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第18話

 私も十六歳。大人の仲間入りを果たした私は、パパとママから魔法を使う許可をもらった。「――ついに魔法が使える!」と喜び勇んだ私は、アール君に魔法を教わろうと決めた。


 けれど。


 アール君に魔法のことを尋ねたら、こう言われたのだ。「体に魔力を”バッ”とためてから、“ガッ”と出すんです」


「……」


 ……初心者の私には、なんとも難解な説明だった。


「アール君、バッ? ガッ? それじゃわからないよ」


「そうですか? エルバ様、見ていてください。こう――“ガッ”です」


 そう言うと、アール君は小さな手のひらに、火魔法ファイアを表し放ってみせた。……なんとも仕草が可愛い。でも、この説明だけでできる気がしない。


(やっぱり……コツをつかむまで、時間がかかりそう)


 そう思った私はアール君ではなく、ママに教えを請うことにした。


 ⭐︎


 庭先では、暴発防止の結界が張られている。ママの指導のもと、まずは魔力を感じる訓練だ。


「エルバ、深呼吸して」

「はい」


 言われた通りに大きく息を吸い、吐く。次に目を閉じ、心を落ち着けて自分の魔力を探る。


(魔力を感じるのは……簡単なはず。だって、光の球で、遊んでいた時と同じだもの)


 意識を集中させると、体を包む金色の糸のようなものが浮かび上がり、それが私の魔力だとわかった。


「その調子よ、エルバ。今、魔力がちゃんと集まってきているわ」


 ママはそう言って微笑むと、「水魔法ウォーターを唱えて水瓶に水を集めてみて」と指示した。


「……わかった。《ウォーター》!」


 ……が、魔法を使うぞと力が入り、目の前の水瓶を外し、魔法水が勢いよく噴きでて辺りを濡らす。


「わっ! あ、あれ!? ママ、ママ、水が止まらない!」


 予想外の暴発に慌てる私。魔法水は結界内を満たし、ママと私をびしょ濡れにしたが。ママは怒るどころか、楽しそうに笑っている。


「フフッ。エルバ、まだ魔力のコントロールが難しいみたいね。でも、初めてはそんなものよ」


 そう言いながら、ママは結界を解除し、風魔法ウィンドで濡れた服を乾かしてくれた。


 ⭐︎


 一月後。私は、水瓶に魔法水をきちんと、貯められるようになった。「良くできました」と、手に竹ホウキを持ったママが、次の課題を告げた。


「エルバ、次はホウキに乗る練習よ。繊細な魔力コントロールが必要だから、毎日 一時間は練習してね」


「ホウキに、毎日一時間はのる?」


「ええ。それができるようになれば、エルバはもっと、魔力の扱いが上手になるわ」


 魔法都市で、ホウキは一般的な移動手段だ。普通に座って乗る人もいれば、立ったり、紐をつけてぶら下がったりと、乗り方はさまざまだ。


(うーん。私は座って飛べればいいかな?)


 そう思いながらも、胸は期待で高鳴っていた。


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