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第23話

 シュノーク城まで、あと少し――。

 私たちはコムギン畑を抜けた先に広がる原っぱで、ちょっと一休みすることにした。


(この辺り、どんな植物があるんだろ……ダメダメ、ママとの約束があるもん)


 調べたい気持ちをぐっと我慢して、私はマジックバッグから敷物を取り出し、陽のあたる草の上に広げて腰を下ろす。するとすぐそば、低木の枝に実る黄色い果物が目に留まった。


(あれ、黄色い……オレンジ?)


 まるでオレンジみたいだけど、色がちょっと違う。気になる。見るだけ、聞くだけならいいよね。

 私はいつものように博士に尋ねた。


「博士、あの果物ってなに?」


《エルバ様。あれは“野生のレンモン”という果物です》


「えっ、レンモン? レモンじゃなくて?」


 オレンジにそっくりな、黄色いレモン。頭の中でオレンジと混ざって、ちょっとパニックになりながら、

(まちがえて食べてたら……ひゃあ、唾液が……)と、想像しただけで口の中がすっぱい。


「博士、レンモンって食べられるの?」


《はい、食用です》


「おお〜、よかった!」


 レンモン――いや、レンモン! 薄くスライスしてハチミツ漬けにすればおやつになるし、ジャムやシャーベット、ケーキやクッキーだって作れる。お料理にも使える万能果実だ。


「博士、レンモンの効能って?」


《疲労回復です》


「疲労回復!? それ、今の私たちにぴったり!」


 魔法を使って疲れていたし、これはありがたい。


「博士、レンモンの種ちょうだい!」


 博士から種をもらい、さっそく私の畑に植えて完了!


(よしよし、これでいつでもレンモンが使えるぞ!)


「アール君、シュワシュワを飲もう!」


 隣に座っていたアール君に声をかけると、彼はじっと私を見て、微笑んだ。


「いいですね。ただし……エルバ様、ほどほどにですよ」


「もう、わかってる。でもねアール君、このレンモン、なんと、疲労回復するんだって!」


「疲労回復? それは素晴らしい。早く飲みましょう!」


 アール君の目がきらきらと輝いた。

 私は畑から育ったレンモンを収穫し、マジックバッグからお気に入りの折りたたみテーブル、ナイフ、竹製のまな板を取り出す。


 水魔法できれいに洗ったレンモンを半分に切り、タンブラーに注いだシュワシュワにぎゅっと果汁を絞る。残りの半分は輪切りにして、浮かべてみた。


 ――見た目も爽やか、レンモンのシュワシュワ完成!


 アール君にも渡して、ごくごく飲み干す。

 ん! んん〜レンモンの果汁の香り、シュワシュワの刺激が喉に爽快に染みて、思わず声が出る。


「このシュワシュワ、サッパリしてて美味しい〜!」


「ぷはっ、今日みたいな暑い日には最高ですね。レンモンのシュワシュワ、おいしい!」


 そして――二人の体がふわっと一瞬、光って消えたように見えた。えっ? 一気に魔力が戻った感じがする!


「なんと! エルバ様、すごい効き目です!」


「うん、ほんとにすごい!」


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