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第24話

 これが、異世界チート!


 自分の能力にあらためて驚いていたけど、ふと視線を落とすと――レンモンの隣に、“枝豆”らしきものが生えていた。


「博士、これは?」


《エダマメマメという、マメ科の野菜です》


「食べられる?」


《食用です。食物繊維が豊富です》


「やった! たぶん、枝豆だ!」


 枝豆は、塩ゆでにすると最高に美味しいおやつになる!

 スーパーで見かけると、つい買っちゃうし、枝豆ごはんや卵焼きの具にしたり、料理の彩りにもピッタリ。


 私はさっそく博士から種をもらい、エルバの畑に植えた。


 ⭐︎


 シュワシュワを飲んで、疲れた身体と魔力が回復した私たちは、目的地・シュノーク古城へと向かう。

 いくつかの畑と野草地を越えた先、ローヌの森の中にあるという。


 ――クゥッ、ワクワクしてきた!


「さて、色々回復したし、アール君、出発しよう!」


「はい。ローヌの森にある、シュノーク古城へ行きましょう!」


 私とアール君は、“身消しのローブ”を羽織り、ホウキにまたがる。そして魔力を集中――


「エルバ様、魔力があふれていて不安定です。落ち着いてください」


「あふれてる? わ、わかった! 抑える……ふぅ、ふうっ……どう、アール君?」


「魔力、ある程度抑えられました。あとは僕に任せてください」


「ありがとう!」


 その言葉に、私は地面を蹴って空へと飛び上がる。

 ホウキに乗った体が、ふわりと浮かぶ。


(よし、上手くいった! でも、まだ気は抜けない……)


「行きましょう、エルバ様!」


「うん、いこう、アール君!」


 ⭐︎


 原っぱから数分。ホウキで空を飛び、私たちはローヌの森の前に到着した。


「やっと着きましたね」


「……えへへ、来るまでがもう楽しかったね!」


「エルバ様は、ずっと楽しそうでしたよね」


「アール君だって楽しんでたじゃない!」


 途中、コムギン以外にも、野生のトマトマ、レタスス、キャベンツ、トトロモコシを見つけて、博士に教えてもらいながら種をゲット!


 トマトマはトマト、レタススはレタス、キャベンツはキャベツ、トトロモコシはトウモロコシ!


 色とりどりの野菜畑ができそう……だけど、全部、私の苦手な野菜ばっかり!


(でも、発見するのは楽しい~!)


 ⭐︎


「エルバ様、こっちに道ができています。このまま進みますか?」


「うん。ロープば置いて、この道を進もう」


「了解です。……でもエルバ様。ここまで、“あれ何これ何”って、たくさん立ち止まってましたから、時間かかりましたね」


「うん。でもその分、いっぱい見つけられたし!」


 私の反省しない返事に、アール君はふぅっとため息をつく。二本の尻尾を揺らしながら、私の前を歩いていく。


 舗装された道を歩くこと数分――


「……ウヒョォ」


 変な声が漏れた。


 だって、目の前に現れたのは、森の中に建てられた、苔とツタに覆われた古びた城――シュノーク古城だ。


(なんだか、幽霊屋敷みたいだけど……こ、こ、こんなところに……人が住んでるの?)


 ……なんだか、まわりの空気も冷たい。


「ねぇ、アール君……この古城、お化けいそうじゃない?」


「……はい。エルバ様の言うとおり、なにか“います”ね」


「ヒィ――! やっぱりいるのぉ!?」


 私はお化けが苦手なのに〜! カタカタと震える私を見て、アール君がふふっと笑った。


「ふふっ。お化けが怖いのですね?」


「へっ? こ、怖いよ! だって、実体のない“お化け”だよ!?」


 私がそう言っても、アール君は城のまわりを調べましょう、と歩き出す。


「ま、待ってぇ! 置いていかないで〜!」


「あっ、エルバ様、そこ!」


「な、なにっ!?」


 私の恐怖を面白がってる……よね、絶対。


「エルバ様、ここと、そこ……それに、あそこにも何かいますね」


 次々と指差され、恐怖倍増!


(あうっ……アール君を抱っこして安心したい~! お願いしたけど断られたよ……とほほ)


 ⭐︎


「待って! アール君、どこまで行くの?」


 なんでだろう。シュノーク古城、なんだかすごく怖い。

 震える足で、アール君の後を追っていると――


「《…………》」


「ん? アール君、今なんか言った?」


「いいえ。なにも申し上げていませんが?」


 そのときだった。


《……ウ、ウウッ、なんとも懐かしい魔力の気配がする。近くにいるのか? この魔力を持つもの……はやく、余のところに来てくれぬか!》


 ――地を這うような低音の、重たい声が、頭の中に響いたぁあああ!


「うぎゃ――ああああああ!! アール君っ! へ、へ、変な声が聞こえたよぉ~!!」


「……はい、聞こえましたね」


「ふへ? アール君? ……な、なんでそんなに冷静なのぉ!?」

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