「ん?【なんだ、今の音】」
教室の中から森島くんの声がした。今ので多分、振り返ったんだと思う。
【あっ……:(;゙゚'ω゚'):】
「沢田……? お前、そこで何やってんだ」
ああ、見つかっちゃったね沢田くん! どう返す⁉︎
「……【どうしよう、なんて言えばいいのか思いつかない!!:(;゙゚'ω゚'):ちょっと言い訳思いつくまで3分間待ってくれないかな!! 天空の城のム○カだって最後はそのくらい待ってくれたよ? その間に「バルス!」言われてやられちゃったけどね。再放送見るたびに言いたくなるよね、あのバルス。そういえば通販で「バルス!」って言うと光る飛行石のペンダントが売られていたの見たことあるけど、ちょっぴり欲しいなって思ってたんだよなあ】」
「……なんか言えよ【無視かよ、沢田】」
「!!【やっべえ、頭の中でホームページ開いて飛行石をカートに入れる妄想していたらいつの間にか時間が経ってた……!((((;゚Д゚)))))))】」
何やってんのよ、沢田くん!!
私も廊下からハラハラしながら動向を
「ひょっとして沢田、ロッカーに隠れてたんじゃないか?」
【ぎくっ!! もうバレた!! さすが森島くん、イケてる上に頭までいい……!!((((;゚Д゚)))))))】
いや、誰でも思うよそれは。
「なんで隠れてたんだよ。言ってみろよ」
「……【タイムマシンの入り口があるって聞いて……とか言ったら怒っちゃいそうだな……:(;゙゚'ω゚'):】」
もう、変なことを考えるのはやめて!
掃除しようとしてた、でいいじゃん!
それでも苦しい言い訳なのは変わりないけど。
すると森島くんが言った。
「まさかお前、俺が席替えのくじを作ろうとしていたのを知って、こっそり細工しようとしてたんじゃないか?」
森島くんの失礼な質問に、沢田くんはおそらくキョトンとしたと思う。
【席替えのくじを作ろうとしていたのか、森島くん(・Д・)】
そういえば、沢田くんは知らなかったね。
でも、これはチャンスかもしれない。
不名誉ではあるけど、これに乗っかったら真実は気づかれないままになるかも──と思った瞬間。
「違うよ【そんなの知らなかったもん(・Д・)】」
ああ、沢田くんの純粋な心よ……。
私はなんだかキュンとして泣きそうになった。
「嘘つけよ。それしか考えられないだろ?【必死だな、沢田のやつ。どうしても佐藤さんと離れたくないんだな。フッフッフ。こいつは使える!】」
それに比べて、何か良からぬことを思いついたような森島くんの真っ黒な心よ。悪魔退散!! とお祓いしたくなる。
「そうまでして佐藤さんともう一度隣の席になりたいのか?」
「【佐藤さんともう一度隣の席に……Σ(゚д゚lll)】なりたい」
沢田くんはそんな悪魔の質問に素直に答える。
森島くんがニヤリと笑ったのが目に浮かんだ。
「俺の言う通りにすればまたお前らを隣の席にしてやってもいいけど……どうする?」
大変だ!
悪魔が取引を持ち出してきたよ!! 気をつけて、沢田くん!!
「何をすればいいの?【森島くん、いい人ヽ(*^ω^*)ノ】」
素直かーーーっ!!!
「さて、何をやってもらおうかな」
森島くんの悪そうなニヤニヤ顔が目に浮かぶ。
いったいどんな取引を持ちかけようと言うのだろうか。
もし変なことを言い出したらすぐにこのドアを開けて沢田くんを助けよう。
そう思っていると、森島くんの考えが聞こえてきた。
【こいつに壁ドンされてから女子モテがいまいちなんだよな。思い出しても腹が立つ! 絶対恥をかかせてやる!】
ああ、もうこれ絶対悪いことだよ。気をつけて、沢田くん!
【何だろう(・∀・)】
危機感ゼロか!!
すると森島くん、
「じゃあ、3回回ってワンって言ってくれよ【動画撮って拡散するわ】」
拡散⁉︎ ひどい! やっちゃダメだよ沢田くん!
慌ててドアに手をかけた時だ。
「ワン【∪・ω・∪】」
やっちゃったーーー!!
【えっ、もうやってる! スマホ取り出す暇なかったΣ(゚д゚lll)ガーン】
森島くんがびっくりしている。
どんだけ素早いの沢田くん。
でもおかげで拡散は免れた。
「早いよ沢田。今のなしな」
「えっ……【けっこううまく回れたのに。もしかして俺には3回回ってワンの才能があるかもしれないと思うくらい上手に回れたのに(>_<)】」
3回回ってワンの才能ってなに。
そんなに上手なら私も見てみたかったよ!
「じゃあ、次は裸になれよ【今度こそ写メ撮って拡散だ!】」
「……!【裸っ……⁉︎:(;゙゚'ω゚'):】」
大変だ、今度こそ沢田くんの大ピンチだ!!