おや、奇遇ですね。
いや、このあたりでよくあなたを見かけるなと思っていたのですが、
今日にいたってはお昼のお店まで一緒とは思わず、
ついついお声をかけてしまいました。
このあたりはいろいろな会社がありますからね。
休憩になりますと、あちこち社員さんで混みあいます。
今日は席が取れて、ついていました。
あなたもこのあたりの会社にお勤めでしょうか。
ああ、あの会社ですか。
なるほどなるほど。
心地よく働かれていますか?
仕事は楽しいけれどやはり休憩や休暇は別格であると。
それはとてもいいことです。
休憩や休暇が良いものと感じるのは、
当然のことです。
いや、変なことをお聞きしてしまいました。
お昼休憩にお仕事のことを思い出させてしまいました。
さぁ、食事にしましょう。
美味しいものを召し上がって、
午後の英気を養いましょう。
私のことをお聞きしたいのですか?
とても言いにくいのですが、
あなたと同じ会社に勤めているのですよ。
やはりそう驚かれますよね。
部署が違うと交流も少ないので、
私のことなどわからないと思います。
私も、先程あなたがお勤めの会社を話してくれたことで、
内心とても驚いていたのですよ。
いやはや、本当に奇遇ですね。
私も心地よく働ける部署につとめています。
ただ、他の部署のあなたが心地よく働いているのを聞きますと、
この会社はいいものだなと感じるものです。
失礼ですが、食事のあとの休憩時間は、
どのようなことをされて過ごされていますか?
なるほど、電子書籍で読書をなされていると。
私などは、手帳の整理をして、予定の確認をしていますね。
どうにも仕事のことばかり考えていますので、
趣味らしい趣味がないのですよ。
お昼休憩に食事をしたら、
これからの予定を確認することばかり考えて、
上手く切り替えることができないのですよ。
電子書籍ではどんなものがお勧めでしょうか。
なるほど、私がどのようなものを読みたいかによると。
そうですね、何を読みたいかがわからないと、
お勧めのしようもありませんね。
そうですね。例えばですが、正しい行いをしているものが、
しっかり報われるお話がいいですね。
欲を言えば、正しい行いを邪魔することなく、
皆が一つの目標に向かっていくものがいいですね。
苦難を皆で乗り越えて、しっかり成功するものがいいです。
ああ、難しい注文を出してしまって申し訳ないです。
物語の中だけでも、
そんな経験ができたらいいなと思ったのですが。
やはり世知辛い世の中においては、
そのような物語はないものでしょうか。
おや、何か思い当たるものがあると。
あなたもそのような物語がお好きなのですね。
奇遇ですね。
次にお会いする時に、リストまで作っていただけると。
ありがとうございます。
あなたはお優しい方なのですね。
ご謙遜なさらなくてもいいですよ。
では、次にお会いできるのはいつになりましょうか。
次の奇遇がいつになるかはわかりません。
お約束ができればと思います。
ありがとうございます。
では、明日のお昼休憩に、
このお店で。
あなたは別の場所で電子書籍を読まれると。
落ち着かれるお気に入りの場所がおありなのですね。
そこまではお邪魔しません。
では、いってらっしゃいませ。
明日を楽しみにしています。
我が社にこのような人材がいるとは思いませんでしたね。
心地よく働けているようで、なによりです。
会社の上の方の裏方になりますと、
どうしても現場の声が届きにくくなります。
また、顔も覚えてもらえないので、
本当に会社のためになっているのかが不安にもなります。
会社のために尽くして、数字と予定を詰め込みましたが、
本当は、皆で一つのことを成功させたい、
この会社をもっと良くしていきたい。
そこが原点だったのかもしれませんね。
私の役職は内密にして、
また、あの社員さんにお会いしたいですね。
奇遇と言えば奇遇のはじまりでしたが、
大事なことを教えてもらえる良い時間でした。
会社の宝は人であるのですね。
さて、午後の予定を確かめてから私も行きますか。
いずれは趣味も持ちましょう。
明日が楽しみですね。