今日の食事当番の御岳も言った。
「足りないなら、どんどんトーストを焼くから、遠慮なく言ってね」
「は~い、分かりました」
一番食欲旺盛な龍田が言った。
「お前の食い気だけは一番だな。その感じでこれからの稽古にも参加しなよ。大好きな『お勉強』もあるしね」
龍田に向かって御岳が言った。その顔にはちょっと含み笑いが浮かんでおり、龍田が苦手としてる座学の部分を軽視しないような牽制の意味も込められている。もちろん、龍田も含め、そのことは十分分かっているので、そこにいる全員が思わず噴出してしまった。
そのような感じで朝食が進み、全員、お腹一杯になった。食べ終わった食器の後片付けは全員で行なう。
この時、御岳は休憩だ。伊達とこれからの打ち合せをしていた。
「先生、今日はこれからどういう予定ですが?」
「今、食事が終わったばかりだから、30分ほど食休みをした後、座学の時間を考えている。今日の予定はまず空手道史だ」
「最初の頃、先生からマンツーマンで教わったことですね。ちょっと曖昧になっているところもあるので、楽しみです」
「みんな、そういう気持ちでいてくれると良いけれど…」
龍田のことがちょっと心配げな伊達だった。
「先生、大丈夫ですよ。いろいろ言っていてもやっぱり内弟子として学ぶことは好きなはずだし、自分たちもフォローしますので…」
「そうか、では、よろしく頼む」
こういう時は長男格である御岳の存在は大きい。
もっとも、御岳自身も内弟子であることは変わりないので、自身の修行も並行して行う必要があるので、その部分に関しては龍田も御岳も同様であることは改めて伝えた。御岳も十分承知しているので、しっかり返事した。
「分かってます。また入門当時に戻って頑張りますので、改めてよろしくお願いします」
御岳は力強く返事した。