眠りを守る君へ
割と大きなクマのぬいぐるみの、
君と眠ってだいぶ長いこと経ちます。
私はぬいぐるみがないと眠れないので、
君がいないと眠れないです。
君は三代目になります。
初代は私が赤ちゃんの頃にやってきたクマのぬいぐるみで、
赤ちゃんの私の眠りを守ってくれました。
ただ、私も赤ちゃんでしたので、
初代をかんだり舐めたり投げたりしているうちに、
初代はボロボロになって、
さすがに形が保てなくなったころ、
初代はありがとうの気持ちとともに供養されました。
私は初代がいなくなったときに大泣きしたことを覚えています。
二代目はそのあとに来ました。
初代がいなくなって私が眠れなくなったので、
親が与えてくれたクマのぬいぐるみでした。
その頃の私は生意気盛りでしたので、
こんなのに頼る赤ちゃんじゃないといって、
二代目を粗末に扱いました。
それでも、二代目が一緒にいると、
眠りはとっても穏やかにやってきて、
二代目も私の眠りを守っていたのだなと思います。
親にも反抗し、二代目もぬいぐるみは子どもっぽいと反抗し、
癇癪持ちだった私は、
二代目もボロボロにしました。
自分でボロボロにしたというのに、
二代目が傷ついたのが悲しくなって泣きました。
こんなことをしたいわけじゃなかった。
でも、どうしていいかわからなかった。
私は何かに怒っているけれどどうしていいかわからない。
二代目は私の気持ちをその身に受け止めました。
そして、二代目も形を保てなくなったので、
丁寧に供養されて旅立ちました。
それから少し間があきました。
私の成長とともに、訳の分からない怒りは収まってきて、
それと同時に、ぬいぐるみがないことによる不眠があらわれてきました。
その頃は思春期の後半になりますが、
私は思い切って、親にぬいぐるみを買ってほしいと頼みました。
あれがないと眠れない、今度は大事にすると約束しました。
親もよくわかってくれました。
私が幼い頃から、ぬいぐるみがあると安眠していたのを見てきた親です。
成長したとはいえ、ぬいぐるみがあると安眠できるというのが変わらないというのを、
よくわかってくれたのでしょう。
子どもはいつまでも親の子どもです。
それがひっくり返ることはありません。
親の無償の愛は、いつでも注がれているのだなと感じたのを覚えています。
三代目の君は、そうしてやってきました。
抱きしめるとフワフワしているのに頼りがいがあり、
心地いい抱き心地です。
その夜抱きしめて眠った際、
寝つきがあまりにも良すぎて、瞬時に朝になったような感覚すら覚えました。
心地いいまどろみが少しあったような気がしましたが、
眠れないという感覚は一切なく、
とても気持ちよく眠り、そして、爽快に目覚めたことを覚えています。
三代目の君は、今までのぬいぐるみたちよりも、
眠りに関しての力が強いように感じられました。
この心地いい眠りは経験をしたことがありません。
私は、三代目の君をずっと大事にしようと決めました。
実家にいる間は三代目の君とちゃんと眠り、
旅行の際は何とか我慢をし、
旅行から帰ってきたら三代目の君とまた眠って疲れを癒し、
実家から出るときになっても、
三代目の君をしっかり新居に持って行き、
一人暮らしの時も三代目の君がいればさびしくもありませんでしたし、
なによりも安心できました。
大学就職と月日は流れましたが、
一人暮らしでも毎日健康でいられたのは、
三代目の君がいつも私の眠りを守っていたからだと思っています。
しっかり眠れれば翌日も元気でいられる。
三代目の君は、眠りを守ってくれることで、
私をサポートしてくれたのだと思います。
私は大病もなく、睡眠不足による弊害も一切なく、
集中すべき時はしっかり集中もできましたし、
心もおおむね落ち着いて過ごすことができました。
それもこれもしっかり眠れていたからだと思っています。
三代目の君の力です。
ありがとう。
私は近いうちに結婚を考えています。
相手の男性は、三代目の君にも理解を示してくれています。
彼も、何かを抱いて横向きにならないと眠れないそうです。
ぬいぐるみは男だからダメだと思って、
タオルケットを丸めて抱いていたそうです。
そう考えると、三代目の君が眠りを守ってくれていたのは、
私にとってとても幸運なことでもあったのかもしれません。
ぬいぐるみは卒業しろなどと言われなかったのは、
私と三代目の君にとって、とてもよいことであったのだと思います。
三代目の君は譲れませんので、
結婚をしたあかつきには、
相手の男性にも心地いいぬいぐるみを抱いて眠ることを経験してもらおうと思います。
また、子どもができましたら、
私にとっての初代や二代目のようなクマのぬいぐるみを、
子どもにも与えたいと思います。
きっと子どもにとっても大切な存在になるでしよう。
三代目の君を抱いて眠りますと、
時々夢に三代目の君があらわれます。
三代目の君は、初代と二代目と一緒に、
私の夢の中にいます。
みんなで私の夢を心地いいものに整えているような気がします。
私の夢の中は限りなくこちよく、
私を傷つけるものが一切ないようです。
まるで天国のようだと思います。
言葉はありませんけれど、
みんなが私のことを愛していることが伝わってきます。
心地よく眠って欲しい、気持ちよく目覚めて欲しい。
そして、いつも元気であってほしい。
そんな思いが伝わってきます。
ぬいぐるみに思いがないなどと誰が証明できましょう。
私の眠りを守ってきたぬいぐるみのみんなは、
いつでも私のことを愛してくれました。
そして、三代目の君も、私を愛してくれています。
私を愛し、守り、笑顔にしてくれる、
最高のぬいぐるみです。
いつもありがとう。
私にとっての幸せは、
三代目の君の形をしています。
その周りに、いろいろな幸せの形があります。
私を愛してくれている親、
私を伴侶にしようとしている彼、
私の友人たち、
会社の同僚や上司、
学生時代の同級生、
行きつけのお店の店員さん。
いろいろな人やいろいろなものがありますけれど、
私の幸せの中心には、三代目の君がいます。
三代目の君を抱きしめるとき、
私は幸福で満たされます。
このぬくもりは三代目の君がいる限り変わりません。
私の命がある限り、三代目の君はそばにいます。
これからもずっと、私のそばにいてください。
私の幸せは三代目の君とともに。
三代目の君はなによりも大切な存在です。
私にとっての永遠は、三代目の君との愛を指します。
これからもずっと。三代目の君と共に眠り、
三代目の君の愛をこの身に受け続け、
私は誰より幸せになります。
三代目の君が、私といて幸せであってほしいと願います。
心からの感謝をこめて。
三代目の君のことが大好きな持ち主の私より