「何人くらい行けばいいんですか?」
御岳が質問した。
「基本的には選挙期間の間、2人でいいだろう。こちらのほうも留守にするわけにはいかないからな。私も時々若林先生のところに行くし…」
そう言った直後、堀田と高山が手を挙げた。
「先生。自分、行きたいんですが」
ほとんど同時だった。
他の3人に先んじた形だ。この2人は内弟子の中では新人になる。伊達としては、御岳のほうが経歴からいって昔の経験が活かせると思っていたが、新人2人の挙手があったので、目線を御岳のほうに向けた。
「御岳君、どう思う?」
伊達は内弟子の中では長男格に当たる御岳に尋ねた。
伊達だけで決定しても誰も何も言わないのは分かっていたが、複数の前では他の意見を取り入れた上での決定というのがその後の流れにプラスする。質問の意味を察知した御岳が答えた。
「いいんじゃないですか。2人とも気合い入っているし。もし龍田なんかがやったら、騒ぎがよけいに大きくなるかもしれないしな」
龍田のほうを見ながら、半分冗談っぽく言った。
「俺、今はおとなしいですよ。そりゃ、相手がかかってきたら、それなりに対応しますけど…」
「それが危ないんだよ。やっぱり龍田には任せられないな」
御岳は笑いながら言った。他の内弟子もそうだ、というような表情をしている。龍田は周囲を見渡した。
「みんなそう思っているの? 俺、まだ昔のままの印象なのかなぁ」
少しうなだれた感じで龍田が言った。
「そんなことはないよ。みんな分かっているよ。もしものことを考えた裏返しだよ」
御岳がみんなの思いの代弁をした形になった。
場が落ち着いたところで、再度伊達が話した。
「それでは今回の件は、堀田君、高山君の両名ということで決定する。選挙が始まるまで堀田君と高山君を中心に、特別稽古を行なう。もちろん、他の人も同様の稽古を行なうので、全員同じ気持ちで行なうように」
伊達の言葉に全員、顔を見合わせて喜んだ。もともと普通ではないことを学ぶために内弟子として入門したメンバーだ。特別稽古と聞いて喜ばないわけはない。
「では、早速明日の稽古から特別メニューで行なう」
「お願いします!」
全員の声が揃った。