シュノーク城まで、あと少し――。
私たちはコムギン畑を抜けた先に広がる原っぱで、ちょっと一休みすることにした。
(この辺り、どんな植物があるんだろ……ダメダメ、ママとの約束があるもん)
調べたい気持ちをぐっと我慢して、私はマジックバッグから敷物を取り出し、陽のあたる草の上に広げて腰を下ろす。するとすぐそば、低木の枝に実る黄色い果物が目に留まった。
(あれ、黄色い……オレンジ?)
まるでオレンジみたいだけど、色がちょっと違う。気になる。見るだけ、聞くだけならいいよね。
私はいつものように博士に尋ねた。
「博士、あの果物ってなに?」
《エルバ様。あれは“野生のレンモン”という果物です》
「えっ、レンモン? レモンじゃなくて?」
オレンジにそっくりな、黄色いレモン。頭の中でオレンジと混ざって、ちょっとパニックになりながら、
(まちがえて食べてたら……ひゃあ、唾液が……)と、想像しただけで口の中がすっぱい。
「博士、レンモンって食べられるの?」
《はい、食用です》
「おお〜、よかった!」
レンモン――いや、レンモン! 薄くスライスしてハチミツ漬けにすればおやつになるし、ジャムやシャーベット、ケーキやクッキーだって作れる。お料理にも使える万能果実だ。
「博士、レンモンの効能って?」
《疲労回復です》
「疲労回復!? それ、今の私たちにぴったり!」
魔法を使って疲れていたし、これはありがたい。
「博士、レンモンの種ちょうだい!」
博士から種をもらい、さっそく私の畑に植えて完了!
(よしよし、これでいつでもレンモンが使えるぞ!)
「アール君、シュワシュワを飲もう!」
隣に座っていたアール君に声をかけると、彼はじっと私を見て、微笑んだ。
「いいですね。ただし……エルバ様、ほどほどにですよ」
「もう、わかってる。でもねアール君、このレンモン、なんと、疲労回復するんだって!」
「疲労回復? それは素晴らしい。早く飲みましょう!」
アール君の目がきらきらと輝いた。
私は畑から育ったレンモンを収穫し、マジックバッグからお気に入りの折りたたみテーブル、ナイフ、竹製のまな板を取り出す。
水魔法できれいに洗ったレンモンを半分に切り、タンブラーに注いだシュワシュワにぎゅっと果汁を絞る。残りの半分は輪切りにして、浮かべてみた。
――見た目も爽やか、レンモンのシュワシュワ完成!
アール君にも渡して、ごくごく飲み干す。
ん! んん〜レンモンの果汁の香り、シュワシュワの刺激が喉に爽快に染みて、思わず声が出る。
「このシュワシュワ、サッパリしてて美味しい〜!」
「ぷはっ、今日みたいな暑い日には最高ですね。レンモンのシュワシュワ、おいしい!」
そして――二人の体がふわっと一瞬、光って消えたように見えた。えっ? 一気に魔力が戻った感じがする!
「なんと! エルバ様、すごい効き目です!」
「うん、ほんとにすごい!」