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第280話 恐ろしいものは

恐ろしいものは何だろうか。

人それぞれではあるけれど、

みんなが恐ろしいと思うものは何だろうか。


天変地異は恐ろしい。

恐ろしいし、理不尽だ。

善悪問わずにみんな壊していく。

壊れるのが恐ろしいのだろうか。

予兆がないのが恐ろしいのだろうか。

何も問わずにすべて巻き込んでしまうのが恐ろしいのだろうか。

恐ろしいと思われる要素が、

天変地異にはたくさん含まれている。

たとえば地震。

たとえば津波。

たとえば異常気象。

巨大な台風などもそうかもしれない。

それらの災害は、人ばどれだけ善い行いをしていたとしても、

すべてを破壊していく。

それが恐ろしいのかもしれない。


ここから考えられるのは、

理由なく巻き込まれて害になるものは恐ろしいということだ。

理由があるのならば、

そこから離れるようにすれば、

少なくとも巻き込まれにくいと思う。

たとえば犯罪に巻き込まれるのもいろいろだけど、

手っ取り早くお金をもうけようと、

犯罪に手を染めることがなければ、

そこから自身の身に害をなすようなことはないように思う。

犯罪に巻き込まれるのも、

時々、誰でもよかったと、

無差別に害する存在もいる。

そういった犯罪者は、見境がない故、

やはり恐ろしいと思う。

どんな生き方をしていても、

生き様を否定するように巻き込まれて害をなすものは、

やはり恐ろしいと思う。


また、話のつけようがない存在に害されること。

たとえば生きていない存在。

言葉に直すならば悪霊的なもの。

手あたり次第に呪うなどの害をなしている存在と仮定するならば、

話そのものが通じないであろうし、

どんな生き方をしていようとも、

生きているものが憎くて呪っている悪霊だとすれば、

これはやはり恐ろしい。

悪霊が見えるものとして描かれたものなどは、

話が通じるような見た目をしていない。

見た目から恐ろしいと感じるのは、

害をなす存在と見えているからかもしれない。


つまり、理不尽に害する存在は恐ろしい。

害される理由が見えず、また、それを防ぐ手立てがなく、

ただただ害されること。

それは恐ろしいと思う。

歴史の上でも、巻き込まれて害されて死んでいった者がいる。

戦争などもそうかもしれないけれど、

大きな戦とか戦争があれば、

戦いに赴くものばかりでなく、

暮らしているものも巻き込まれて害された。

それを防ぐ手立てとして、

人々は団結して暮らしを守ろうとしたけれど、

歴史の大きな流れの中で、

巻き込まれて消えていった者がたくさんいただろう。

人同士の戦争や戦ばかりでなく、

災害は世界のあちこちであった。

神様をどれだけ信じていようとも、

災害は人の命を容赦なく奪っていった。

それはやはり恐ろしいものとして、

歴史に刻まれていることだろう。


恐ろしいものはたくさんある。

個人では何かの恐怖症もある。

それらもおそらく、

対象がこちらを害するように感じられるということが、

恐怖症の根源にあるのかもしれない。

それが自分を害してくるように見える。

だからとても恐ろしい。

恐ろしいと思うことに、

命を守ろうという無意識が働いているのかもしれない。

あれから命を守ろうとしなければ。

あれから逃げなければ。

恐怖症の根源はそこにあるのかもしれない。


恐ろしいと思うこと。

それはきっと、命を守りたいと思うこと。

なんとか生きたいと思うこと。

理不尽に巻き込まれることなく、

平穏に生きていたいことの裏返し。

生きることを害するような存在は、

やはり恐ろしいのだと思う。

古来はそれを神のようなものとして、

祭ったりしたこともあったと聞く。

恐ろしいのは、結局人とは対話できない存在なのかもしれない。

それを神というか災害というかはわからないけれど、

人を超えた大きな力、また、理不尽な暴力。

それらはやはり、どの時代でも恐ろしいのだと思う。

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