技術職のあなたへ
あなたと同僚になり、この会社で働いて、
数年程度の年月が過ぎました。
この会社は、技術が必要となる会社ですので、
あなたの高い技術は、今でもこの会社にとって必要な財産です。
ただ、あなたは人当たりがあまりよくなく、
言ってしまえば、ぶっきらぼうです。
私はあなたのそんなところが、
しばらく苦手でした。
怖かったというのが近いかもしれません。
それでも、あなたの技術がこの会社を支えているのを目の当たりにしますと、
私も何とかあなたと普通に接することができないかと思っていました。
この度、あなたに手紙を送りますのは、
あなたへの感謝の気持ちを伝えたいからです。
ありがとうの気持ちを、伝えたく思い、筆をとりました。
技術が必要な会社ですので、
現場には様々の道具があります。
あなたをはじめとして、
現場の方々の道具は、あるべきところに整頓されています。
あなたが言われていたそうですが、
道具を探すところから始めると、
それだけで時間のロスになる。
技術は速さも価値だと。
言われた方は、ちょっとムッと来たと言われていました。
なんでも、自分の技術の速度が劣っているのかと思ったらしいです。
その方は、少し頭を冷やした後、
私のもとにやってきて、
やっぱり速さも価値だな、しっかり整頓する。
そうして、あなたの言葉を受け止めていかれました。
おそらくではありますが、
あなたのぶっきらぼうな言い方で、
あの方は勘違いをなされたのだと思います。
あなたは決してあの方が劣っていると言ったわけではありません。
この会社の技術は、速さが必要で、
速さを求めるには、最初に道具を探すことから始めてしまうと、
道具を探すことが時間のロスになる。
時間のロスは少ない方がいい。
あるべきところにあるべき道具がある。
あの方をはじめとして、
現場の皆様にその意思が伝わったのだと思います。
今では現場の技術担当の方々の道具は、
あるべきところにしっかり整頓されていると聞きます。
あなたのものの言い方に反発なされた方もおられたかもしれませんが、
しっかり伝われば、あなたの言っていることはとても正しいのです。
上手くいかないこともあるかもしれませんが、
あなたの言いたいことは、時間をかければしっかり伝わります。
あなたは、私にもいろいろな依頼をされました。
私は事務をしていて、
技術担当の現場に必要なものを、
調べて購入などをしていますが、
時々専門的すぎてわからないことがあります。
会社に必要だということはわかるのですが、
今まで発注をかけていなくて型番がわからず、
発注をどうかけていいかわからないものや、
どこに発注をかけていいかわからないものもありました。
あなたはあの調子で話しかけるものですから、
私は怒られていると萎縮をしました。
あなたはため息をついて、
技術の現場に必要なものの、
型式を調べて持ってきてくれました。
今まで発注したことがなかったので、
おそらくこれではないかと言う型式でした。
そこまでわかれば私も発注にあたって、
型番を調べることができます。
これは、私とあなたの間の、連絡ミスであったのだと思います。
なんでわからないんだとお互い思っていたものだと思います。
私などは、あなたの調子から、
怒られていると思い込んで、
とても萎縮をしたものでしたが、
あなたはそれをわかったのだと思います。
あなたはぶっきらぼうに話す方ですが、
決して相手の心を理解できない方ではありません。
私がどこをわかっていなかったのか、
何を伝えれば発注までできるか。
私がそれを伝えれば理解できる方であり、
頭ごなしに怒鳴りつける方ではありません。
いわゆる一般的な人当たりの良さとは、かけ離れているかもしれませんが、
あなたは仕事に対してとても真面目であり、
また、人に対して理不尽な対応をすることはありません。
あなたはとても真面目な方なのだと思います。
おかげでこの会社の技術は、
それなりに知られるようになりました。
営業の方でも売り込みをかけているようですが、
あなたの技術が支えになっていることは言うまでもありません。
営業の方では、あなたが表に立ってしまうと、
まとまるものもまとまらなくなると笑っていました。
つまり、あなたはあなたのお仕事をしっかりしてくれれば、
仕事を持ってくる営業の方はそれだけで大丈夫と言うことです。
あなたの技術があるから、
営業の方も会社の技術を売り込めるのです。
あなたはあなたの仕事に専念しろと。
こっちのことは任せろと。
営業担当の方は笑われていました。
私もそれには同意いたします。
この会社はそれぞれに得意なことをして、回していければいいのです。
あなたは確かな技術があります。
私は事務ができます。
営業の方は、あなたの技術を売り込みます。
それぞれの場所でがんばれば、
会社はもっとよくなるでしょう。
あなたはそのままのあなたでいいのです。
ある時、会社の退勤時間頃。
技術の現場に行った際に、
あなたが道具の手入れをしているのを見かけました。
あいかわらずのぶっきらぼうな調子で、
メンテナンスしないと仕事にかかわると言われていました。
あなたは黙々と道具を整えていて、
私はそれを仕事への愛だととらえました。
会社に尽くそうと言うのでなく、
あなたの技術が一番生かされる場所で、
この場所をもっと心地いいものにして、
最高の結果を残すべく、
日々、道具の手入れを怠らない。
これはあなたの仕事愛なのだと思います。
仕事と言えばお給料をもらうものという考えが一般的かもしれませんが、
あなたは多分、仕事を一番輝ける場所だと思っているように感じられます。
表に出るような仕事ではないかもしれません。
しかし、あなたがこの職場で輝くことにより、
助けられている顧客はたくさんいると思います。
また、この会社もあなたが愛を尽くして仕事をしてくれていることにより、
会社の上から下まですべての、やる気が上がっているものと思います。
あなたは会社を回しているエンジンのような存在です。
エンジンは外からはわかりません。
しかし、あなたが動いてくれないとすべてが上手くいきません。
会社はいろいろな部品が合わさってできた大きな機械のようなものです。
あなたは否定されるかもしれませんが、
あなたがこの会社をしっかり回しているのです。
私もこの会社が大好きです。
みんなで輝ける、この会社が大好きです。
これからも、同僚として、がんばっていきましょう。
あなたのお仕事を、いつでも尊敬しています。
これからもケガなどなさらずに、がんばられてください。
いつもありがとうございます。
これからもよろしくお願いいたします。
会社の事務員より