうな生き方を、
カラスロボットはちゃんと見ている。
カラスロボットは監視や密告のシステムでなく、
正しく人が評価されるシステムとして、
今日も世界を飛び回っている。
カラスと呼べば誰かのもとに降りてくる。
そして、いろいろな思いを聞いて、報告をしている。
本当に救われるべき存在を選ぶとき、
カラスロボットのシステムが下した評価が生きるのかもしれない。
たとえば世界が終わりになる時など。
そんな時が来るのかはわからないけれど、
カラスロボットは今日も空を巡回している。