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第7話 沢田くんとドジっ子

 きゃあああああああ〜〜〜〜!!

【ひゃああああああああああああ〜〜〜〜!!:;(∩´﹏`∩);:】


 沢田くんのズキュン♡すぎる告白に、私たちの心の叫びが教室中の窓ガラスを震わせ、粉々に破壊しそうになった。



【言ってもうた言ってもうた言ってもうたよ!! ああどうしよう、キモいとか思われてない? 一回デートに行ったくらいで告るとかチャラい奴だと思われてない⁉︎ 調子に乗ってんじゃないよこのぼっちとか思われてない⁉︎ いや、佐藤さんはそんなにひどい人じゃないよ! むしろ1000000人に一人の超絶いい人だけどさ! だからこそこんな俺みたいなつまんない奴とも嫌な顔ひとつせず友達してくれていたし! けど、友達と恋人って全然違うから……今のでもしかしたら幻滅したとか、沢田と恋人とかマジありえん、沢田と付き合うくらいならフンコロガシの方がマシ( ̄Д ̄)ノとか思われちゃってたらどうしよーーーっ!! あああ〜〜頭がめり込むくらい土下座したくなってきた。゚(゚´Д`゚)゚。頭めり込んだまま倒立したくなってきた〜〜!!。゚(゚´Д`゚)゚。】


 沢田くんの精神は崩壊寸前だ。

 でも私もキュン死にしかけている。

 だってあんな素敵な告白、沢田くんの口から聞けるなんて思ってなかったんだもん!


 どうしよう、嬉しすぎる。

 心臓がギュンギュンとエレキギター並みに激しく鳴っている。

 でも、私が余韻に浸っている間にも沢田くんが土下座の体勢をとりつつあったことに気づく。

 私は慌てて、「もちろん喜んで、彼女になります!」と言おうとした。

 その時だった。



【はー。だりいー】



 すぐそばの廊下の方から男の声がした。

 ヤバい、教室に誰かが入ってくる! 

 私たちの様子がおかしいってバレて、もし揶揄からかわれたりしたら、今度は沢田くんのガラスのハートが粉々になっちゃう!



「沢田くん、隠れて!」

「えっ?【えっ? 隠れるってなんで?Σ(゚д゚lll)】」



 ベランダまで行くには遠い。そんな私の目の前にあったのは、二人がちょうど入れそうな大きさの掃除用具用のロッカーだった。


 開けてみると、中にはほうきが二本とデッキブラシが一本、あとは足元に雑巾入りの青いバケツがあった。なんとかこのまま入れそう。



「こっち」


 私は沢田くんの手を引っ張ってロッカーの中に引き入れた。

 内側から扉を閉めた瞬間、教室の扉がガラッとスライドする音がした。


 間一髪、間に合った。ホッとしたのも束の間。



【ああああああああああああああああああっ!!(*´Д`*)!!! ここ、こんなに近くに佐藤さんがっ!! おおおおお俺と密着してるーーーっ!! 密着、はじめました。とか言ってる場合じゃないよー!! 確実に昇天する案件だよこれええええ!!((((;゚Д゚)))))))喜びで魂が溶ける!! ふおおおおお〜〜!!】



 しまった。大変だ、沢田くんが昇天しかけてる!!



 焦って何も考えずにロッカーに隠れちゃったけど、これってヤバいよね。

 沢田くんと暗闇で二人きり。しかも密着状態。

 ああ、なんて大胆なことをしてしまったんだろう、私ってば!


「せ、狭くてごめんね、沢田くん」

 ドキドキしながら小さな声でこの状況について謝る。

「あ、うん……【雑巾やほこりの匂いで最悪なはずの掃除用ロッカーが……なんということでしょう。佐藤さんと二人で入ると、甘酸っぱくてキュンキュンする天国に。恋のたくみ、すげええええ!! どこでも天国作り出せるのかよ!!((((;゚Д゚)))))))】」


 匠、ありがとう。狭さに乗じて沢田くんの胸に耳を寄せてしまう。


【ドッキンドッキンドッキンドッキン!!(*´Д`*)】


 沢田くんの心臓の音が暴れていて可愛い。


【やっべえ、ドキドキしすぎてロッカーが揺れちゃうよ! 音が出ちゃう、音が出ちゃう〜!! もうこうなったら心臓を潰すしかない!!:(;゙゚'ω゚'):】


 いや、死ぬから!

 本当はいつまでもこうしていたいけど、沢田くんの心臓も限界のようだし、なんとかしてここから出ないといけない。

 これからみんながやってきた時、抜け出せなくなる恐怖もあるし。


 その時、教室に入ってきたクラスメイトが自分の席につく音がした。


【はー、目立つと思って学級委員なんかに立候補しなけりゃ良かった。席替えのクジ作りまで頼まれるとはなー。担任ふくだのヤロウ、忙しいとかなんとか言って生徒をこき使いやがって】


 この声は……森島くんだ!


 大変だ、もし見つかったらクラス中に「沢田と佐藤さんがロッカーでいちゃついてたよm9(^Д^)プギャー」とか言いふらされる!


 でも、森島くんは自分の席に座って席替え用のくじを準備している。ということは、ロッカーには背を向けているに違いない。うまくすれば、気づかれないように脱出できるかも。っていうか、脱出するなら今しかない!



「沢田くん、音を出さないようにここから出よう」

「えっ……【もう終わり?。゚(゚´ω`゚)゚。 短い天国だった】うん」

「まず私から出てみるね。大丈夫そうだったら沢田くんも」

「うん……【俺にできるだろうか……こんなに難易度の高いミッションは生まれて初めてだ!((((;゚Д゚))))))) 足元のバケツをひっくり返したり、ほうきを倒してしまいそうな予感がプンプンするぜ!】」


 そこをなんとか、冷静な対処をお願いします!


 私はそっとロッカーの扉を押した。観音開きに外向きで開く仕組みなので、閉めるのは大変だったけど開けるのは楽だ。完全に閉じきってない状態だったのも幸いし、押した時もあまり大きな音が出なかった。


 少しずつロッカーに明かりが入って、私が出られるだけの細さに扉が開く。

 そろりそろりとロッカーから降りて、床に四つん這いになった。

 森島くんは気づいていない。


 よっしゃ! このまま廊下へ逃げる。教室のドアは重いけど静かにスライドしてくれた。私のミッションはコンプリートしたよ、沢田くん!!



【よ、よ、よ、よ、よし、俺もっ……!! えいやっ!!(>人<;)】



 ドンガラガッシャーン!! と教室の中から派手な音がした。

 あ……。この音は、掃除用具全部倒した音だな。



【や、やってもうた……:(;゙゚'ω゚'):】


 もう、沢田くんのドジっ子ーーーっ!!




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